再  質  問  書

 

環境省自然環境局野生生物課  課長 星野一昭 殿

 

2007年5月9日 理学博士 中島康喜 

 

 2006年11月19 日の質問書に対する2007年3月の回答書について、不明瞭な点が多々ありますので、再度質問書を送付します。

 まず最初に、3月の回答書には公文書番号どころか日付や責任者名すら記されておりません。これはなぜでしょうか。

 京都のバンダーの一連の問題行為について京都府教育委員会は、3週間で公文書番号付きの教育長名での公式回答を出して下さいました。さらに、関係した全ての小学校長からも公印つきの回答書をいただきました。これは問題を周知徹底して再発防止に取り組むという真摯な姿勢のあらわれと言えるでしょう。

 その一方で、対照的とも言える環境省の対応姿勢は一体どこから生まれるのでしょうか。つい最近も、環境省の官僚がテレビの取材を受けて「民間だと0点になるような姿勢も霞ヶ関では違うんです。」とヘラヘラ笑っている光景を見て暗澹たる気分になりました。3月の回答書は、鳥類標識調査の問題をうやむやにして責任逃れをしたいという環境省の意思の表れと誤解されかねないと思います。

 

 もう一度確認します。鳥類標識調査員による法令違反や逸脱行為があったことは2005年9月16日の面会時に野生生物課鳥獣保護業務室が認めています。法令違反や逸脱行為があったことを認めたのであれば、責任の所在を明確にして再発防止策を公表するのが当然です。

 その後も、全国至る所で鳥類標識調査員による問題行為が見つかっています。このままではいつまでたっても問題行為は根絶できず、鳥類標識調査に対する信頼は回復できないでしょう。

 以下、再質問9項目です。

 

再質問1)

2004 年3 月の京都府丹波町での高病原性鳥インフルエンザ発生地周辺の野鳥のウイルス保有状況調査は、京都府と連携し実施しており、調査に当たっての防疫措置については、京都府の保健・健康担当部局及びウイルス学の専門家の指導も受けており、適切に実施されたと考えています。

とのことですが、「2日後に死亡した限り無くクロに近いSサイズカラス」を素手に持って記念撮影するような調査の指導をした「京都府の保健・健康担当部局及びウイルス学の専門家」を開示して下さい。開示されない場合は情報公開請求します。

また、「手袋は滑って鳥を押さえにくいので装着していない」とのことですが(野生生物課 鳥獣保護業務室 徳田裕之 氏の2007年4月17日の回答)、では、マスクを装着しないのはなぜですか?簡単にできるリスク回避をなぜしないのか、海外での鳥インフルエンザ調査ではマスク・手袋を着用している理由とともに説明して下さい。 

海外での調査の様子(中日新聞07年12/14より)

日本での調査の様子(山階鳥類研究所webサイトより)
 

再質問2)

環境省として鳥類標識調査の委託先である山階鳥類研究所に対し指導することとしているところであります。

とのことですが、問題発覚後(2005年9月16日以降)の「具体的な指導内容」を開示して下さい。

 

再質問3)

山階鳥類研究所においても、講習会での指導、バンダーに送付する「バンディングセンター事務連絡」等によって、調査実施の際の注意事項の徹底を行っております。

とのことですが、注意事項の徹底が未だなされないので、つまり、山階鳥類研究所のバンダー管理能力が足りないので、違法行為や問題行為が繰り返されているのではないですか?

違法行為や問題行為が繰り返されている現状の最終的な責任は委託元の環境省にある。YesかNoで答えて下さい。

 

再質問4)

鳥類標識調査では、二種類のデータを収集しています。一つは、標識調査で捕獲して足環を装着して放鳥した鳥についてのものであり、いつ、どこで、どんな鳥が何羽いたのか、オスかメスか、などのデータです(以下「放鳥データ」とします)。

とのことですが、「放鳥データ」は足環を装着せずとも捕獲するだけで得られます。また、捕獲せずとも目視観察で「いつ、どこで、どんな鳥が何羽いたのか、オスかメスか、などのデータ」が得られて大きな成果があることは環境省自らが発表しています。わずか1回の集計で22万件の情報が得られるのですから、

http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=5879

「放鳥データ」に相当するものは標識調査以外で質・量ともに十分得られると一般的には結論づけられますが、環境省としての結論を、YesかNoで答えて下さい。

また、「放鳥データ」は未だデータベース化されていません。活用できない状態のデータは無いものと等しいと考えられます。多額の税金を投じて集めたデータを放置している責任は環境省にある。YesかNoで答えて下さい。

 

再質問5)

標識調査データは渡りルートの解明、野生状態における鳥類の寿命の把握、我が国の鳥類相の把握等に資するデータとなっております。

とのことですが、捕獲時と再捕獲時の時間差がどうして「寿命」と言えるのでしょうか。科学的な根拠を示して下さい。

 

再質問6)

鳥類標識調査の成果は鳥類の保護施策の推進に活用されております。

とのことですが、スズメ目の保護施策に活用された具体的な成果の公的記録を全て開示して下さい。

 

再質問7)

「鳥類への足環装着の安全性−小型種における足環の重さの影響−」(石田健、1992 、Strix11 、293-298 )において、「体重比1 %前後あるいは1 %以内という足環の重さは十分に小さい値であり、重さの点で鳥からだに著しい負荷を与えるとは思われない。」と結論づけられています。

とのことですが、環境省は「足環はフンよりも軽いので負担は無い」と認識しているということですね。YesかNoで答えて下さい。

 

再質問8)

周囲を海洋に囲まれる島国であるという地理的条件が日本に類似しているイギリス

とのことですが、渡りルートの海上距離が大きく異なる日本とイギリスにおいて、島国であるという1点のみでBTOの見解を適用できると環境省は認識しているということですね。YesかNoで答えて下さい。

また、渡りの貴重な中継地である離島で大規模な調査を行っているのは日本だけです。離島での調査では、一度に多くの鳥が霞網にかかって数十羽単位の事故死がたびたび起こっています。それでも、環境省の責任において

1.「数十羽単位の死亡事故も仕方ない」

2.「我が国における鳥類標識調査は、離島での調査も含めて安全上問題ない」

3.「安全上の問題はないから、改善すべき点は一切無い」

ということですね。それぞれ、YesかNoで答えて下さい。

 

再質問9)

契約書等の公開は情報公開法に定められた手続きにより行っておりますので、請求書の様式等をお送り致します。

とのことですが、2006年11月28日に、当時の担当である野生生物課計画係 松田彰紀氏に「3週間後の12/11(月曜)の時点で回答可能な部分について、回答をいただきたい」とお願いしてありました。

「情報公開法に定められた手続き」が必要なことはその時点で分かっているにもかかわらずお知らせいただけなかった理由は何ですか。だれもが納得できる理由を示して下さい。

 

以上。