通信制の大学の過去の物語

「夜間(二部)のあれこれ」と似た状況で、やはり受験バブルの頃に、一般入試で多くの不合格だった者が通信制の大学へ入学されました。それ程、受験者数に対し
ての大学側の入学募集定員数が少なかったわけです。あるいは、大学への進学を諦めて、専門学校へと進路変更をされた者もいるかと思います。
そして、多くの不合格者が通信制の大学へ入学した理由として、「通信制の大学であっても、大学は大学で、卒業すれば通学と同じく学士が得られるから」ということ
が少なくなかったと思います。確かに通信制の大学を卒業した場合も通学制と同様に学士を取得し、また、学士を取得したことで、国家試験等で受験の資格が得られ
たり、司法試験では一次試験が免除になるのです。
なかには転籍(通信制の大学から通学制の一部(昼間)、もしくは二部(夜間)へ)を希望する者も少なくなく、これも通信制の大学への入学目当てでもあったのです。
現在の通信制の割合は社会人の方が多いのですが、その当時は受験世代の18〜20歳前後の無職の者が多くを占めていました。

大学新聞では1面に通信制の特集として掲載されていて、夏季スクーリングや在学生についての内容を読んだことがあります。それを読んでいた時はまるで「もう1つ
の学校」という感じがしました。若い人ばかりが取材で取り上げられていましたし、夏季スクーリングの会場の中が写真で掲載されていて、それは、授業風景と変わら
ない感じでした。

昨今では定員に満たさない大学や比較的入学がしやすいと言われている大学が少なくないのですが、当時は入学定員数よりも受験者の方が圧倒的に多かったので
すから、どの大学であろうと、入学できる保証が全くなかったわけです。新設されて間もない大学ですら、合格の目安とも言える偏差値が上がり、合格の困難性があら
わになったのです。

そして、入学者数が多いために、夏季スクーリングの会場では全員が席に付けずに溢れていて立ち見もいたという程の盛況ぶりでした。当時はエアコンの設置があ
ったかどうかはわからないのですが、もし設置されていなかった場合の環境は想像がつくかと思います。いや、仮にエアコンが設置されていても大人数ではあまり効き
目がないのではないかと思います。

しかし、その先が問題で、学年が上がる都度に学生数がかなり減少したとのことです。その理由は「勉強が続かない」、「転籍がうまくいかない」ために退学者が多かっ
たということです。特に、後者の場合は通信制の学生であれば誰もが転籍の試験を受験出来るわけではなく、この試験を受験するためには学業成績が第一の関門で、
これをクリアしない場合は門前払いとなるわけです。
また、転籍試験を希望していた者の多くが転籍試験の準備(学業成績を良くする、単位取得、転籍試験の対策)が間に合わなかったそうです。
その一方で、合格された者の中には全国で開催されるスクーリングにも参加し続けたそうです。スクーリングに参加することでレポート提出が免除になりますので、そ
の分、科目習得試験や転籍試験の対策が出来たのです。「合格するまで大変だった」と言われてました。

転籍試験ですが、特に昼間(一部)への合格者は極少数でした。昼間の合格者は夜間の学生の方が多く、加えて、短大の編入希望者の合格者も加わり、通信制の学
生の合格者は非常に厳しい結果となりました。教授の話によれば、試験問題の解答の学力の差を指摘し、同時に、安易に合格者を出せないということも言われてまし
た。


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