定年後に読む資本論
12真の解放と市民社会―「ユダヤ人問題によせて」―関西大細見英著、有斐閣
1844年パリで独仏年誌発行、マルクスは「ユダヤ人問題によせて」「ヘーゲル法哲学批判」エンゲルスは、「イギリスにおける労働者階級の状態」「国民経済学批判大綱」を発表します。ユダヤ人問題によせては、バウワーに対する反論として書かれています。

バウワーは自由な人間になることと国家公民になることを同一視し、国家公民になるためにはすべての人間が宗教をすてなければならないと主張しますが、マルクスは、個人が宗教から解放されなくとも、政治的には完全に解放されること、国家公民になることと真に自由な人間になることとは違い、政治的解放と人間的解放とは区別しなければならないと主張します。

近代国家の本質的性格は何か、マルクスはこれを「人間の物質的生活に対立する人間の類的生活であるところに求めます。政治的国家と市民社会の分裂、国家公民と私的市民への人間の自己分裂、ここに近代国家の本質的欠陥を、したがって政治的解放の限界を見出すのです。

国家公民としての政治的生活は、もともと幻想上の共同生活でしかないのです。実質的・現実的な生活は、諸個人が、エゴイズムを角つきあわせす市民社会で営まれています。

いわゆる普遍的人権なるものは、実は利己的人間の私利追求の権利に他ならないことを、フランスの人権宣言やアメリカの憲法条文の分析によって明らかにします。

政治的国家と市民社会の分裂、利己的私人への社会の解体、ここに宗教の現世的基礎がある以上、普遍的人間解放は、この現世の分裂を止揚することによってはじめて可能です。すなわち真の人間解放は、現世の個人的な人間が、抽象的な公民を自己の内にとりもどし、個人的人間でありながら、その経験的生活、その個人的労働、その個人的諸関係のなかで類的存在になったとき、はじめて達成される。

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