第4回全日本男声合唱フェスティバルin京都

〜狐六法踏みゆかむ!
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加 藤 良 一
2015年8月22日 |
男声合唱団Vive la
Compagnieヴィヴ・ラ・コンパニーは昨年の岡山大会に引き続き2回目の参加となりました。指揮者はおなじみとなった埼玉県合唱連盟理事・南めぐみさん、団長は宇佐美平和さん(男声合唱団イル・カンパニーレ)にお願いしました。
今回の大会は、それまで晩秋から冬に開かれていたのが夏へと移り、京都祇園祭りが始まろうとする7月4日から5日にかけ京都コンサートホールでの開催となりました。
◆参加団体
北海道1、福島1、埼玉1、東京1、京都4、大阪3、愛知1、滋賀1、兵庫3、岡山2、島根1、石川1、広島1、山口1、福岡1、長崎1合わせて16地域から24団体、それに個人の参加も多数ありました。全日本合唱連盟には北海道から九州まで9支部ありますが、今回は残念ながら四国支部からの参加はありませんでした。
演奏順
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都道府県
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出演団体名
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1
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大阪府
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男声合唱団 「DOYA」
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2
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福岡県
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九州フレッシュメンコア
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3
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福島県
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いわきメンネルコール
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4
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大阪府
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大阪メールクワィアー
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5
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岡山県
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コール・ロチェアーノ
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6
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兵庫県
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関西学院グリークラブ
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7
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北海道
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北海道男声合唱団
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8
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岡山県
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男声合唱団メンネルコール ” I ”
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9
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島根県
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男声合唱団FREIE KUNST
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10
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埼玉県
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男声合唱団Vive La Compagnie
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11
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石川県
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金沢メンネルコール
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12
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京都府
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合唱団京都エコー
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13
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兵庫県
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男声合唱団 銀河
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14
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京都府
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同志社グリークラブ
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15
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兵庫県
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男声合唱団コール・セコインデ
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16
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広島県
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広島大学グリークラブOB合唱団コール・スローンチェ
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17
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長崎県
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長崎アカデミー男声合唱団
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18
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愛知県
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名古屋ジョイント合唱団
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19
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大阪府
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猪名川グリークラブ
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20
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滋賀県
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滋賀男声合唱団
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21
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東京都
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男声合唱団 音空
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22
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京都府
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立命館大学メンネルコールOB合唱団
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23
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山口県
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男声合唱団メールソレイネ
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24
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京都府
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京都男声合唱団
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合同合唱は、広瀬康夫講座 「スピリチュアルなど外国曲」 と浅井敬壹講座 「多田武彦作品集」 の二教室に分かれ、それぞれ下記の曲を演奏しました。
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広瀬康夫講座:
Soon Ah Will be Done
Ride The Chariot
No More Sorrow
When I Lift Up My Head
Were You There?
浅井敬壹講座:
「富士山」 から 作品第壹
「中勘助の詩から」 から 絵日傘
「柳河風俗詩」 から かきつばた
「雨」 から 雨
「富士山」 から 作品第貮拾壹
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ヴィヴ・ラ・コンパニーは、タダタケ作品の浅井講座に参加しました。個人的には広瀬講座のスピリチュアルをやりたいとも考えたのですが、事前に練習することもできないので、安全のためにすぐにでも歌えるタダタケ作品を選びました。浅井講座への参加は19団体、広瀬講座は11団体でした。団によっては、各自好きな講座に分かれて参加したところもありましたので、合計数は出演団体数よりも多くなっています。
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聞くところによると、広瀬氏は今回の大会でできればバーバーショップハーモニーをやりたかったらしいのですが、練習時間やその他の事情から無理とみたのでしょうか、スピリチュアルの選択となりました。
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合同合唱「雨」のソリスト・オーディションに挑戦する宇佐美団長(右から二人目)

