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ルール・ザ・ワールド ワイルド7

『ルール・ザ・ワールド ワイルド7』
は国際通信社から発売されているTRPGです。 20年前のTRPG黎明期に発売された、汎用ヒーローもの再現ルール『ルール・ザ・ワールド』と、 ここ最近に作られた「ワイルド7用ルール」(モジュール)が収録されていて、これ一冊だけで遊べます。

正直、過去に発売された「ルール・ザ・ワールド」はその手軽さとちょっと変わった一般行為判定を除けば、 評価の高いシステムではありません。 あらゆるヒーロー物をカバーしようとして、ルールやデータが不足気味で、 超能力やメカなど個々の要素が薄くなってしまっています。 それに、正義の味方組織リストや武器表を見ると、結構おふざけな印象を受けます。 パロディっぽいヒーローが街を歩く「うる星やつら」っぽい感じになってしまうような。 なにより、「ガープス百鬼夜翔」あたりと比べるとヒーロー物に対する情熱が感じられません。
(時代の違うTRPGを比べたらかわいそうですが‥‥)

■元ルールを凌駕するモジュール

しかし、追加された「ワイルド7」モジュールと併せることでがぜん見方が変わります。
『ワイルド7』は、70年代のアクの強い少年漫画です。法で裁けぬ悪を処罰する超法規的集団ワイルド7。 改造バイクをかっとばし、リアルな銃をぶっぱなす。望月三起也氏によって少年キングで十年間連載された人気作品でした。

原作を忠実に再現するために、当時のバイクデータの数々が写真つきで用意されています。
もちろん銃器も基本ルール以上に詳細で、RPGamer誌掲載の追加ルールを加えれば同じくイラスト付でお気に入りの銃が選べます。
また、背景資料集として1970年代日本が詳しく紹介されています。社会一般・国内情勢・事件事故など細分化された年表や、 物価表まであるのは恐れ入ります。
こうして、基本ルールで不足していたデータ部分が圧倒的に追加されました。

ルール面でも追加があり、英雄的活躍ができるルールの追加と拡張がはかられています。 原作でおなじみの拷問尋問(敵味方問わずよくあります)もルール化されているのが(笑)。 そして忘れちゃいけないバイクの改造ルールがあります。 そのバイクを使ったスタントも用意されています。

このモジュールでは、 原作の「ワイルド7」を徹底的に読み込んだと感じさせるところが随所に出てきます。 メンバーの使用バイクを突きとめるのは序の口で、すべてのエピソードの概説と敵キャラクターのデータ化、 原作内の組織図まで掲載されています。原作にあるところとないところをきっちりと分けているのも好感が持てます。

というか、ここまでくると、基本ルールに「ルール・ザ・ワールド」使わなくてもよかったのでは? というほどです。

「ワイルド7」という原作を知らないと、どうしてもとっつきにくくなるかも知れませんが、 ここまでのものを提示されると遊びたくなってきます。
ちなみに、自分は未見だった原作をただいま四巻まで読破していつかのプレイにそなえています。

■そして新撰組

『ルール・ザ・ワールド新撰組』
これは『ルール・ザ・ワールド ワイルド7』のサポート誌RPGamer誌で連載されていた、もうひとつの追加モジュールです。 あの動乱の幕末を駆け抜けた新撰組隊士となって、自分なりのサムライの生き様を味わうことが出来ます。

実は、新撰組そのものをまじめに扱ったTRPGはこれまでなかったように思います。 その点でも評価されるべきでしょう。 もちろん、ファンの多い題材なので、これまで有志の手による創作TRPGや、ガープスで新撰組ルールが作られていただろうとは思います。 実はこの追加モジュールも、TRPGカフェとして名高いDaydreamの人たちによって作られているので、そういったスタンスといえるでしょう。

このモジュールでも、資料の面は簡潔ながらも充実しています。 しかし特筆すべきは、大幅追加された技能と、チャンバラを再現した戦闘ルールの追加というところにあるでしょう。
例えば、戦闘中のスタンスを舞台に例えたルールは、ドラマチックなシーンを再現できるとともに、 さりげなく隊列を決めさせるようになります。 いわゆる必殺技に相当する「特技」は、他ゲームで見られる「派手すぎる必殺技」ではなく、 「居合」や「しのぎ」「人垣」(大人数で相手を威圧する)など、ふさわしい渋さが保たれています。
これらを応用すれば新撰組でなくとも、「三匹が斬る!」「八百八町夢日記」など時代劇の剣術ものは簡単に再現できるでしょう。

もうひとつ、プレイへの徹底した気遣いが感じられるのが、サイトで提供されている キャラクタシートや、詳しく知らない人向けのキャラ作成チャートです。 見やすくレイアウトも配慮されているのは、さすがに遊びこんでいることを感じさせられます。 このあたり、プロでも見習うところが多いはずです。

■総括

これらの追加モジュールにより、ルール・ザ・ワールド本体では不足していたデータやルールがガンガン充実してきました。 あと二、三種類も出来のよいモジュールが付け加われば、 ルール原作者の意図した以上に、面白い汎用TRPGに化ける可能性があるでしょう。 なにせ元がシンプルなだけに、追加や改造は「ガープス」以上に容易です。 さくっとキャラを作って、すぐに遊べる。これもまた大きな利点です。

written by RJ
last update:2005/10/17