「忍者くん〜魔城の冒険」は1980年代にUPL社が開発、タイトー販売によりゲームセンターに登場した、かわいいキャラクタのアクションゲームです。
その後、ファミコンや数々のパソコンに移植され、そこそこの人気を博します。
ファミコンの移植を行ったジャレコは外伝的な「忍者じゃじゃ丸くん」シリーズを次々と出し
今も同社の看板キャラクターとなっています。
開発もとのUPL自体はすでに倒産してしまい、現在に至ります。
ここではそんな「忍者くん」の面白さの一端と歴史を紹介してみたいと思います。
ゲーム内容は簡単。レバーで忍者くんを操作して、岩山でちまちま動いている魔物を、手裏剣で倒せばステージクリア。
ステージが進むごとに魔物も黒子、だるま、カブキ、オシシ、オニッコ、ヨロイ、ガイコツ、トカゲと入れ替わっていきます。
このゲームはこの魔物との戦いがなんといっても面白い。
敵キャラは忍者くんの動きにあわせて、動きを次々に変化させてきます。
毎回動きが違うため、「パターンを作る」というゲームお馴染みの作業が通用しません。
ゲームには常にほどよい緊張感が漂います。
このため、忍者くんの操作をマスターすること。敵に不用意に近づかないことなどテクニックを身につけることが
上達の鍵になっています。
このゲームが特筆すべきもうひとつのことは、敵にぶつかってもミスにならないということです。
敵の手裏剣や火の玉などの攻撃を受けてはじめてミスになるのです。
「簡単そうだな〜」と思うかもしれませんが、とんでもない。
接触ミスがなくてもゲームとして成立しているのはすごいことなのです。
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黒子と対峙する忍者くん |
では、ぶつかるとどうなるんだということですが、
忍者くんと魔物がぶつかるとお互いにはじき合います。うまくぶつかると気絶させることができるので、
敵にこっそりと忍び寄って、体当たりし、手裏剣を投げて倒すのが忍者くんの王道と言えるでしょう。
(ただし、強敵は簡単にそうさせてはくれません、動きを読んでかわされてしまいます)
忍者くんのジャンプは少し変わっています。レバーを傾けながらボタンを押すと、その方向にジャンプ。
レバーを動かさずにボタンを押すと、なんと一段下がるのです。うっかり垂直ジャンプしようとすると、
下に降りてしまいます。いまやると、この操作感覚が逆に新鮮です。
敵を倒すと、泣きながら下に落下していきますが、この落下中の敵に手裏剣をもういちど命中させると、
なんと1000点ボーナスが入ります(ぶつけただけ1000点入る)。忍者くんのトリッキーな動きで
なかなか難しいのですが、つい狙ってしまう熱いフィーチャーです。
百発百中ボーナスというのもあります。一発もはずさずに敵の数だけしか手裏剣を使わずにステージクリア
すると、一万点ボーナスです。ちょっと考えればわかるように、二度あて1000点をやると百発百中ボーナスは
無理です。どちらを狙うかは腕前と相談ということです。
さらに敵を倒した後には、巻き物が残ります。これを回収したぶんだけ、ステージクリア時に得点が加算されます。
ところが巻き物のなかにはあたり(姫様)とはずれ(ぼうず)があって、姫様だと巻き物数×2、ぼうずだと巻き物所持数が
0になってしまいます。一種のギャンブルです。
タイムが残り100を切ると、上空から玉が降ってきます。1ステージにひとつしかありません。
これを3つ回収するとボーナスステージに行くことができます。こちらは完全なパターンゲームになっていて、
制限時間内に、散らばっている玉をタイミングよくキャッチするというものです。
出来のよいゲームは、得点にこだわることでがぜん面白くなります。
ただステージクリアを目指すだけでなく、ハイスコアを目指しましょう。
ファミコン版は、ジャレコが移植を行いました。(現パシフィック・センチュリー・サイバーワークス・ジャパン)
