定年後に読む資本論
7経済問題とのゆれあいーライン新聞2、中央大山中隆次著、有斐閣
マルクスはライン新聞を通して政治的実践を重ねていく。最初は「出版の自由と州議会議事の公表についての討論」と題する論文発表。マルクスの基本姿勢は一貫している。民主政治と出版の自由の要求をとりあげて、人間、自由、国家の本質を理念としておき、普遍性と精神性を大切にしていく。この姿勢は、ヘーゲルの継承である。しかしヘーゲルの立憲君主制論に対しては、自己矛盾している故、自己止揚すべしと批判的であった。また国家と市民社会との関係に関しては、ヘーゲル同様、国家優位の思想である。

続いて、プロイセン政府の宗教政策批判論文は検閲で削除された。マルクスの論理は、宗教と国家は分離すべきであるという近代化を主張したものであり、同時に当時のプロイセン反動政策を押し進めるアイヒホルン文部大臣のみならず、サビーニ法務大臣に対する批判でもあった。こうしてプロイセン国家の反動化に対して、マルクスの烈しい糾弾は続く。

マルクスの論文は、抽象的な哲学概念をもて遊ぶバウワー等自由人派に対し、問題を具体的状況に即して解明する姿勢であり、民主主義を勝ち取る基本姿勢が一貫している。

第3の論文は「木材窃盗取締法にかんする討論」である。山林地主の森林に入って、枯れ枝を拾う貧民の行為を窃盗とみなす法律、そしてこの観点で審議するライン州議会の私的所有者としての階級性を暴露し、議会が市民社会の私的所有者の道具と化していることを洞察する。この論文は、私的所有から排除されている貧民の生活要求を擁護し、マルクスが主張してきた精神的普遍的な人間の自由の具体的な方向を見出した論文でもある。

ここでマルクスは、純然たる政治から、経済関係に、それだけではなく、社会主義に進んでいく。ドイツの他の地域よりも早く資本主義の波を受けていたライン州は、自由主義と並んで社会主義も広く普及していた背景もある。

経済問題と社会主義へと、マルクスが同時にからみあって前進していったことは、マルクス経済学の形成の上でも非常に大切である。

現実の国家や法を動かしているのは、私的所有を基礎とした市民社会であることを気付きはじめたマルクスは、私的所有から排除されている無産階級の運動に、これまでの自分の立場の具体的方向を見出したのでした。「自由な出版」は、たんに知性としてあるだけでなく、感性として市民社会の経済問題を積極的に取り組まねばならないというマルクスの姿勢を益々はっきりさせていくことになるのです。

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