サキソフォーンへの挑戦      -修理記-


2012.3.5


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 左手人指し指のキーを押すと「シ」。これを離して中指を押さえると「ド」だが、この「シ」のキーを離すとなぜか金属の当たる音がする。ためつすがめつ観察すると、タンポの蓋(?)にサイドキーを上げるバー(左手の指で押さえる一番上のボタン。余り使わないボタンでフラジオの時に使うみたい。)が「シ」の蓋と当たっている。このボタンを押すとサイドキーが開き、あちこちのキーも開いて「シ」の蓋を閉めるようになっている。あー。キーの固有名詞がわからんものだから、ややこしい説明だ。仮にこれを「フラジオキー」と言うことにする。私が説明上つけただけの「新語」(?)。

 「フラジオキー」の貝殻の裏には一応フェルトが貼ってあるが、その部分に行きつくまでのアームの部分が「シ」の蓋に当たっている。ネジを緩めて「フラジオキー」を外してみると、やっぱり「シ」の蓋に当たり傷が付いている。
 金属同士が当たるから「カチン カチン」と金属音がするのだ。「フラジオキー」のフェルトを厚く貼り増すか? それともアームの当たっている所を削り取るか? フェルトを厚くするには糊で貼り増しをすることになる。が、それはなるべく避けたい。Sax本体をお湯で洗う時があるから、なるべくなら糊がはがれて欲しくない。

 このアームは強度を考えてか、アームの断面が三角形になっており、その山がキーの蓋に当たっているのだ。

 思案の結果、貝のボタンの近くで「シ」の蓋に当たっている部分を削り取ることにした。
 フラジオキーが「シ」の蓋に当たっているところにぺんてる筆で目印を付けておく。

 道具は工作用の細かい半円ヤスリ+バフ用に工作用リューター。

 失敗したら元も子もなくなり、きっと高価なパーツを買わざるを得ないだろうから、作業のイメージトレーニングを重ねておいて、ヤスリで少しずつ削っていく。少し削っては本体に仮り付けして加減を見る。
 フラジオキーと「シ」の蓋の間に薄い隙間が完全に確保できるようになるまで少しずつ進める。
 これで良いということになったら、ゴムバフの付いたリューターでさっと削り跡とバリの部分を取る。

 これで気になっていた金属の衝突音がなくなった。メンテナンス料が節約できた。

 キーの先が管体に当たるところは小さなコルクが糊付けしてあって、管体を傷つけないようにしてあるが、以外とこのコルクが剥がれ落ちることがある。慌てて楽器店に持ち込まないで、ホームセンターに行くといろんな大きさのコルクが揃っているから、適当なのをゲットしてゴム系ボンドで貼れば十分だ。コルクの大きさは米粒ほどもあればよい。

 ネックにMPをねじ込む所に緩衝材としてコルクが巻いてある。これも薄いコルクの板(厚紙?)状の物をゲットして来て、古いのを丁寧に剥がし、新しいコルクを巻いて、ヤスリで丁寧にMPの内径に合うように削って整形すればそれで十分に合格だ。レッスンの先生に聞くと、ティッシュペーパーを巻いてMPの緩みをごまかしていたというから、そんなに超精密な精度を要求されるものではない。
 

 フラジオキーが当たっている 当たっているキーの場所 
 「シ」のキーの蓋とフラジオキーが接触している フラジオキーを取り外す 
タンポの蓋にも傷がある 傷のアップ 
フラジオキーを取った「シ」の部分
 「シ」のキーの蓋に傷がある
 
当たり傷の部分の拡大 
ヤスリで削る 削った跡
 フラジオキーの峰の部分を少し削る  これだけ削った  
リューターで仕上げ 調整出来た 
リューターでヤスった部分にバフをかける  わずかに隙間ができて完成


 ついでに「リード削り」の方法だ。リードをマウスピースに付けておいて、鳴りの悪い部分にカッターナイフの刃を直角に当て、粉が出る程度に擦っていく。少し削ってはネックに差し込んで吹いてみる。ちなみに高音部はリードの先の範囲、中音部はリードの真ん中あたり、低音部はリードの根っこに近い部分だ。指でなぞってみると、微妙に膨らんで感じる所は分厚いということ。その分厚さが鳴りに影響している。ちなみに写真でカッターナイフの当たっている部分は中音部あたりだ。

