定年後に読む資本論
21産業革命とエンゲルスーイギリスにおける労働者階級の状態、東北大服部文男
1842年から1844年まで、エンゲルスは父親の出資しているエルメン・アンド・エンゲルス商会の紡績工場ビクトリア・ミルにて実業人として活躍するかたわら、エンゲルスはイギリスの社会や政治についての知識を深め、経済学や空想的社会主義の文献を研究するとともに、共産主義者やチャーチストやオウエン派社会主義者とも交流を深めていきます。

エンゲルスはマンチェスター到着まもなく、アイルランド娘メアリーと知り合う。彼女は最良の伴侶であった。アイルランド人労働者の劣悪な状態をつぶさに調査したイギリスのおける労働者階級の状態は、エンゲルスとメアリーの愛の結晶でもあった。

老年になってエンゲルスは、「よかれあしかれ著者の若さのしるしを留めている「イギリス労働者階級の状態」を読み返してみて、少しも恥かしがる必要はない」と言い切った時、メアリーとともに歩んだ青春の思い出が胸にあったに違いません。

初版の序文にあるように、労働者階級の状態は、現存の社会的困窮の最高の、最も露骨な頂点であり、したがって、また現代のあらゆる社会運動の実際の土台、出発点である。

産業革命が全ブルジョア社会を変革したという世界史的意義を持つものであることを明らかにしたのは、エンゲルスが最初だった。

エンゲルスは労働者の悲惨な状態を訴えているのではない。資本主義の競争がもたらす近代ブルジョア社会の経済的しくみが、とくに恐慌についての鋭い把握を中心にすえて解明されるとともに、大都市が労働運動の発生地であるゆえんがあきらかにされます。

同じころ、マルクスは経済学・哲学草稿の中で、やはりブルジョア社会の眼前の事実から出発していますが、マルクスの接近が理論的であったのに比べ、エンゲルスは文字通り足を使って事実に肉迫しました。のちにマルクスが、「資本論」で「イギリスにおける労働者階級の状態」がいかに深く、資本主義的様式の精神をつかんでいるかと感嘆しているのも、ゆえなしとしません。

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