M-110





もうひとつの 「富士山」


加 藤 良 一





 男声合唱として現在広く知られている名曲 「富士山」 は、多田武彦氏の作曲によるものですが、この詩にはほかにも多くの作曲家がいろいろな形態で作曲しています。それだけ草野心平の詩が魅力的であることはまちがいありませんし、日本人にとって富士山は忘れることのできない存在でもあるという証左なのかもしれません。

 草野心平の<富士山>には下に示したような作曲家が作曲しています。(もっともこれですべてとは言えないかもしれません。また誤りがありましたらご指摘頂けると幸いです。)

 

  入野義朗 内田 俊 内田 優 杵屋正邦 清水 脩 柴田南雄 多田武彦 田中 均
作品第貳(1)         
作品第貳(2)               
作品第參(3)               
作品第肆(4)         
作品第伍(5)        
作品第陸(6)            
作品第捌(8)            
作品第拾(10)              
作品第拾肆(14)              
作品第拾陸(16)            
作品第拾捌(18)        
作品第貳拾壱(21)              
作品第貳拾參(23)              



 最も多く作曲されているのが、(1)、(4)、(5)(18)でそれぞれ4人の作曲家が手掛けています。
 
草野心平は、富士山を題材とした詩を1940年(昭和15年)から順次発表しました。1943年(昭和18年)には17篇をまとめて詩集 『富士山』 として刊行しています。その後も、富士山にまつわる詩を発表し続け、1973年(昭和48年)には、26篇からなる連作詩集 『富士山』 としました。このときに「作品第壱」(1)から「作品第弐拾陸」(26)まで番号を付けて整理しました。
 『富士山』の冒頭には<日本の未来におくる>と認められており、草野心平の富士山に対する並々ならぬ思い入れが感じられます。草野心平は、蛙と同じく、生涯にわたって富士山の魅力を追求し続けました。






 だいぶ前のことになりますが、古書店で見慣れない富士山」 の楽譜を見つけ、即座に買い求めてしまいました。それは、内田 俊氏という聞き慣れない作曲家の手になる混声版でした。下に示したように、作品第壹(一)から第伍(五)までを連続して作曲しています。

     富 士 山 (混声合唱)   内田 俊 作曲  (1967年第1刷)

1.作品第壹(一)
 麓には桃や櫻や杏咲き。…

2.作品第貳(二)
 皆目。雪の灰色の。…

3.作品第參(三)
 劫初からの。何億のひるや黒い夜。…

4.作品第肆(四)
 川面に春の光はまぶしく溢れ。…

5.作品第伍(五)
 火の山の。ほむらはあかく雪に映え。…


 




 



 音楽・合唱コーナーTOPへ       HOME PAGEへ