 段々慣れて来ると、どの音程が悪い時は、どのあたりを削れば良いかがわかるようになってくる。不思議なものだ

 ヤスリやカッターナイフなどがなかった頃、工作でバリを取ったり研磨に使ったのは硝子の破片の角だった。「リードを削る」というのはそういう工作方法なので、カッターナイフで鉛筆を削るような削り方ではない。

 600番〜1000番程度のサンドペーパーで擦ってもできるが、実はこっちの方が削るための技術が難しい。よく、トクサを乾燥させた物で削るというが、トクサはそもそもサンドペーパーというものが世の中になかった頃に、サンドペーパーの代用をしていた物で、トクサはサンドペーパーの元祖というだけのこと。私らの小学生の頃は、サンドペーパーなどは買ってもらえず、トクサで磨いたものだ。

 サンドペーパーの磨き方は、決してペーパーだけを対象物に当てて、指で押して研磨するものではない。平面の台木にペーパーを巻き付けるようにして、ペーパーの研磨面を平面に保たないと研磨面がかえって凸凹の仕上げになってしまう。
 慣れればカッターナイフの方が微妙に上手く削れる。いや、それは私の工作技術がすばらしいからではあるが…。

 次の機会には、みんなが怖れ戦いているサキソフォーンの入浴の様子を紹介したい。

 唾でコテコテになって、やがては象の肌のように…。「これが年季の入っている証拠だ…」などというものの、所詮は唾と埃りとサビのこびりついた手入れの行き届いていない楽器だ。宗玄寺の本堂の仏具などはいつもピカピカだ。

 道具はネック用と本体用のスワブを各1本。
 台所用の中性洗剤を少々。
  (レモンの香りのするのが良い。♪甘いレモンの味がする♪ と、幼稚園の頃の初恋を想い出せるかもね)
 使い古した歯ブラシ(細くて柔らかいのが良い)。細かい所をそっと洗うために。
 柔らかい台所用食器洗いに使うスポンジというか小さな布切れ。これで外側を大まかに洗うのだ。
 場所はお風呂で体を洗う所に風呂マットを敷いておく。これがつまり「風呂敷」というものの起源ですわ。
 40度程度のシャワー。お湯で洗剤を洗い流すと、真鍮の管も暖まり、乾燥が素早いので一石二鳥だ。
 拭き取り用のバスタオル1枚。ほとんどすぐに水が飛んで乾いているので、やや無用の長物に近い。
 所要時間は15分以内に納める。長くお湯に親しますと、小原庄助になって、楽器の性根がなまくらになりますぞ。
 仕上げは楽器用ラッカーポリシャー液を少々。
 これで外観はピッカピカに。(既に錆てしまっているものはやっても無駄です)
 内側にこびりついている埃や歯糞の臭い、口臭などはきれいさっぱり除去できますなー。

  これも自己責任でっせ。変になっても私に責任を転嫁しないでね。しかし必ず出来ます。
 
 言うときますが、どの道の達人も、自分の使う道具は大切にしますなぁー。サキソホーンは唾のミスト(霧)の中で吹いてるんですわ。吹き終わったら丁寧に外側も中側も唾を拭き取って、楽器を大事にせなあきまへん。
 大工さんなら鑿や鉋や鋸を。佐官さんなら鏝やブラシ。板前さんなら包丁ですわ。坊さんなら衣やお経の本ですわ。道具を粗末に扱う人は大成したためしがありまへんで。

 実際の作業の写真やコツは次回のお楽しみに。

カッターの刃でリードを削る
リードは十分濡らしておくこと。 
カッターナイフの新品の刃をリードに直角に立てる。

刃はリードの根本から先に向かって動かすこと。
逆に動かすと繊維に逆らうので絶対にダメ。

リードの断面は緩いかまぼこ形になっている。
かまぼこ形に沿って削っていくこと。

切るのではなくて、「こする」要領だ。
細かい粉のカスのような物が出る程度の削りでOK。

しかし、自己責任でっせ!!
失敗しても私のせいにしないでね。


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