ファイティング・ファンタジー考察


by RJ last update 2000/08/20


世界について


 タイタン世界の魅力はその自由奔放さにあるといってよいでしょう。FFシリーズのゲームブックは、「タイタン」を参考にしつつも、作者の自由な考えでその作品と舞台が整えられています。魔法の呪文などがその良い例でしょう。シリーズの中でも呪文が扱える作品は、「バルサスの要塞」「サソリ沼の迷路」「ソーサリー!」「恐怖の神殿」「恐怖の幻影」等いくつもありますが、あるものは呪文をいくつ持っていくか決めておくD&D方式だったり、魔法の石を使うものだったりと、重なるものはほとんどありません。もちろんAFFのルールブックもまた違う方法なのです。
 これだけ派手にやってくれると、GMが個人的に新しい魔法をつけくわえるのに何のためらいもないでしょう。いわゆる公式設定がないのですから、邪道な感じがしません。
 もちろんこれは呪文に限ったことではありません。世界の方もバラエティに富んでいます。曙群島では和風と中華風の混ざったような文化が発達しているようです。タイタンに付属の地図を見てください。左下に「未知の地」なるものが記されています。「タイタン」の文字やコンパスに隠された部分にも何か秘密がありそうです。
 それでもまだ窮屈なら、異なる世界へと飛び出すこともできるでしょう。タイタンは様々な異界につながっています。策略の神ロガーンが「時」を拾ってきたのも異界に鼻を突っ込んだときだそうですし、かの魔術師ザゴールはふたたび冒険者に倒された後、「魂の宝箱と12の呪文」のアマリリアという世界で蘇ります。「忍び寄る幽鬼」(SPECTRAL STALKERS)では、主人公はニューバーグの街から異次元へととばされてしまいます。
 このようにある意味ごちゃまぜになったのがタイタン、つまりFFシリーズの魅力なのです。


現実世界との接点


 かつてタイタンに浮かぶ超大陸はアトランティスという名がつけられていました。また、「運命の森」では主人公が高層ビル群や行き交う自動車の悪夢を見ています。さらに同作品では悪夢の産物「モルフェウス」が登場します。モルフェウスはギリシャ神話に出てくる神様です。
 これら現実世界のものがそのままもちこまれるのは変でしょうか? そうおかしくも無い気がします。もともとファンタジーは、「ミノタウロス」(ミノス王の牛)とか怪物の名前は結構そのまま利用しているし、ルーン文字がアルファベットと一対一で置き換えられたり、結構いいかげんですから。それらと同じく、たまたま現実世界と名称が一緒と考えてもいいでしょう。でも、高層ビルの夢とかは変です。幸い、タイタン世界は他の次元との行き来が結構簡単(?)にできます。だから、現実の世界とつながっている場所なんかがあるのかもしれません。こういう設定にしておけば、「恐怖の館」とかから犠牲者を引っ張ってくることもできますね。
 ほら、「タイタン」にもイアンとスティーブが、黒海老亭でマグを傾けているって説があったではないですか(笑)。

悪党について


「悪党はみな自意識過剰の大根役者」と「ダンジョニア」に記されているように、FF世界の悪党は、世界征服を企む典型的な魔術師、妖術師のたぐいであふれています。例外としてはポートブラックサンドを治めるアズール卿や「サソリ沼の迷路」に出てきたグリムズレイドみたいなのもいますが。世界征服を企む輩が多いということは、裏を返せば、その数だけ「世界の危機」があったことになります。
 つまり、FF世界では一介の冒険者が世界の危機を救うのはよくあることのようです。TRPGで遊ぶときは、毎回世界を救うセッションなんていうのも毛色が変っていて面白いかもしれません。


