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木下牧子<もうひとつの世界>
加 藤 良 一
2014年11月24日
ピアノ4重奏のための 『もうひとつの世界』 およびアルト・サクソフォンとピアノのための 『夜は千の目を持つ』 は2011年発表、マリンバとピアノのための 『時のかけら』 は今回のCDが初演、女声アンサンブルとギターのための 『ソルシコス的夜』 は2013年に初演、カワイからオンデマンド出版されています。
ところで、現代における<現代音楽>の意味するところは、必ずしも時代区分だけでなく 「前衛的」 な形式を指すという見方があると思います。一般に<現代音楽>は、おおむね難解で、調性もないものが多いようですが、そうは言いながらもピンからキリまであるのですから、ひと括りにはできそうもありません。
そんな中で木下さんは、「奇を衒わず個性的に美しく」 という視点から実に美しい魅力的な音楽を紡ぎだしています。まさに木下牧子の世界です。将来<21世紀の音楽>と括るほどのジャンルになるかどうかわかりませんが、木下さんの作品には、すでに前世紀の音楽ジャンルとなった<現代音楽>とはどこかしらちがう美学が存在しており、むしろ<現代の音楽>として≪21世紀の音楽≫と呼ぶほうが自然な気がします。
だいぶ前のことになりますが、現代音楽作曲家の作品を集めたコンサートのプレトークでのこと、木下さんがステージ上の対談で発したひと言が印象に残っています。いわく 「夜中に、<現代音楽>といわれるものを聴いていると発狂しそうになる!」
そうなんでしょうね、「奇を衒わず個性的に美しく」 が彼女の信条なのです。文字どおり木下牧子さんの<もうひとつの世界>がここにあると思います。
木下さんは、これからはまた原点に戻ってピアノ曲を中心に作曲してみようと考えているようです。どんな作品が出てくるのでしょうか。
関連情報<音楽/合唱 欄>
M-82 <現代音楽>と<現代の音楽> 木下牧子作品展3〔室内楽の夜〕