映画  いま、会いにゆきます

監督:土井裕秦、脚本:市川拓司、俳優:竹内結子、中村獅童、武井証、

未だ20代の父親と6歳の男の子、大切な妻を亡くして3年目、2人の前に突然亡くなったはずのあの人が還ってきた。森と湖に囲まれた美しい緑の中の小さな家に温かい幸せが還ってきた。母を囲んで素晴らしい梅雨の6週間が始まった。

 

秋穂 巧と榎田 澪は机を隣同士にする高校同級生だった。陸上選手の巧に対し、澪は3年間密かな恋心を抱いていた。東京と松本とそれぞれ別々の大学に進学した2人は、1本のシャープペンシルをきっかけに再会し、文通が始まる。しかし巧は、過剰練習が原因で体調不良をきたし、やがて陸上も、大学も恋もあきらめ、澪の前からも去っていこうとする。しかし澪はあくまでも巧を求め、彼女の愛を貫いていく。自分には巧しか居ない、澪の想いは本物だった。

 

そして2人は結ばれ、可愛い男の子、佑司を恵まれた。しかし、澪は産後不調が原因でこの世を去り、残された父子には淋しい毎日だけが待っていた。

 

そこへ、突然、澪が還ってきた。澪のタイムスリップは、21歳の学生にして、すでにこの世を後にした8年後の自分の世界へのタイムスリップだった。

 

映画は佑司のあどけない、可憐な姿や、妻を思う巧の誠実な愛情の中に、早世ではあったが、幸せだった澪の人生を再現させ、愛の美しさを謳いあげている。森と湖の美しさの中で、幻想的な世界が、幸せな親子3人の姿を美しく謳いあげている。涙を流す感傷物語ではなく、美しい幻想絵画を観るような感動が、格調高く全編を貫いている。

 

死んだ人がもう一度還ってくるなんて、あり得ない夢だと言い切る平板さはこの映画のどこにもない。緑の濃い、森の中でひょっとしたら、こんな物語があっても良いなあと、心のどこかで憧れる、そんな世界を見事に結晶化している。映画を観終わって気分は爽快だった。劇場には高校生のカップルが一杯で、ああ君達は青春の真っ只中にいるのだなあと一種のうらやましさと懐かしさを実感させる時間でもあった。

 

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