ウォーハンマーとの関連について


 FFゲームブックの始まりにいつも書かれているように、スティーブ・ジャクソンとイアン・リビングストンは大当たりしたゲームズワークショップの創設者達です。二人の抜けた後のFFシリーズを支えてきた作家の中にも、ケイス・マーティンやジョナサン・グリーンらのようにゲームズ・ワークショップのメンバーがいます(多分)。そのため、ゲームズワークショップの看板作品であるRPG「ウォーハンマー」の影響がFF世界にも現れるときがあります。

 「ウォーハンマー」の特徴はなんといっても<混沌>というド迫力で迫る悪の勢力と、キャラクターのなれる豊富な職業です。FFシリーズも「混沌の支配者」(MASTER OF CHAOS)「火吹き山ふたたび」(RETURN TO FIRETOP MOUNTAIN)「運命の騎士」(Knights of Doom)といった作品で、混沌の番兵として有名なケイオス・ウォリアーやビーストマンが強敵として立ちはだかります。
 職業の方も、「王子の対決」に出てくる魔女ハンター、ドラジェシマはウォーハンマーの魔狩人(ウィッチ・ハンター)そのものですし、「運命の騎士」のテンプルナイトもそうかもしれません。
 そもそも旧世界(オールド・ワールド)という名称はウォーハンマー、FF世界のどちらにも登場します。どちらが先なのかはわかりませんが。

 「ウォーハンマー」世界の退廃的な雰囲気や、高慢ちきすぎるエルフといったシチュエーションまで持ち込むのではなく、あくまでおいしいところをFF世界らしく取り入れたところが好感の持てるところです。


神々について


 冒険者のための書かれた「タイタン」には、植物の女神ガラナや大地の女神スロッフのように善い神々だけではなく、悪意の神スラングや創造主ハシャクといった暗き神々のことも記されています。これらの神々が対立していることも。ところが「トロール牙峠戦争」(TrollTooth Wars)のクライマックスでは、また違った感じで神々の関係が描かれています。

 神々は俗界を舞台にしたゲームに興じており、駒として己を代表するチャンピオンを選び(リーブラは戦士、ハシャクはザラダン・マー)、彼らチャンピオンの勝敗でゲームの勝ち負けを決める。そのゲームの審判は策略の神ロガーンである‥‥。このような関係が見えてきます。どうやら英雄や悪党は、神々の選んだ大切な手駒であり、タイタンはその舞台となる遊戯版のようです。しかしこのことを知っているのは神々だけです(あと、天界に招かれた一部の英雄)。タイタンに住む者はみな、善の神々と暗き神々は対立関係にあると信じているのです。


テクノロジーについて

 FF世界では、旧世界を除いて、文化程度はあまり高くないようですが、なぜかよく機械類が登場します。
 「死のワナの地下迷宮」にはスロットマシンのようなものがありますし、ソーサリー・シリーズで得体の知れない機械装置に出会った人もいることでしょう。謎かけ盗賊のアジトには分子混合機、合成人間の生産工場、機械鎧などオーバーテクノロジーに満ち溢れています。もっとも謎かけ盗賊は人間ではないので、これらをタイタンの産物とするのは無理がありますが。
 まともな部類では、「蘇る妖術師」の熱気球(機械?)、「メイジハンター」の主人公が使うスリントロックピストルあたりでしょう。
 さらに、コンピュータゲームの「デストラップ・ダンジョン」では火炎放射器やマシンガンのようなものが出てきます(さらには自動人形まで!)。さすがにこんなものがポコポコでてくるようでは困りますが。  ゲームのアクセントとして登場させる場合は、アランシアを焼き尽くす「機械兵器」なんていう扱いよりも、洞窟の隅でほこりをかぶっている「なんだかよくわからない歯車だらけの装置」といった謎めいたものの方がFFらしいような気がします。


教養程度について

 旧大陸のアナランドの人々は数字(算数?)に親しんでいるようですが、カーレの人々はそうでもないようです。しかし、「ものごころつくとまず値切ることを覚える」タイタン世界ですから、売買程度の数字に強くないとやっていけないでしょう。

