加藤さんの『私が Lio-ichi と書くわけK-28を拝読いたしました。

 私はもともと「ラ行」を弾き音で発音いたします。武満徹の「死んだ男の残したものは」を歌った際に「ラ行」を巻き舌で歌ったのです。そう、弾き音を沢山発音していました。すると、指揮者に[l]で発音してと言われてしまいました。そこで、私は詩人の谷川俊太郎氏は関東人なので[l]の発音なのだと理解しました。関東は[l]に近く、関西は[r](弾き音・巻き舌)に近いのではと思っております。そして、[l]とも[r]とも判別できない曖昧な「ラ行」もあるのです。

 日本語をローマ字で表わした時、戦国および安土・桃山時代にはポルトガル人やスペイン人は「ラ行」を[r]として表わし、明治時代にヘボン氏も[r]と表記しました。と言うことは明治時代以降に関東のラ行の発音が[l]に変わって行ったのではとも考えております。

 作曲家の木下牧子さんは東京都出身ですので[l]で表わすのが素直かと考えました。信長貴富氏の発音ですが、どの地方のものか私には分からないのです。私には出身地が分からないのです。

 さて、英語圏の人でも外国語の発音をできない人、いらっしゃいます。ロバート・ケネディ氏は日本語を発音するのが苦手だったそうです。氏の奥様は発音が上手だったと聞いております。英語圏の人で「つとむ」の「つ」の発音[tsu]が出来ないということがあります。反対に日本人には[tu]の発音がし難い人がおりますね。母語がどの言語かによって発音し易い子音、母音があるようです。最後に英語版 Wiktionary には ryo ryori などの日本語の項目もありましたことをお伝えいたします。

 実は私にとってやっと分かったことがあります。日本人がカタカナで「ライス」と発音すると英語圏の人に lice と理解されると言うことを。私は日本語「ラ」を弾き音で発音します。この弾き音を英語圏の人は[l]として認識するのだそうです。インターネットで検索していて、英語の[l]の発音を弾き音で発音すると良いと説明しているアメリカ人の文章に出くわしました。だから、カタカナで「ライス」と発音すると lice と認識されるのだと言うこと40年以上たってやっと分かりました。加藤良一様のお蔭だと思っております。

 そして即、アメリカ人は日本人よりスペイン語の発音が下手なのだということを思い出しました。スペイン語 pero の[r]は弾き音で良いのです。pelo とは発音が違います。結構、英語の[r]と[l]で発音しているように私には聞えます。なお、大雑把ですが、スペイン語の pero は「しかし」と言う意味で pelo は「毛」言う意味です。

 さて、アメリカ人ヘボン先生はラテン語、ギリシア語、中国語にも長けていたとのことですので日本語の「ラ行」を[r]で聞き取れたのではないかと推測しております。



参考)ヘボン式ローマ字は、ジェームス・カーティス・ヘボン James Curtis Hepburn(米国ペンシルベニア州出身が創始したもの。ヘボン氏は江戸時代に来日。アカデミー賞女優キャサリン・ヘップバーン Katharine Houghton Hepburn はヘボン氏と同じ Hepburn の一族とのこと。









K-29


日本語のローマ字書き一考

佐 古 眞 理   2011年7月21日