浅井講座「多田武彦集」はステージに乗り切らず、後ろの客席(ボディウム)も使用
(ボディウムから撮影)
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大会スケジュールは、7月4日(土)の昼から “合同合唱” の練習とその成果の “聴き合わせ”、夜は大会の目玉であり、これなくしては成り立たないといわれる<交流会>、翌5日(日)は朝10時から開演、各団の演奏と合同合唱の発表があり、夕方5時に終演という忙しい中にもお楽しみ満載のプログラムでした。
交流会は、演奏会場である京都コンサートホールのホワイエで行われました。なんといっても一番の楽しみはふだんはなかなか会うことができない全国の合唱仲間と旧交を温められることや、facebookで旧知の仲ではあるもののまだ見ぬ友人とリアルに会えることです。その仲を取りもつのはやはりお酒と歌です。
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ベース系パート
ヴィヴ・ラ・コンパニーの出番は10番目、北原白秋作詩、多田武彦作曲<柳河風俗詩>から 「T柳河」 「W梅雨の晴れ間」
を演奏しました。ところがなんの手ちがいか、プログラムにはこの2曲に加えて 「U紺屋のおろく」 も書かれていたのです。そして影アナもそれを演奏曲として紹介してしまいました…。聴衆は当然3曲が演奏されると思っていたはずのところへ、TとWを歌ってさっさと退場してしまったのですから、さぞかし唖然としたことでしょう…(-_-;)
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【ヴィヴ・ラ・コンパニー出演メンバー】
・指揮: 南めぐみ(埼玉県合唱連盟理事)
・トップテナー: 宇佐美平和(イ) 国田武邦(メ) 鳥海勝利(イ) 星野英明(グ)
・セカンドテナー: 正木一弘(イ) 加藤良一(グ) 横山 努(イ) 平野桂介(イ)
・バリトン: 伊藤博行(ポ) 伊藤孝雄(イ) 石川 正(グ) 斉藤繁郎(イ)
・ベース: 中村壽宏(メ) 百崎直也(メ) 新島聰幸(メ) 木下 晃(メ) 武藤 勝(イ)
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イ:男声合唱団イル・カンパニーレ、メ:男声合唱団メンネルA.E.C.、グ:男声合唱団コール・グランツ、ポ:男声あんさんぶる「ポパイ」 |
ヴィヴ・ラ・コンパニーの事前練習は、やや用心して5回設定しました。しかしながら案の定全員が揃うことはほとんどなく、思うように練習が進まない悩みはいつものことでした。
指揮者の南めぐみさんは詩を大切にします。とくに男声合唱の詩には古い言葉が多く出てきます。北原白秋の<柳河風俗詩>は古いだけでなく、たとえば、「W梅雨の晴れ間」 に出てくる
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まはせ、まはせ、水ぐるま、
はやも午から忠信が紅隈とったしゃっ面に足どりかろく、手もかろく、
狐六法踏みゆかむ花道の下、水ぐるま…
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とは何のことか、これは歌舞伎などの芸能やその土地の歴史などに通じていないと簡単にはわからないものです。意外と詩の意味を十分に理解しないまま音だけで歌ってしまうことがありませんか。なんとなく全体としてわかった気になって雰囲気で歌ってしまうことがないとはいえません。
南めぐみさんは初めての曲に取り組むとき、まずは歌詩の意味を把握しないことには前へ進まないのです。このこと自体は当たり前のことですが、難解な言葉が出てきたときにネット情報はたいへん便利です。みなそれぞれに調べて意見を出し合い、理解を深めることで音楽表現がより適切な方向へと向かっていきます。

たまたま今回のメンバーの中に現役の噺家・談らく師匠がいます。彼はその方面に強いので身振り手振りで解説してくれました。前述の歌詩の一節は、北原白秋が故郷福岡県柳川の水郷に毎年やってくる田舎芝居の旅役者の様子を生き生きと描写したものです。そこで催された芝居が歌舞伎の 「義経千本桜」 です。
詳細は省きますが、義経の家臣佐藤忠信に化けた狐が静御前を助けた礼に、義経が朝廷から授かった鼓 「初音」(これが実は狐自身の皮で作られていた)を与えたところ、狐忠信は喜んで大空へと飛び去ったという物語です。この最後の場面で六法を踏みながら退場するとき、狐ですから大見得を切るのではなく狐らしい仕草で去るのです。それを談らく師匠が見本を示してくれたので一同感心してしまいました。と、いうわけで今回はいつになく詩を読み込んで本番に臨みましたが、果たしてその成果やいかに…。
次回、第5回大会は龍馬とよさこいでお馴染み、土佐の高知で行われます。2016年7月9日(土)〜10日(日)、高知市文化プラザかるぽーと、講師は、高嶋昌二、広瀬康夫、山脇卓也の三氏です。
雨量も酒量も多い高知だそうです。梅雨の晴れ間に男声合唱でまた盛り上がりましょう。
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