 ではタイタン世界では一般的な人々は文盲なのでしょうか?AFFには「多くのものは熟達の程度こそあれ読み書きができる」とあるので、まず文盲ということはないでしょう。「君」の見つける品々にはよくルーン文字で数字が記されています。ルーン文字は刻みやすい文字であって魔法文字ではないので、これも結構知られているのでしょう。魔女フェネストラがゴブリンに呪文を渡しているところを見るとゴブリンでさえ文字が読めると思われているのかもしれません。
 ちなみに邪悪な人間型種族はオーク語を共通の言葉として話します。するとゴブリンもゴブリン語とオーク語を話せることになります。二か国語とは結構賢いのかも。


魔術師の法則

「魔法合戦」を挑まれたら、応じなければならない」というあらゆる魔術師間の掟があります。(タイタン)


異種族について

森エルフ

タイタン世界のエルフにはかなり特異な特徴があります。

寿命は200歳〜250歳
弓の腕前に長けているが、剣も使う。
森の番人だが火に対する禁忌はとくにない。むしろ、光や炎の呪文に頼る傾向がある。
ハイ・エルフもいる。(恐怖の幻影)
エルフを守護する神々は、夢を通じて語りかけてくる。
人間の魔法を「爆発じみた手品」と呼ぶ程の高等魔術に通じているが、それらは長い儀式と瞑想が必要なため、森の外では使われない。(アランシア)
村を統治する貴族階級がある。(モンスター事典)
森エルフは半分眠ったような催眠状態になれる「安全装置」がある。山エルフはこれを呪文によって行う。(タイタン)

暗視能力は?

 AFFのエルフ必要スキルに[暗視]が含まれない。  「森エルフでさえ中がよく見えない」(恐怖の幻影)  「太陽が見えないときでも森エルフは‥‥地形のしるしを読み取れる」(恐怖の幻影) これらのことから、森エルフは暗視能力はありませんが、森の知識には長けているので、薄暗い森の中を自由自在に動き回れるようです。

ティール・オン・ナグ

 エルフにとっての約束の地である島です。

・「母なる海の息子の島」
・時が来れば誰もが行かなくてはならない島
・砂でできていて飲むことも渡ることもできない水に囲まれている。

アフェン森のエルフ

暗黒大陸クールのアフェン森に住むエルフの特徴です。

・肉を食べない。
・ガロレン族のシャーマンは夢の世界へ入って行ける。

ルールについて


・特殊技能のルール

 「真夜中の盗賊」と「ムーンランナー」「運命の騎士」の作品ではAFFにもあった特殊技能が導入されています。もちろんAFFのように[忍び足]技能が9点というようなものではなく、[忍び足]の技能を持っていれば、自動的に成功したものとして扱われます。これはある意味で、即効性があり、「自分はこの技能の達人なんだ」と感じられるぶんRPGよりも気持ちがよいものです。ストーリー的にも、その技能を持っているからには、その場面では成功して欲しいはずです。
 キャラクター作成の点から見れば、いつもの三つの能力値だけでは完全に運まかせですが、特殊技能の選択は自分の意志で決定することが出来るので、複雑でもなくそこそこ幅のあるものが出来あがります。
 「夜の死」では、この技能を「能力」(talent)と呼んでいます。確かに、[亡者退散]など呪文のような力は技能というより能力でしょう。


・魔法のルール

 タイタン世界では、非常に多くの魔法体系が存在するようです。FF作品を見てもわかるように、様々なルールがあります。

あらかじめ選んでおく呪文 「バルサスの要塞」「謎かけ盗賊」
スペルを覚えて使う呪文 ソーサリー・シリーズ
魔法の石を用いる呪文 「サソリ沼の迷路」
体力消費の呪文 ソーサリー・シリーズ、AFFシリーズ、「恐怖の神殿」
魔法点消費の呪文 「王子の対決」「恐怖の幻影」「ザゴールの伝説」(タイタンでないのもあり)

