多田武彦先生からYARO会へビッグプレゼント

 

2005年6月10

 

   

 

多田武彦先生と男声合唱プロジェクトYARO会とのつながりは、2003年11月に開催した第1回YARO会ジョイントコンサートの合同演奏曲として『富士山』を歌ったのがきっかけで始まりました。

YARO会の演奏を聴かれた多田先生は、その年全国で10回以上演奏された『富士山』の中でも確実に三本指に入ると仰ってくださいました。YARO会の声はハーモニー向きである、表現力もあるなど、身に余る評価をいただきましたが、細部の課題もいくつかご指摘がありました。そして、さらに磨けばもっと素晴らしい団になると、YARO会に対していろいろなアドヴァイスをしていただきました。

そのようなお付き合いの中から、「多田武彦合唱講習会」の企画が持ち上がりました。YARO会にとっては願ってもないことでしたが、諸般の事情から企画はなかなか具体化せず、当初の予定よりだいぶ遅れてしまいました。紆余曲折を経てようやく開催に漕ぎつけたのが一年以上過ぎた2005年2月でした。

講習会には、北は北海道から南は九州まで、白髪豊かなコーラスメンからフレッシュな高校生まで、全国から熱心な男声合唱ファンが集まり、多田先生の薫陶をじかに受けるという素晴らしいひとときが実現しました。多田先生は、受講生の熱心さ、レベルの高さ、そして運営面など多くの点に感銘を受けられ、我われスタッフに対しても過分なお褒めの言葉をいただきました。

 

その後、多田先生より夢のようなお話がありました。それは、コンサートのアンコールにでも歌えるような男声合唱曲をYARO会にプレゼントしていただけるというのです。やはり埼玉県に因んだ曲、それも昔からある地元の民謡がよいだろうという構想のようでした。そして5月末に届いた楽譜が男声四部合唱曲『秩父音頭』でした。A4より一回り大きながっしりした楽譜用紙に鉛筆で丁寧に書かれた自筆譜です。何箇所か消しゴムで手直しされた痕跡も見られます。自筆譜のまま印刷製本する予定にしていますので、ご希望の方におわけできるようになると思います。
 

『秩父音頭』は、埼玉県秩父地方に古くから伝わる民謡で、昭和5年、明治神宮遷座10周年祭に秩父豊年踊りとして奉納されました。その後『秩父音頭』と名を変え、以来埼玉の代表的民謡として広く親しまれ、県内いたるところの学校の運動会で全員で踊ることもあります。何年か前に秩父で開かれた「関東おとうさんコーラス大会」のステージで踊りの指南がありました。ご記憶の方もおられると思います。

多田先生は多くの民謡の編曲をされていますが、基本的な考え方は原曲を大切にしたいということです。『秩父音頭』は、どちらかといえば素朴で地方色を感じさせる曲ですが、その雰囲気をそこなわないように編曲されていると思います。また、多田先生特有のハーモニーや和音進行が随所に顔を出してきます。原曲を生かしながら、新しい男声合唱曲としても歌い甲斐のある曲に仕上がっています。この曲のもうひとつの特徴は、途中に「語り」が挿入されていることでしょうか。楽譜ではオタマジャクシの頭の代わりに×で表されています。そこをどう歌うかで表情が変わってくるかも知れません。

歌詞はつぎのような七七七五調です。カッコ内が語りですが、ここは七五七五調となっています。

 

 

『秩父音頭』          埼玉県民謡

1 秩父お山に 春風吹けば

(とろ)の流れに 花吹雪

(三峰お山の 夜は明けて

 秩父繁昌の陽は昇る)

 

2 咲くは山吹 つつじの花よ

秩父銘仙 機(はた)どころ

(とんとんからから 筬(おさ)の音

   とんとんくるりと 糸車)

 

3 鳥も渡るか あの山越えて

雲のさわ立つ 奥秩父

 

YARO会では、いずれふさわしいステージで初演したいと考えています。ご期待ください。

藤 良 一