定年後の読書ノート
グローバリゼーションとは何か、伊豫谷登士翁著、平凡社新書
現代世界は大きな転換期にある。資本と労働は、国境を越え、文化と政治・経済の制約を越え、社会の再編を迫る。この現象をマルクス経済学は的確に解析できていない。マルクス経済学が解析能力を発揮出来ていない現代において、現代に相応しいグローバル性を持った理論の確立が急がれる。いずれにしても、「グローバリゼーション」研究はまだ始ったばかりだが、現代を鋭く把握しているように思う。「グローバリゼーション」は現代世界を解くキーワードである。

目下アメリカを含め、全世界的に雇用への不安は増大している。所得格差は拡大し、アイデンティティ喪失や恐怖が人々をナショナリズムや宗教へと駆り立てる。資本のグローバル化が雇用の不安定化を生み出している。発展途上国の無尽蔵な労働力が、先進諸国の雇用制度や福祉国家体制を堀り崩している。企業活動のグローバル化は、発展途上国の低賃金労働と先進諸国の不安定雇用を結びつけ、世界的な規模で労働市場を再編成している。

そこにあるのは、必ずしも飢餓を思い起させる貧困ではない。「グローバリゼーション」によって生み出される貧困のキーワードは「排除」である。これは新しい貧困とも呼べる。

新しい金融資本は1国の外貨準備をはるかに上回る資金が世界の金融市場を駆け巡り、政策すらも左右する。不良債権すらハゲタカファンドと呼ばれる資本によって、価値を生み出す源泉になっている。

かって国家が経済を支配するために持っていた強制力は今や失われ、産業政策は国際的制約を受け、国家財政は国際基準を満たさなければならない。いわば市場の命令によって、国家政策は運用せざるを得ない。領域性に基づいた近代国家による世界秩序の解体が進んでいる。「グローバリゼーション」とは経済的な統合化と政治的な脱統合化によって引き起された不安定な時代である。

グローバル資本の蓄積メカニズムは、企業活動の巨大化や越境化にあるのではなく、労働力再生産過程の市場化とグローバル化によって、労働市場を再編し、資本の新しい蓄積基盤を創りだしている。

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