満蒙開拓団          NHKスペシャル     8月11日放映

日中戦争の謀略性、侵略性を現存歴史史料から明らかにしていくNHKドキュメント。NHKの努力によって、また現代史の暗部がひとつ明確にされた。満蒙開拓団は、どのように企画、立案されたのか、NHKはこれを克明に追求していく。

 

張作霖爆殺事件は関東軍の謀略であった。しかし首謀者として訴追されたのは河本大佐一人だけであった。しかしその影に、もうひとり現場工作者がいた。男は彼の日記に事件の推移を克明に記録していた。男の名は関東軍所属東宮鉄男。群馬県前橋豪農出身の彼の実家には、今も当時の極秘資料が戦後焼却処理されずに密かに保存されている。

関東軍は満州国独立、溥儀擁立によって、中国東北部侵略事実を国際的に認めさせようと奔走しているが、その真のねらいは中国東北部の土地・資源の略奪であった。関東軍東宮鉄男は、東京帝大農学部出身の加藤完治と組んで、満蒙の地に日本人を大量入植させる政策を立案、国策とすべく上申した。しかし、一部の移民専門家から、その無謀な国策を危惧する意見が出たが、東宮鉄男は、「国賊め」と一括し、開拓団計画を強引に推進させた。「王道楽土」「五族協和」国策たうたい文句などデタラメで、関東軍は中国人耕作地を略奪し、敗戦までの数年間に27万人の日本人を満蒙に入植させた。

 

入植者の開拓目的は、開墾と同時に銃を持って、ソ連軍と対峙させることにあった。しかし、第2次世界大戦の戦況は、ファッシズム側枢軸国の敗北となり、ソ連は日ソ中立協定を破棄して中国侵入を迫った。敗戦間際、関東軍は、満蒙開拓団を現地に残したまま戦線を南部に後退させた。侵入するソ連軍の前に、満蒙開拓団農民はどうすることも出来ず悲劇の大混乱の中 8万人の開拓民生命を失うこととなる。

 

しかし、東宮鉄男自身は、この惨状を見る前に、昭和12年中国戦線で戦死した。今も残されているその盛大な葬儀には「開拓の父」と謳われた東宮鉄男の死をいたみ、会葬供花者の名前の中は、東条英機、石井四郎等と並んで、時の満州国産業部 岸信介の名前がある。戦後戦争犯罪人とされ、釈放後は内閣総理大臣となり日米安保改訂の先頭に立った岸信介こそ、今や次の首相候補として脚光を浴びている安倍官房長官の祖父に当たる男である。このドキュメントを作り上げたNHK制作メンバーの素晴らしい勇気に心より拍手を贈りたい。

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