漁船徴用の申進
 
 2月2日、元徴用漁船船員の伊藤弥三氏が来所、戦時中海軍軍属として徴用された期間の認定について、厚生省の援護局とトラブっている現状を伺った。その折持参された書類の中に本稿があった。
 当時の漁船徴用に拘わる資料として紹介する。


軍務−機密第102号                昭和17年2月12日
                          
                        海軍省軍務局長
                        大本営海軍参謀部第一部長
横須賀鎮守府参謀長殿
連合艦隊参謀長殿
第四艦隊参謀長殿
第五艦隊参謀長殿

 
 短波無線電信機ヲ有スル鰹鮪漁船ヲ漁撈ヲ兼ネ監視任務ニ充当ノ件申進
 
 
主題ノ件ニ関シ別紙ニ依リ実施ノコトニ定メラレタルニ付関係事項ハ左記ニ基キ処理相成度
                 
                 
一、横須賀鎮守府ハ本任務ニ充当スベキ漁船ニ対スル全般的指導統制ニ 任ジ出動漁
 船ニ対シ所要ノ指示ヲ与フルト共ニ関係事項ヲ第4、第5艦隊ニ通報ス
二、第4、第5艦隊ハ漁船ノ監視任務ニ関シ必要アル事項ニ就キ横須賀 鎮守府ニ協
 議ノ上極力之ガ利用ヲ図ル(別紙添)                 (終)


 別 紙
 本州東方太平洋上ニ配備スベキ特設監視艇ニ関シ第5艦隊ハ最小限120隻ヲ必要トスル旨要求シアル處既ニ漁船徴傭余力ナキ現状ニ鑑ミ此ノ方面ニ90隻ヲ配当スルコトニ定メラレタリ
 右特設監視艇ノ補助トシテ太平洋方面ニ出漁スル鰹鮪船中短波無線電信機ヲ有スルモノ29隻(概ネ東経160度付近ニ出漁ス)ニ対シ海軍ヨリ燃料ヲ支給シテソノ行動ヲ規正シ洋上監視力ヲ増強スルト共ニ兼ネテ水産食料増産ニ寄与スルヲ適当ト認メ左ニ依リ実施ス
1、交付スベキ燃料
  重油年額4,000屯以内
  差当リ第1回四半期分トシテ1,000屯以内ヲ交付シソノ成果ニ応ジ爾後ノ交
 付額等ヲ決定スルコトトスル

  (説明)
   
使用船29隻ノ1年間所要燃料約5,000屯中配給燃料1,000屯ヲ控除
  セル額ヲ海軍ヨリ交付スルコトトス
2、配備地点
  北緯35度東経160度ノ点ヨリ南鳥島ニ至ル間(約600浬長ヲ4等分シ北
 方ヨリABCD哨戒区トシ各区ニ概ネ3隻宛在ラシムル如クス
3、出動基地
  三崎、清水
4、行動要領
  使用船ヲ3組ニ分ケ10日間隔ヲ以テ出動セシメ指定配備点ニ至リ約1月後
 (概ネ漁獲物満船スルモノト予想ス)基地ニ帰着スルモノトシ此ノ間適宜正午位
 置ヲ関係海軍部隊ニ電報セシム、敵艦敵機ヲ発見セバ船舶防空監視心得ニ依リ発
 電セシム
5、監視員
  船長及所要船員ヲ以テ編成シ之等人員ニ対シ予メ講習ヲ実施スルト共ニ艦型図、
 飛行機略図ヲ交付ス
  右講習ノ成果ニ依リテハ各船ニ下士官兵1名宛乗船セシムルネコトアルベシ
  監視員1名ハ漁労中ト雖モ当時見張リニ専念セシム
6、漁獲物ノ処理
  農林省ニ一任スルモ海軍ノ必要量ハ優先取得ス(増産予想額鮪約300万貫)

             (戦没船を記録する会会報第16号(1997年発行)より)