<コンサート・レヴュー>

バーバーショップを広める関学グリー

第72回 関西学院グリークラブリサイタル

2004年1月25日( 日)
五反田ゆうぽうと簡易保険ホール


 
 関学グリーといえば男声合唱曲の代名詞「 Boj」(ウ・ボイ)の本家本元として名高い日本最古の男声合唱団。毎年定期演奏会を東京と大阪の2回行っている。72回目の東京公演 は“五反田ゆうぽうと”で行われた。

ステージは四部で構成されていた。
 最初のステージ「現代ラテン語曲のしらべ」では、1997年以降に作曲された比較的新しいヨーロッパの曲が演奏された。つづく第2ステージは 「Barbershop Showtime ! 」。バーバーショップは昨年から取り入れているが、大学グリークラブとしては先駆的な活動である。指揮者の広瀬康夫氏ご自身“Four Roses”のメンバーとしても歌うバーバーショッパーである。広瀬氏がMC(進行役:Master of ceremony)として曲の紹介をしながらステージを進めた。
 休憩 のあとの第3ステージは、学生指揮者・伊藤晋平氏が振る荻久保和明作曲・男声合唱組曲「季節へのまなざし」、そして最後の第4ステージは現役学生、OB新月会、高等部学生 との合同演奏による多田武彦作曲の「わがふるき日のうた」を北村協一氏の指揮で演奏した。

 今回のリサイタルでは、バーバーショップをどのように演奏してくれるのか、昨年とどう変わったのかなどに興味をもって聴いた。バーバーショップは「Barbershop Showtime ! 」と銘打っているようにまさに“ショー”と呼ぶのがふさわしい。ショーマンシップのないバーバーショップなどありえないからだ。この点がとくに日本人にはむずかしいのであるが…。
 プログラムによれば、今年は、昨年の「バーバーショップのご紹介、解説」からもう一歩進めて、サイモンとガーファンクル、ビートルズ、ビリー・ジョエル、バーンスタインの「ウェストサイド・ストーリー」などをバーバーショップスタイルで歌うことにチャレンジしたとのこと。
 ステージは「スカボロー・フェア」で幕を開けた。ステージの照明が落とされ、歌い手のいないところに指揮者があらわれ、そこへスポットライトがあてられた。一人二人と左右から団員が歌いながら出てくるという趣向。 ショーを盛り上げるのに照明は欠かせない。スポットライトなどを駆使し、背景の照明もいろいろと変化させていた。ステージ背景に照明をつける関係でうしろの反響板 が取り払われていたが、これはかなり冒険である。そのせいかどうかわからないがバーバーショップに不可欠のベースの響きが足りなかった。

関学グリーの強みは、OBや高等部なども巻き込んでリサイタルを開催できることだろうか。OBもおそらく大半が合唱の現役ではなかろうかと思われるほどよく歌っていた。合同演奏の「わがふるき日のうた」はなかなか聴きごたえがあった。この曲を昨年歌った“あんさんぶる「ポパイ」”の関根さんは、はからずも胸に込み上げるものがあり涙を流したという。

  アンコールの1曲目は、多田武彦の「雨後」、2曲目は初めて耳にする曲が演奏された。一緒にいた仲間の誰も聴いたことがないという。終了後、出口で学生に聞いたところ、多田武彦の「爽やかな別れの日に」とわかった。それは関学グリーの委嘱による曲とのことだった。そしてアンコール最後はお待ちかね「 Boj」(ウ・ボイ)である。これなくしては終らない、というよりこれを歌わないと聴衆が許さないといったほうがよいだろう。最後まで楽しいリサイタルであった。

さて、演奏を楽しんだあとは品評会である。場所は、会場すぐ近くを流れる目黒川に面した飲み屋。オルフェイ・ドレンガー大好き人間、現在合唱浪人中で日本バーバーショップ ・カルテット協会の菅野さん、 男声あんさんぶるポパイの面々、メンネルA...の須田さん、コール・グランツの島野さんなどとリサイタルの感想に花を咲かせた。全員の意見が一致したのは、北村協一氏の指揮の素晴らしさだった。

 ところで、関学グリーのリサイタルは東西連続2回の公演で曲順を変えているが、これはどんな意味が込められているのだろうかと、気になるところである。東京では前に述べたとおりであるが、大阪公演では、「現代ラテン語曲のしらべ」(現役)→「わがふるき日のうた」(現役OB合同)→休憩→「Barbershop Showtime ! 」(現役)→「季節へのまなざし」(現役)と順番が入れ替わっていた。
 


左より須田さん、菅野さん、筆者。菅野さんは須田さんの大学グリー時代の先輩にあたる。

また、関学グリーとは関係ないが、菅野さんがスウェーデンのウプサラで行われたオルフェイ・ドレンガー創立150周年記念祝典に燕尾服を着て参加したときの話しを聞かせてもらった。最新の「ハーモニー・127・冬号」(全日本合唱連盟発行)に菅野さんがレポートを投稿しているので、ぜひご一読あれ。

 

加 藤 良 一  (2004年2月1日)