定年後の読書ノート
20フランスの社会主義―初期社会主義・共産主義。東北大服部文男著、有斐閣
マルクスが本格的に社会主義、共産主義に取り組むようになったのは、「経済学・哲学草稿」からです。マルクスは大きくフランス社会主義の影響を受けました。それまでのフランス社会主義の思想が、ドイツに輸入された時、独特な哲学的色彩がほどこされ、階級的性格を失って抽象的な人間主義に変ってしまったことにマルクスは反対の意志を持っていました。同時に、ブルートン等の皮相な思い付きの共産主義に関してマルクスは強く批判していました。マルクスには、深遠な社会主義の研究が必要でした。マルクスは私有財産の平等化を主張する皮相的な共産主義一派にも批判的でした。

マルクスは人間の在り方としての社会主義を考察するに際し、労働者の現実的な在り方のふとつとしての社会主義ではなく、人間の理論的な在り方、すなわち宗教や学問などを批判の対象にしなければならないことを指摘し、理論そのものが、現実をとらえうるようになければならないと考えました。「ヘーゲル法哲学批判序説」でプロレタリアートの歴史的使命を明示しましたが共産主義についての考察はしていません。この頃、マルクスはフォイエルバッハの「キリスト教の本質」を高く評価していました。

マルクスは「経済学・哲学草稿」の中で、疎外された労働の概念から私有財産の概念を導き出し、国民経済学が前提とする資本主義的生産関係においては、第1に、労働者が生産するところの対象、すなわち生産者が労働者から疎外され、第2に、労働そのものが労働者から疎外され、第3に、人間の類的存在が疎外され、第4に、人間から人間が疎外されると述べています。

共産主義は、疎外された労働の廃止、止揚としてとらえます。

しかしブルートンは労働を冨の本質とみなしながら、私的所有をその客体的側面においてだけ考察し、現に存在する資本を止揚すべきとする考えを主張していましたが、これに対しマルクスは労働の為に私的所有に反対するブルートンの擁護する労働は、疎外された労働であると指摘します。

私的所有の普遍化を唱える粗野な共産主義、しかし大切なのは人間がその全面的本質を全人的に我が物とする共産主義であるとマルクスは捉えようとするのです。

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