金賞を発表します

 

加 藤 良 一


 

 埼玉ヴォーカル・アンサンブル・コンテスト (SVEC) が、1 28 30 日の 日間連続で開催された。これは、略してアンコンと呼んでいるが、全日本合唱コンクールなどとちがって、埼玉県の枠のなかだけで優劣を競うローカルなものである。プチコンクール的な位置づけだろうか。いまのところ埼玉県合唱連盟に未加盟でも参加できるので、東京など関東一円から参加してくるフリーのコンテストである。

 「では、発表いたします。金賞は……」
 笠井利昭・合唱連盟事務局長の声が、一瞬の間をおいて金賞受賞団体名を読みあげた。大きな歓声とともに割れんばかりの拍手が会場に溢れた。つぎつぎと発表されてゆくなかに自分の団の名前を期待する人は、身を乗り出して待ち構えている。そうかと思えば、頭から選外とあきらめている人は、文字どおり人ごとである。とにかく、コンテストの結果発表というものは、待つ身にとっては期待とあきらめのはざ間を行ったり来たりする緊張の一瞬である。入賞して跳び上がって喜ぶもの、選にもれて肩を落とすもの。悲喜こもごもの表情がそこにはある。
 “アンサンブル・コンテスト”と銘打っているのは、6 人以上 20 人以下で、しかもア・カペラのみという制限をつけているからである。比較的小さくて響きのよいホールを使用して、かっちりしたアンサンブルを歌おうという趣旨である。今回の会場、彩の国さいたま芸術劇場大ホールはいわゆる矩形のシューボックス型で、少人数でもいろいろな表現が可能なとてもよく響くホールである。

 人数制限があるから数十人規模の大きな団では、選抜メンバーを組んだり、組分けしたりして出場してくる。たとえば、埼玉県立浦和高校グリークラブは、「行行子 (よしきり)、「夕映」、「山麓 団体に分かれて出演した。このネーミングは多田武彦作曲の 富士山 を歌うところに由来している。「行行子」 は金賞、「山麓」 が銀賞、「夕映」 が銅賞にそれぞれ入賞した。
 ほかにもいろいろ工夫された団名があって面白い。いくつか拾ってみると、「名前のない合唱団 白組」、「同 紅組」、「秩父微男子」、「」、「県立川越高校音楽部 鬣(たてがみ)」、「県立秩父高校 青春 17」、「同 いとゆかいなるなかまたち」、「県立浦和第一女子高校音楽部 peppy perky」、「星野高校音楽部 浮舟」、「同 歌凛」、「同 雪華」、「同 よっちりぼ」、「県立春日部女子高校音楽部 未成年 など、アンコン用につけたニックネームだろうが、合唱を120%楽しんでいる姿が目に浮かぶようだ。

 今回の参加団体は、中学 51、高校 62、一般 44、ジュニア他 18 の計 175 団体であった。このうち男声合唱団は、中学 6、高校 6、一般 14、計 26 団体と全体の 15 %を占めた。また 26 団体のなかで多田武彦作品を演奏したのは、中学 1、高校 4、一般 の計 団体、男声合唱団のなかの 35 %に相当した。
 参加団体は年々増え、連盟ではうれしい悲鳴をあげている。このままでは規模が大きくなりすぎて運営も厳しくなってしまうからそろそろ限界だろうか、新祖章・副理事長が閉会の挨拶でも触れていたが、いずれ参加条件の見直しをしなければならないだろう。

宮寺勇・埼玉県合唱連盟理事長より金賞を受け取る
あんさんぶる 「ポパイ」
団長・伊藤博行氏


 さて、男声合唱プロジェクトYARO会の関係者の成果はどうだったかというと、あんさんぶる 「ポパイ」 が多田武彦作曲<尾崎喜八の詩から>「T冬野」 を歌って金賞、メンネルA.E.C.がC.クロイツェル作曲 Schaefer's Sonntagslied と新実徳英作曲<壁きえた>より 北極星の子守歌 で銅賞、ドン・キホーテはRandall Thompsonの Alleluia で優良賞となった。コール・グランツイル・カンパニーレは今回エントリーしなかったが、そのメンバーの一部はほかの団で出演していた。
 筆者もその一人で、コール・フライタークというアンコン用に組んだ男声合唱団で、多田武彦作曲の<雪明りの路>から 「春を待つ」 と 「梅ちゃん」 を歌い、なんとか銀賞に食い込んだ。この団は埼玉第九合唱団の有志が昨年の10月頃に集まり、かぎられた練習時間のなかで、なんとか本番に漕ぎ着けるという綱渡りの結果である。

  (2005年 2月1日)