見た目はほとんどゲームセンター版そのままですが、いくつか削られている要素があります。敵キャラの
一部がなくなり、ボーナスステージ行きの玉を敵が奪うフィーチャーもありません。
また、ファミコン版は忍者くんの動きがちょっと鈍かったり、つめの調整が甘かったりして、ゲームセンターでやりこんだ人には
不満が残るようです。しかし、ほとんどの人にとって、忍者くんテイストを味わうには問題ないでしょう。
MSX、FM-7、X1版は、日本デクスタが移植を行いました。
MSXのハード性能からグラフィックが粗く、フィールドの岩山もかなり違うものになっています
(MSXのハードを十二分に使いこなせば、もうちょっと綺麗にはできましたが)。
しかし、そこを除くと結構ゲームセンター版を再現しています。玉も敵がきちんと奪いますし、
オシシ、ガイコツ、トカゲもちゃんといます。先の面では分身攻撃もしてきます。
フィールドよりキャラクターの動き再現を優先したのがデクスタ版と言えるでしょう。
他のパソコン版はちょっとやったことがありません。
なまず太夫にさくら姫がさらわれた!忍者くんは修行の旅。その弟じゃじゃ丸くんが、さくら姫奪還に
立ち上がった!。といった触れ込みで登場した、ジャレコオリジナルの作品です。
じゃじゃ丸くんと忍者くんの見かけ上の違いはありません。ドット絵的には同じです。
ただし、じゃじゃ丸くんは、忍者くんのような変り種のジャンプではなく、普通のジャンプ&手裏剣で
敵に立ち向かいます。
総合的に見て、「忍者くん」を操作・演出の面で一般向けにして、難易度を下げたものが「じゃじゃ丸くん」
だと言ってよさそうです。
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一番上でなまず太夫とさくら姫がいつも見ている |
手裏剣で敵8匹をやっつけるという基本線は変わりませんが、まず敵キャラは火の玉以外、総入れ替えされています。
この妖怪、カクタン、ピン坊など敵の妖怪のデザインが、忍者くんテイストを失わないものになっているのは見事です。
「忍者くん」が縦長のフィールドだったのに比べて、このゲームは横長になっています。
じゃじゃ丸くんが天井を崩さない限り、敵キャラもフィールドの上下移動は行えないので、
ゲーム展開を自分でコントロールできます。操作もとっつきやすい左右+ジャンプ、手裏剣ボタンで、
特異なアクションはありません。このため、1000点ボーナスも健在ですが、かなりやりやすくなっています。
崩した天井からはアイテムがでてくることもあり、透明薬やトロッコなどが、ゲームに彩りを添えてくれます。
その面のボスは結構強いので、これらのアイテムをあてにして戦うといった戦法もとれるのです。
四つ目のアイテムをとると、忍法ガマパックンで、がまにのったじゃじゃ丸くんが動けない敵を食べていきます。
ほとんど自動的クリアです。これは手裏剣を使わないので、それまで空投げしていても一万点ボーナスを狙えるのも
大きなポイントでしょう。
敵を倒すと、白いたましいがふわふわと上空にのぼっていきます。これを捕まえると、
面クリア時にさらに得点が入ります。原作の巻物にかわる要素です。ぼくは、
原作の「巻物ぼうずめくり」システムよりも、この「たましい」システムのほうが洗練されていると
感じます。それは、
(1)たましいは動くのでこれを捕まえようとすることで、敵にやられる危険も増すといったゲーム性を
高めるのに一役かっている。
(2)あたりはずれがないので純粋にテクニックが得点に反映される。
という2点です。
敵キャラの思考ルーチンはボス(手強い)とざこの二種類は健在ですが、各キャラによる
違いはあまりないような気がします。
「忍者くん」の剽窃と非難されることもありますが、この「じゃじゃ丸くん」は元祖の要素を
うまく昇華しつつ、とっつきやすくオリジナル要素も加えた、ベストアレンジ賞の作品だと思います。
2003/01/14追加!
