「コッロールの恐怖」をくらえ!

by owljey
last update:2021/11/28

これが言いたい!

2019年に出たものとしては、序盤のコッロール地方の背景説明等はまさしく現代的だが、 意外に30年前の「ベアダンジョン」あたりと比べても洗練された感じはなく、 いつものオーソドックスなダンジョンシナリオという感じを受けた。

D&Dの「レイブンロフト」を意識したT&Tのゴシックホラー、「ケンのホラー」らしいが、 ゴシックホラー感はあまりないと思う。
ヴァンパイアは出てくるけど、特定のヴァンパイアだけで、ヴァンパイア・キングやロード全般について、 彼らの社会性についてや立振る舞いはそれほど体系的には語られていない。
ヴァンパイア・ゴーストとかヴァンパイア・ソードマンとか、名前だけヴァンパイアは大量に出てくる。

本書のベースはダンジョンマップと各部屋の説明があるダンジョンシナリオである。
ただ、一部屋一部屋の記述がかなり濃いので、前日これやろうという姿勢だと難しい。 さらに「それはGMの裁量にまかされています」がちらほらあるので、セッション中に出くわすと慌てるだろう。 プレイヤー向け説明だと思って読み上げていたら、GM向けのネタばらしになっているということもありうる。 各部屋のイベントは戦闘が主体。一方、調度品等の価値が細かく設定されているので、一攫千金を目的とするのにはかなり向いている。

さて、舞台であるコッロールの地下道には、ボスキャラ級の古代の英雄が3~4匹眠っている。多いな! 彼らの背景設定に結構な紙幅が割かれていて、それゆえか、コッロールの地下道の統一感がぶれそうなほどだ。 ヴァンパイアキング・ヴァクシュミが眠っているのはわかるが、 英雄エンヴァーヘルムの墓や、戦士ヴィリーゼク、将軍ゾク等の玉座がひしめき合っている。 ヴァクシュミは闇の英雄コレクターといったところか。
これらは通常のダンジョンシナリオのように、各部屋として紹介されているが、描写以上に裏側の設定も語られているので、 その実、ここが語りたい背景資料なのではという印象も受ける。

では「コッロールの恐怖」は不完全なシナリオかというとそれも違って、おいしそうな素材が提供されているので、うまく料理したいという結構な魅力を持っている。半分意図せぬものなのだろうが。

だとすれば、この地下道を苦労してセッションシナリオにするよりも(もちろんそうしてもよいが)、ここに描かれたエッセンスを取り入れてGMが独自でシナリオを用意するのがよいのだろう。
例えば、ヴァンパイア・キングの脅威をちらつかせるとか、この地域にはびこる奇妙なスケルトンマンにクローズアップする、ワンダリングキャラクターで紹介されている蛸頭のトークティパスをスパイスとして登場させるといったように。
日本展開の「コッロール」シナリオ二本はまさしく、そうして作られたのではないだろうか。


遊び方一案

参考までに、実際にセッションで遊んでみた時のやり方を紹介。
上記ではアイデアソースにしたらと述べているが、まず素直にダンジョンシナリオをセッションで遊んでみた。

・PCはレベル10相当
1レベル作成キャラクターに100点を能力値に割り振ってもらった。
魔法使いならば呪文は4レベルまですべての呪文をマスターしているとする。 10レベル想定にしては少ない?、4レベルまでの全呪文習得しているなら結構なサービスだし、使いこなせば結構強力なはず。

・シナリオの各部屋はあらかじめチェック
そのまま読み上げようものなら、「この部屋には罠があり」とかネタばれしかねないので、各部屋の描写を用意しておく。これが大変。
あと、NPCの態度を決めておかないと困る。ジンは本当に無口でよいのか。 マミーはしゃべるのかパントマイムのみでいくのか等々。ここはプレイヤーがどれくらい積極的かで決めておきたい。

・査定屋
装飾品レベルの財宝の価値をいちいちSRさせるのも面倒なので、 査定専門のインプ“イクラーダ”と契約していることにして、彼がすべて教えることにした。 魔法のアイテムの効能などは教えない。


プレイリポート

参加は3人。ならば前衛二人と魔術師かな...って、ひとりレプラコーンか!
前衛と後衛のルールを用意しておかないと早めにトマトピューレになりそうだ。
実際は個人修正が高く、平均ヒット数で貢献したのだが。

二回に分けてセッションした。見つけた魔剣と、《死の刃》を使い戦闘は楽に進めていったが、 そうでないトラップでダメージを徐々に積み重ねる。魔力点も減って来て、 14の部屋あたりでPCは引き返しを決意。
いわゆるボスキャラ級には遭遇しなかったが、帰路のスケルトンとの戦闘や、 スライミーウ一行とのやりとりなどスリルを味わったようだ。