 魔法の石は素養の無い者でも、呪文が使える便利な石です。しかも、使い捨てなので、手ごろな報酬としてもぴったりですし、敵の黒騎士あたりが、戦闘の補助に使っても面白いでしょう。
 ソーサリーででてくるアルファベット三文字の呪文は、他の呪文系統と比べても、かなり変わっています。
 旧世界では、魔法は国家機密で、どの国にも独自の呪文系統があるのでしょう。


・鎧のルール

「影の戦士の伝説」ではFFでは珍しく、鎧の効果があります。次のようなルールになっています。

・鎧を着ていると、戦闘で被るダメージを何点か減らせる。
・鎧固有の回数だけ身を守ってくれる。
・鎧を着ている間は技術点ロールのダイスに+1しなければならない。

 例えばチェインメイルは10回まで、戦闘で被るダメージを1点減らしてくれます。


・名誉点のルール

 「サムライの剣」で登場したルールです。不名誉な行いをすると名誉点は減り、サムライらしい行動により名誉点は増加します。名誉点が0になったら、サムライの面目を保つため切腹しなければなりません。
 「破滅の塔」でも、復讐に燃える主人公の名誉点が設定されています。
 「運命の騎士」では、テラクのテンプル騎士としての名誉点があります。
 名誉点の初期値は「サムライの剣」3点、「破滅の塔」6点、「運命の騎士」6点となっています。
 さすがサムライは試練が厳しい。


・時間点のルール

 冒険中、様々なできごとに関わるたびに、時間点は増えていきます。この時間点の値が冒険の成功失敗の分かれ道なのです。
 このルールは「奈落の帝王」で使われましたが、「破滅の塔」「運命の騎士」でも採用されています。


・意志力点と恐怖点のルール

 「恐怖の館」と「ナイトメア・キャッスル」はどちらともホラーの雰囲気が漂う作品です。
 「恐怖の館」は恐ろしい出来事に直面するたび恐怖点を1〜2点加えて、はじめに1D+6点で決めた恐怖点にとどいてしまうと、発狂しておしまいというルール。
 「ナイトメア・キャッスル」は、同じく恐怖体験のたび、1D+6点で決めた意志力点を、運だめしのような意志力だめしによって判定していくルールです。これが6点以下になると正気を保てなくなって、おしまいになります。
 恐怖点は判定がないぶん、(減点をかわせないので)やや押し付け的で、一方意志力点は、判定があるのはよいけど、そのつど1点減るのがつらい。
 これをAFFに用いることを考えると、意志力点ルールにして、意志力点をやや多めに設定しておくのがよいと思います。


ルールについて その2

・こぜりあい(Sukirmish Battle)

未訳FFである36巻「死の軍団」(Amies of Death)には、他のFF作品にはない 軍勢による集団戦闘のルールが用いられています。“Sukirmish Battle”と 名づけられたルールは、おおまかに言って次のような感じです。

・パラメータは軍隊の数だけ。5人単位で増減する。
・サイコロ1個を振って、結果表を参照する。
・こちらと敵との軍隊の数の優劣で参照する項が違う。
・結果のぶんだけ敵か味方の軍勢を減らす。
・どちらかがなくなるまで繰り返し。

見てのように、決めては軍隊の数とサイコロの出目です。
単純ながら、ゲームブックの流れを壊さないシンプルなルールだと思います。 この結果表をみると、ほんのすこしだけ「君」側に有利なようになっています。

そこで、まだ物語は遊んでいないのですが、パラグラフ中の戦闘を抜き出したりして、 何回かやってみました。それで気がついたのは、次のようなこと。

・サイコロの出目はかなり重要。
・あっという間に勝負は決まる。

結果表にある軍隊の被害が非常に大きいので、勝負は下手をすると一振で 決まります。 やや有利といっても大規模戦闘。「勝負は水もの」言葉が表すように、 いつも勝てるとは限りません。
AFFの集団戦闘とはまた違った味わいです。