近年、携帯電話のiモードで「忍者じゃじゃ丸くん」が復活しています。
画面は狭くなったものの、グラフィックはファミコンより向上しています。
基本的に変更点はなく、1000点ボーナスやガマパックンなどもあるようです。
新天地で活躍するじゃじゃ丸くんの活躍に期待です。
長年の沈黙を破って、忍者くんは帰ってきました。UPLより「忍者くん〜阿修羅の章」が
登場です。縦横に広がるフィールドをあるときは扉を探して、あるときは魔物を全滅させる
ためにかけまわるという、当時流行のタイプになりました。しかし、そこはUPL。
三角飛びという大きなアクションが付け加わっています。壁に向かってジャンプして、
反対方向レバー+ジャンプボタンを押すと、忍者くんは壁を蹴って跳躍できます。
これをくりかえして忍者くんは狭い通路を駆け上り、華麗な空中戦ができるのです。
慣れるとこれがまた気持ちいい。平面のゲームで空中を飛べると実はかなり爽快なのです。
ゲーム序盤は手裏剣片手に突き進んでいきますが、
中盤以降、爆弾を入手してからゲーム展開は変わります。前作でカブキやなまず太夫が使っていた爆弾で、
放物線を描き、爆風でまとめて敵が葬れます。これに味を占めた忍者くんは、
ぼんぼん爆弾を投げてアスレチックフィールドを進んで行くことになります。
今でも「阿修羅の章」を傑作として挙げる人がいます。
それは、違うルートをたどったり、爆弾を使わずにクリアしてみたり、さまざまな楽しみ方ができるからでしょう。
移植作品として、ファミコン版(UPL)とMSX2版(HAL研究所)が存在します。
ファミコン版は作りがやや大雑把なものの、何度も楽しめる質の高い作品になっています。
MSX2版はROMカートリッジの容量不足のためか、ルート選択や最終ボス阿修羅くんなど、結構削られています。
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ボーナスステージをクリア!演出がド派手 | キャラはそのままだけど背景は超美麗 |
携帯用ゲーム機ワンダースワンで、「忍者じゃじゃ丸くん」がリメイクされた「元祖じゃじゃ丸くん」が
発売されました。基本的にはファミコンのじゃじゃ丸くんを受け継いで、ボスキャラ戦が追加されたり、
「〜大冒険」のキャラクターも登場したりして楽しいものになっています。
ひとつ気になるところがあって、
さくら姫の投げる、さくらの花びらを三枚集めるとボスキャラ戦に突入します。
集められないとボスキャラ戦の前にそのステージをやりなおすのですが、ここが問題で、
これは同じ面を何度もやりなおして、得点をかせぐ永久パターンが可能になってしまいます。
これはちょっと残念。ファミコン版では花びらをとりのがすとボーナスステージに行けないだけでした。
ボーナスステージ→得点アップなので行かないと得点ダウン。ボスキャラ戦→障害、ないほうが楽。
と性質が違うのでこのようになっているのでしょう。
しかし細かいことはさておき、1000点ボーナスや忍法ガマパックンなどの要素は健在です。
火の玉の追尾もきつくなって、心地よい難しさになっているようです。
ジャレコから出た忍者くんシリーズではぴか一の出来栄えでしょう。
「忍者くん」を開発したUPL社はいまはつぶれてしまいましたが、
なんというか一風変わった(例のない、斬新な)ゲームを作っていた会社です。
主な代表作は、「ぺんぎんくん〜WARS」「アトミック・ロボキッド」「宇宙戦艦ゴモラ」「オメガファイター」
といったところでしょうか。
哀しいことに、斬新さ、奇抜さというのはそのまま「とっつきにくさ」、「けれんみのある」、といった
ところにも通じて、万人に受け入れられるというわけには行きませんでした。「〜ゴモラ」のとき、開発者は
「説明書を読まずにボタンを押しまくるプレイヤーを見て、ゲームを修正せざるをえなかった」
というようなコメントを残したそうです。
UPLゲームの主なデザイナーだった故藤沢勉さんは、
「人間とコンピュータの知恵比べ(戦い)」をゲームに取り入れたかったと語っています。
それは「ぺんぎんくん〜WARS」、「アトミック・ロボキッド」と段々対決要素が強くなっていくのですが、
確かに初期の「忍者くん」もそんな味わいのある作品ですね。
‥‥と思っていたのですが、藤沢勉さんは阿修羅の章は作ったものの、メインデザイナー(&プログラマー)は
別な方のようです。下記URLで忍者くん作成時のエピソードを公開されています。それによると、
なんでも「マッピー」の影響を大きく受けたとか。
この方が基本グラフィックと、ぶつかって戦う基本システムを考えたようです。
敵キャラの思考ルーチンもこの方なのかは、ちょっとわかりませんが。
そんな想いを知ってか知らずか、忍者くんは今日も手裏剣を投げ続けます。「わきゃきゃ」
