ベニスに死す          ルキーノ・ヴィスコンティ監督 イタリア映画    BS洋画劇場

イタリア ベニス(ヴェネティア)に1人の芸術家が ドイツ・ミュンヘンから長期静養にやってきた。ベニス最高の豪華リゾートホテルに宿泊する彼はすでに妻と娘を亡くし心臓を患う初老の身であり、残り僅かな自分の人生を砂時計に見て、「細い穴を落下する砂時計。最初は何の気にも留めなかった砂の流れも、最後の残り僅かな砂の流れが身にしみる。」と独りホテル個室でつぶやく。

 

ホテルにはヨーロッパ各国の上流階級が集まっていた。その中に美しい夫人を囲む5人の家族がいた。そのポーランド貴族一家にはギリシャ彫刻から出てきたような美少年がいて、ホテルロビーで素早くその美しさを見つけ出し、じっと見つめる初老の芸術家。彼は少年に激しい官能のうずきを感ずる。

 

初老の芸術家アシェンバッハは、知性と道徳こそが人間の価値を高める最高の哲学と信じ、彼の作品において、このテーマを貫徹し、作品を創りあげてきた。しかし、彼を理解しようとする友人達は、初老の芸術家アシェンバッハの住む世界を批判し、人生には知性以上に、官能にも通ずる感性こそが大切であると強く示唆してくれたが、アシェンバッハは官能は知性に従ずるものであると主張、譲らなかった。彼は貴族の称号にまで授与される大作家となったが、しかし次第に聴衆は彼の世界を否定する時代がやって来た。

 

初老の芸術家アシェンバッハはホテルで見かける紅顔の美少年に心惹かれ、ソクラテスがパイドロスに心奪われたごとく、美少年タジョの後を追う。そのころベニスには恐るべきコレラが流行し始めていた。しかし観光都市ベニスはコレラ蔓延を隠し、ホテル客は毎日海岸で太陽を楽しんでいた。

 

初老の芸術家アシェンバッハは、ベニスの町に何か異常な病が流行し始めていると感じ取り、ついにコレラ蔓延ベニス脱出を示唆する忠告者まで出てきたが、彼の心にうずくのは、あの美少年の姿であり、少年を求めベニス脱出をたじろぎ、とうとうホテルプライベートビーチで、コレラに罹って死んでしまう。

 

実はこの映画はトーマスマンの同名小説を映画化したもので、ドイツの知性と、イタリアの太陽と、知性と官能の葛藤を見事に描き出した名作の映画化であり、監督ヴィスコンティの力作である。

 

懐かしいベネティアの数々の風景や、リゾートホテルに繰り広げられる19世紀の上流世界の華やかな雰囲気と知性と官能というテーマの面白さが映画の中で生き生きと捉えられ、久しぶりに面白い映画を観た満足感に浸ることが出来た。映画は本当に良いものだと実感する。

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