定年後に学ぶ資本論
18貨幣と疎外―ミル評注、関西大細見英著、有斐閣
草稿2では、マルクスはミルの貨幣を「交換の媒介者」論を取り上げ「事柄の本質を概念にまで高めている」と評しています。ミルは物々交換の不便を除くための手段としての貨幣の媒介という意味を与えていますが、マルクスは、貨幣によって媒介される物と物との交換の背後に、人間の社会的活動をみます。そしてこの行為が疎外されて、人間の外に存在する物の属性になっていると貨幣の本質をみます。対象物を支配する真の力として他の私的所有と等置された私的所有物をマルクスは価値と定義します。

価値が価値として自立的な姿をとったものが、貨幣にほかならない。交換価値の発展とともに生産物はもっぱら価値、交換価値、等価物として生産されるようになる。さらにマルクスは、信用制度を貨幣制度の必然的な発展ととらえ、信用においては金属や紙にかわって人間自身が価値の素材的担い手に、貨幣定在に転化されているゆえに、いっそう極端な自己疎外、非人間化だといいます。人間の本質は、人間が真に共同的な存在であるところにあるとマルクスはいいます。

マルクスは生産そのものの内部での人間的活動の相互的交換も、人間の生産物の相互的交換も、等しく類的活動であり、類的享受であると記します。しかしミル評注では私的所有そのものの発生の必然性は明らかにしていません。ミル評注では、貨幣と資本の連関の問題が追求されていないことと無関係ではない。

正面きって追求されていないこれらの問題は、私的所有の歴史的位置づけと発展諸形態を明らかにするとともに、他方、価値の問題について、その形態と実体だけでなく大きさの問題も射程におさめて、あらためて検討をくわえていく必要があるようです。

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