忍者くん〜魔城の冒険(ゲームセンター他) |
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上記参照 |
忍者くん〜阿修羅の章(ゲームセンター他) |
上記参照 |
戦国忍者くん(ゲームボーイ) |
アクションRPGになった忍者くん。平面フィールドの妖怪を倒したりして進んでいく ものの、動きが遅すぎるので忍者くんの手に汗にぎる感覚がないのが残念。 ストーリーは日本史の登場人物が出てきたり結構真面目です。 |
忍者じゃじゃ丸くん(ファミコン他) |
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上記参照 |
じゃじゃ丸の大冒険(ファミコン) |
前作の雰囲気はそのままに、横スクロールで進んでいくタイプのゲームになっています。 敵を倒さなくてもよく、いくらでもわいてくるので、忍法や得点システムがあんまり意味の ないものになっているのが残念。ボーナスステージのボスキャラ戦は、「サスケVSコマンダー」 を思い出させるなかなか緊迫感あふれるものになっています。 |
じゃじゃ丸忍法帖(ファミコン) |
この頃のファミコンゲームは、ドラゴンクエストの影響をうけて、なんでもRPGに なりました。これもそのひとつです。いまやるにはちょっとつらいです。 |
じゃじゃ丸撃魔伝〜幻の金魔城〜(ファミコン) |
2003/09/26追加! ストーリーはシリアスなアクションRPGです。 平面フィールドで村や洞窟を進み、ボスキャラを倒して術を獲得していきます。 序盤の武器は射程距離がやや短い分銅です。16x16ドットキャラですが忍者くん型とはちょっとデザインが違います。 やや単調ですが、経験値がないのは斬新かもしれません。 |
じゃじゃ丸銀河大作戦(ファミコン) |
じゃじゃ丸くんとさくら姫が銀河大王からのSOSを受けて、不思議なハンマーを手に 機械帝国相手に横スクロールアクションで突き進むというものです。 もう違うものになってしまっています。別にじゃじゃ丸くんでなくとも‥‥ しかし、純粋なゲームとして見た場合、とれるアクションが結構あり、 同時期のファミコンゲームに比べて、質は高そうです。 |
おいらじゃじゃ丸!世界大冒険(ゲームボーイ) |
横スクロールジャンプゲーム。わりと「〜大冒険」に似ていますが詳細はわかりません。 |
すーぱー忍者くん(スーパーファミコン) |
「忍者くん〜阿修羅の章」をモチーフに、スーファミらしくアレンジしたゲームです。 巨大戦艦内部に突入したり、からくりウォーカーマシンと戦ったりします。 原作と同じく武器は増えますが、三角飛びはできません(よじ登りはできる)。かわりに、ダッシュと 敵の持ち上げと、マリオ風のアクションが追加されています。魔法っぽい忍法もありますが、 ほとんど使いません。たましいはありますが1000点ボーナスの類はなくなっています。 そしてなんとライフシステムです。 ボスキャラ戦はそれぞれ凝っていて、結構楽しめます。 このゲームは明らかに阿修羅の章を参考にしているので「原作UPL」の表記が欲しかったところです。 ださなきゃいけないってことはありませんが。 余談ですが2Pの青忍者の名前が知りたいです。 |
元祖じゃじゃ丸くん(ワンダースワン) |
上記参照 |
忍者じゃじゃ丸くん 鬼斬忍法帖(プレイステーション) |
2003/08/25追加! 詳細はわかりませんが、3Dキャラによるアクションゲームです。 一応スコアの概念はあるようです。 |
忍者じゃじゃ丸くん・乱舞(iモード) |
2003/09/26追加! 初代忍者くん、じゃじゃ丸くんのテイストを受け継いだ作品のようです。 三角飛びやブロック破壊に加え、ため打ちやタックルなどのアクションも追加されているそうです。 |
じゃじゃ丸くんJr.伝承記〜ジャレコレもあり候〜(GBA) |
2004/04/30追加! じゃじゃ丸Jr.をメイン主人公に、じゃじゃ丸やじじ丸が活躍する横スクロールアクションゲーム。 三角飛びや張りつきジャンプ、二段ジャンプのアクションに加えて、巻物による忍術もあります。 体当たりも健在。途中で救出した仲間を次回のゲーム時に選択できます。 ジャレコのファミコンコレクション(じゃじゃ丸くん/じゃじゃ丸の大冒険/シティコネクション/エクセリオン/フォーメーションZ)も遊べます。 |
忍者じゃじゃ丸くん〜ペンは剣より強しでござる〜(DS) |
2009/07/05追加! じゃじゃ丸20周年記念のフルタッチペン操作のアクションゲーム。 かなり画面写真もあったのですが、残念ながら発売中止になったそうです。 原点にも戻りつつ、ペンで新アクションができていたら面白いものになったかも。 いつか陽の目を見ることを祈って。 |
この記事は下記の資料を参考にさせていただきました。