311日、大震災が起こった。幸いにして、わが家族は、みな無事であった。あれから4ヶ月が経とうとしている。そろそろ山開き、山小屋開きの季節である。

  立山連峰の西のはずれに位置している大日連山の大日小屋は、尾根づたいにあり劔岳の全容を正面から眺めることができる。わが(と言わせていただく)大日小屋は、地震ではないが何度か雪崩に遭い、つぶれ、その都度再建をしている。

 何十年も前のことだが、春先に埼玉の自宅に電話がかかってきた。山小屋の「ぼーちゃん」と呼んでいる女主人からだ。
 「春山に登った人が、この時期にいつもなら見える場所に、小屋の屋根が見えない、どうも小屋がつぶれているらしい、何人か登るから今度の休みに一緒に見てきてほしい。」
 学生時代に小屋で手伝いをしており、就職しても、その頃は毎年のように山小屋開きに登って何日かの小屋番をしていたこともあって、声がかかったのである。「すわ、鎌倉へ・・・」というわけで、埼玉から夜行日帰りで見に行った。
 小屋はつぶれて、無残な姿。小屋の屋根、柱がようやく融けた雪の間からのぞいていた。隙間から小屋の中を覗いていたが、しばらくして目を上げると、そこにはいつもと変わらぬ劔岳の姿が・・・。何年か前、11月に雪の中をひとりで登ってきて、劔岳を見たことを思い出していた。
 その思いを、歌にしてみた。毎年、小屋に行けば、みなでこの歌をうたっている。今回の震災で家を失った人たちに、元気づいてもらいたいと今年も山に行く。そして歌う。

 
劔はみていた(大日小屋再建の歌)      津田西山


劔はみていた、雪が降るのを   劔はみていた、風が吹くのを
雪崩がおきて、小屋がつぶれた 劔はみていた、風が吹くのを

劔はみていた、雲がわくのを   劔はみていた、花が咲くのを
人がのぼって、小屋が建ったよ 劔はみていた、花が咲くのを

劔はみていた、霧がわくのを   劔はみていた、赤いリュックを
霧がながれて、恋人かくした   劔はみていた、赤いリュックを

人がのぼって、小屋が建ったよ 赤い屋根の小屋が建ったよ

劔はまってる、あなたのパーティ 劔はまってる、君のこどもを
夕陽が落ちて、灯火ともった   劔はまってる、君のこどもを

劔は知ってる、人のおろかさ   劔は知ってる、人の強さを
小屋がつぶれて、小屋が建ったよ 劔は知ってる、人の強さを





  (今年も、山道崩落のため「称名ルート」は通れません。室堂からのピストンを)






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E-86
劔はみていた (大日子屋 再建の歌)

津 田 西 山              2011.6.30