K-9-2


語学あれこれ

加 藤 良 一




 語学雑誌「基礎ドイツ語」が2004年3月号で休刊となった。以前は月刊誌だったと記憶しているが、いまは隔月刊である。
 昭和6年(1931)創刊という歴史のある雑誌だ。昭和6年といえば、柳条湖で起きた満鉄爆破事件から満州事変が勃発した年である。軍部が台頭しのちに国際連盟脱退へと続く騒然とした時代であり、ドイツとのつながりが強化されようとしていた世相を反映して発刊されたのであろうか。この年、海外ではスペイン革命が起きている。
 医薬学分野において、そのむかしはドイツ語が主流であったがそれも時代の波だろう。いまどきドイツ語を使うことはない。ところで「休刊」とはどんな状態をいうのであろうか。合唱団で団員が辞めた場合、また戻ってきてほしいという願いを込めて休団扱いとするケースがたまにあるが、出版界での「休刊」もこのように未練が残るものにちがいない。 またいつか出版される日が来ることを祈る。

 ドイツ語が消えてゆく中で、いまはハングルが元気がよい。ハングルという言い方は適切ではないが、朝鮮語とするか韓国語とするかで迷うから、つい半端だがハングルといってしまう。ハングルについては別のところで書いてあるので、ここではこれ以上触れない。

 韓国に人気が出ているのは、紛れもなく 「冬のソナタ」 というドラマのお陰であるにちがいない。背が高く、甘いマスクの主人公に対する日本人女性の反応はなかなかのものがある。しかし、どうみてもこの現象は、私にはミーハー的に 映ってしかたがない。騒ぐほど面白いドラマとは思えないからだ。そこで、やっかみ半分にこれをミーバー的と称している。ミーちゃんちゃんが、追っかけ回しているからだ。
 ミーバー的と揶揄するほんとうの理由は、ドラマで展開されている韓国の文化や社会背景の基本的なことも知らずに、ただ恋愛物語として観ているだけだからである。たとえば、婚約者とホテルに泊まることをなぜ非難されるのか、現在の日本ではほとんど気にも留めないような事がらがなぜ問題視されるのか、その理由も知らずに 「なんか変ね?!」 といって画面を眺めている。韓国には、姦通罪なるものが存在し妻の不貞は犯罪になるそうだが、真偽のほどは確かではない。
 また、韓国社会の親や年長者に対する絶対服従は驚くほどである。親の言いなりになる男などわれわれの眼にはマザコンのごとく映ってしまう が、これはひとえに礼儀や道徳を重んじる儒教精神の現われなのである。しかし、韓国の国民すべてが儒教徒なのではない。むしろほとんどは仏教徒で、ほんの一割ほどが儒教徒のようだ。あくまで社会規範として儒教精神が徹底していると捉えるべきであろう。そのような目で 「冬のソナタ」 を観ればだいぶ見方が変るはずだし、ストーリーもすんなり飲み込める。

(2004年5月5日)






   
 ことばコーナーTopへ Home Pageへ