定年後に読む資本論
10現実的人間主義へーフォイエルバッハの影響、中央大山中隆次著、有斐閣
ライン新聞で政治的実践を経たマルクスは、人民大衆のための市民社会分析の必要性、そして経済学を学ぶ必要性を実感する。ヘーゲルを継承したマルクスは、市民社会に対する国家優位の思想を再検討することー哲学の批判―の必要を痛感していた。1943年ライン新聞主筆の地位を去ったマルクスは、ヘーゲル「法の哲学」再検討を開始する。ここでマルクスに大きな影響を与えたのが、フォイエルバッハの宗教批判、現実的人間主義でした。

フォイエルバッハのテーマは、個個の人間と、人間共同体の考察でした。

フォイエルバッハは、1841年「キリスト教の本質」で画期的な人間論を展開します。人間は、現実的には、個人主義、利己主義に走っているが、それだけに彼等は自分達に欠けているもの、すなわち人間本来の姿である共同性にあこがれ、それを追い求めるようになる。こうして作りだされたのが神であり、宗教であり、とくにキリスト教なのです。不断の日常生活では他人をけおとし、利己主義に走る個々の人間は、こうして、日曜日には教会におもむき「汝隣人を愛せよ」の言葉を耳に、神にひれふするのです。要するに隣人愛等々、それまで神の属性とされていたものは、人間本来の姿である共同性が実現されていない為に、人間はそれを神化し、崇拝し、それにしばられることになってしまったのです。これが宗教の人間自己疎外の構造です

ではこの宗教的疎外をどうすれば克服できるのでしょうか。それは主体が神でなく人間であることを自覚し、この神と人間の関係を転倒させることだとフォイエルバッハは提示します。人間にとって、神は人間にほかならぬことを自覚し、この地上に愛を基礎とする人間共同体を実現することだというのです。

マルクスは、ヘーゲル哲学にあらわれた理念、絶対精神というものも、実は有限的な人間の感覚、想像、直観、思惟の無限性が抽象作用を通して、人間の外へ分離、外化されたものであり、その意味では、ヘーゲル哲学はひとつの神学にほかならないとヘーゲルの思弁性を克服していくのです。

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