定年後に読む資本論
15エンゲルスとの出会いー国民経済学批判大綱、福島大畑孝一著、有斐閣
「独仏年誌」にはエンゲルスは「イギリスにおける労働者の状態」「国民経済学批判大綱」の2論文を載せています。エンゲルスは1820年バルメンの裕福な工場主の息子として生まれベルリン近衛砲兵連隊に入隊、生涯軍事科学に深い学識を持っていました。マルクスと本格的な研究を開始したのは、1844年から。エンゲルスの経済学批判大綱にマルクスは大きく刺激を受けました。

エンゲルスは厳格な新教徒の家庭で育ち、宗教の問題で悩み、ヘーゲル歴史哲学に心酔、やがて宗教的関心を越えて、ヘーゲル哲学の矛盾する2つの側面、すなわち体系の反動的性格と弁証法哲学の革命的性格とを区別し、その弁証法の立場に立つようになります。かれは青年ヘーゲル派の中にあって、反動的なシェリングの哲学を批判し、またフォイエルバッハの「キリスト教の本質」によって無神論より唯物論に移りました。

エンゲルスはイギリスにある紡績工場の経営に当たり、資本主義下労働者の実態と階級対立を実見、経済的事実が階級対立の土台であって、しかも大工業によって充分発達したこの対立が政治闘争の土台であることを学んでいく。エンゲルスはイギリスの経済的事実の理論である経済学の研究をはじめ、またプロレタリアートの貧困な生活をみて社会主義への関心を深めていった。

彼は国民経済学批判で、現実の社会、つまり市民社会=資本主義を批判しようとしました。私有財産こそ土地と資本と労働を分離し対立させて、人間を孤立化すると共に、自由な人間的活動である労働を痛めつける。そして経済学は、こうした非人間的な不道徳な状態を容認するのですから、これもまた非人間的な不道徳であると考えます。そしてこの状態を完成させるのは、競争であい、競争は、人間を需要と供給の法則に従わせ、その行き着くところは過剰生産に基く恐慌なのです。

エンゲルスの私有財産批判は、人間の孤立化と対立という人間関係における疎外を基本的な観点にしているのですが、それは人間愛による人間の結びつきに人間性をみとめる、フォイエルバッハの人間主義に基くものでした。そこには、萌芽的には労働の疎外も現れており、これらがマルクスに影響を与えました。

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