「ラ行」はもともとの大和ことばにはなく、外来語からの発音であると読んだことがあります。
 「ラ行」の発音には[そり舌音の
r][英語のような l][弾き音の r]の三通りがありますが、[そり舌音の r]と[英語のような i]は中国語にもあり、[弾き音 r]は韓国語にもあります。漢語の発音が中国からそのまま日本に入ってきたか、韓国経由で入ってきたかの違いにあるのではと推測されます。そして、舌が上顎のどこにも付かない「ら行」の発音は子供っぽい発音、舌足らずの発音だと考えます。


 「ナ行」のうち「に」の発音は硬口蓋鼻音でも良いとのことを知りました。この硬口蓋鼻音は歯茎鼻音[ni]と違って私の耳にはふにゃっとした発音に聞えるのです。そして、硬口蓋鼻音はイタリア語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語にもあります。男声合唱プロジェクトYARO会の有志による合唱団 Vive la Compagnie (フランス語)の"-gni" の発音が硬口蓋鼻音です。幕末期に来日したフランス人宣教師ムニク神父(Pierre Mounicou)はフランス式ローマ字の「に」をほとんど「gni」と表記していましたが、もう一人のフランス人宣教師メルメ神父(Eugene Emmanuel Mermet-Cashon)はこの「に」を「ni」としていたとのことです。

(註:フランス式ローマ字綴りについては、Le Roux Brendan 「幕末期に来日した二人の仏人宣教師の日本語ローマ字表記について」を参考にしました)

 「ざ行」の「ざ、ず、ぜ、ぞ」の発音は、それぞれ語頭では[dza,dzu,dze,dzo]と発音するのだそうです。私はそれを[za,zu,ze,zo]と発音したいのですが、その理由は「だ行」の「づ」と「ざ行」の「ず」の区別がなくなるからです。葛は「くず」[kuzu]と発音し、屑は「くづ」[kudzu]と発音したいものです。
 実はイタリア語の合唱曲、ルカ・マレンツィオ(
Luca Marenzio)作曲 Zefiro torna (西風戻り:西風が吹いて春が戻ってくる)を私が所属する合唱団で歌ったことがあります。イタリア語 zefirodzefiro]の発音を私はカタカナ書きで「ゼフィロ」と記しましたが、語頭の「ゼ」なのに私の所属する合唱団では[dzefiro]とは聞えず[zefiro]と聞えました。



 日本語の発音は地域差、個人差が多々あるのでしょうね。私自身の日本語は多分、共通日本語の発音とは微妙に違うと思います。そんなこともあって、ただ今、日本語を勉強中なのです。







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日本語の発音一考

佐 古 眞 理   2011年7月26日