尾道北高校の詳しい情報について

 尾道北高校(以下「北高」)については、「国公立大学合格者が多い」「厳しい指導でしっかり勉強させる」というイメージが 世間一般に定着しているように思えます。このイメージは間違ってはいませんが、表面的でもあります。なぜ国公立大学合格者が 多いのか、厳しい指導とはどんなものか、これも重要です。ここではその疑問に答えるべく、北高の内情をできるだけ 明らかに したいと思います。
 なお、受け取り方によってはネガティブに感じられる内容もあると思いますが、北高の公式発表には表れにくい深層に踏み込む ことがこのページの目的とするところです。

なぜ国公立大学合格者が多いのか

カリキュラム
 北高の生徒の多くは尾道市・三原市の出身ですが、この地域は国公立信仰がいまだに根強く、入学したての生徒の多くは 広島大などの国立大学を志望しています。私立大学や、大都市圏の大学についてはよく知らないというのが実情でしょう。
 この志望状況を根拠にして、北高では国公立入試に特化したカリキュラムが組まれています。3年にもなると、私大志望者が 出てきますが、科目を絞った勉強はできません。課題も、補習も、原則としてフルメニューで受け続けることになります。 第一志望が私大であることを学校側に申し出ても、国公立に志望変更を促されることが珍しくないようです。

出願校の選定
 平成20年には国公立合格率が85%に達しました。これは粒ぞろいの生徒がほぼ全員国公立大を受験するということだけでは 説明し難い数字です。なぜなら受験は一つのチャレンジであり、不合格のリスクがつきもののはずだからです。 ここでは北高の組織力が威力を発揮していました。不合格のリスクを最小化するため、センター試験後の進路会議で受験校選定が 行われます。それまでの第一志望どおりに受験できる生徒は少数派で、場合によっては学部系統を変更してでも国公立大学合格を 実現させた例も珍しくありませんでした。
 さらに、前期が不合格だった場合に備えて、比較的合格しやすい国公立大学を抽出して中期・後期日程で併願させることにより、 確実にいずれかの国公立大学に合格できるよう最大限の努力がなされていました。
 このような理由から、進路会議は生徒の志望校の報告の場ではなく、志望校選定の場だったのです。

最近の動向
 最近、国公立合格率が少し下がってきています(とはいえまだ3分の2ほどもあります)。原因は、高校入試競争率が低く、学力の 不十分な生徒がいるという理由もありますが、文系の私大志向が高まってきて、学校側のコントロールが難しくなっていることが大きいです。 理系でも、過疎地域の大学は人気が下がっていて、後期を受験しない生徒が出始めたことも国公立合格率を下げています。 しかし、これは健全な変化であり、あるべき姿に近づいているのだと思います。
 ところで、平成に入って公立大学は飛躍的に数が増え、また、医学部附属看護学校は4年制大学に組み込まれました。こうして 少子化の進行と逆行して国公立大学の定員は増加し続けており、国公立大学の門戸は広がり、大学名にこだわらなければ国公立大学合格は ずいぶん容易になりました。
 一方の私大受験はどうでしょう。関東の有名私大は人気上昇中で、今では地方旧帝大よりは明治大などの方が難しくなっているほどです。 実は北高生の間でもこうした私大への人気は高まりつつあります。それでも関東地区の私大受験は低調です。北高生の学力からすれば早稲田、 慶応などの難関私大にも10人前後合格しそうな様子なので、少しもったいない気がします。

 今後の動向、特に過疎地国公立、関東有名私大に対する受験傾向の変化に注目したいところです。

「厳しい指導」の中身とは

課題
 「北高は課題が多い」というのは尾道市内ではよく知られています。しかし、それがどのくらいかは十分には知られていません。 保護者が総合選抜世代になっている現在、当時の状態をイメージする保護者が多いのですが、実は当時とは全く違っています。  まず、かつては習熟度別ではなかったので、優秀な生徒は早く課題を終えることもできました。今は優秀な生徒には難度の高い 課題が出ます。学力の低い生徒の課題もかつての課題よりは難しいです。ただし、無理な難度の課題は少ない印象です。
 しかし、もっと違うのは課題の量です。総合選抜末期の3倍以上になっている印象です。保護者の世代(総合選抜初期、中期)と 比べれば、桁違いかもしれません。模試の後には「テスト直し」もあります。間違えた理由、調べた文献も含めて記載し、解き直して 提出しなければなりません。これらの課題にまじめに取り組むがゆえに寝不足になる生徒は珍しくありません。要領のいい生徒は、 課題に解答がある場合は最大限に活用するなど、うまく受け流します。それでも「作業」に時間はかかるので、楽にこなす生徒は 少ないです。(最近、課題の量が以前に比べれば少なめになっている感があります)。
 課題を出さない場合、通称『課題部屋』に招集され、課題をやって提出しなければならなくなります。また、家庭学習は 1,2年生でも180分が必要とされ、「モニターシート」に書いて提出、管理されます(時間は自己申告ですが)。
 ところで、寝不足になるほどの課題をやることが本当に学力を伸ばすのか、自分のやりたい勉強をする時間を確保する余裕が必要では ないか、精神的、肉体的に持つのだろうか、などの疑問を持つ方もいるでしょう。
 教育委員会に見解を伺ったところ、指導方針、内容については、個々の学校に任せ、干渉しない方針のようです。確かに、現在広島県には 学区がなく、どの学校に行くか自由に選択できます。学校の特色を研究して自分に合った高校を選択するのは、生徒、保護者の自己責任と いうことなのかもしれません。
 学校のあり方に疑問を持つならば、他の進学校を選択できる時代です。入学後でも、近隣私立高校に比較的簡単に転学できます。

補習
 補習には次のようなものがあります。
1.夏季・冬季補習
 北高では補習は効果を上げるため全員参加(≒強制)です。ただ、欠席しても通知表上の「欠席」にならない部分もあります。 また、少し前までは「夏期特別スケジュール」として、7月下旬や8月後半は午前中で授業が終わっていましたが、今は平常に近い 授業時間になっています(8月下旬はもう夏休みではありません)。
 3年生の休みは1週間ほどしかありませんが、北高に来る人なら覚悟しているでしょう。1年生もあまり違わないのが近年の状況でした。 しかし、2014年、15年夏季は、連休が長くなり、かなり緩和されています。 正常といえる範囲内に修正されるようになったのかもしれませんが、単に耐震補強工事のため一時的に緩和されているだけかもしれません。。
 もちろん夏休み・冬休み課題は他校よりも多く、連休中は課題処理に追われる生徒が多いようです。補習期間中に頑張って終わらせておく のがメリハリをつけるコツでしょうが、普通の人には難しい分量です。
 北高生になろうとする人は、世間一般の「夏休み」のイメージは捨てたほうがよさそうです。
2.土曜教室
 土曜日は模試で登校する日があるほか、土曜教室が年間20日程度(学年により多少差がある)組まれています。土曜日が休みに なる方が少ないのです。でもこれくらいは当然でしょうか。これも全員参加です。
3.朝学習
 朝は8時10分から「朝学習」が行われます。遅刻しても通知表上の「遅刻」にはなりませんが、その間教室に入れず、廊下に立って いなければならないこともあります。遠方から電車、バスで通学する人は朝学習があることを前提に通学の可能性を検討すべきです。
4.放課後補習
 1,2年のうちは放課後補習は原則ありません。3年の6月の県総体が終わってから始まります。毎日1時間程度です。国公立大学受験で 想定される科目は全員が必修的に受講します。
5.直前期補習
 普通の学校ではセンター試験が終わると高3の授業はありません。しかし、北高では受験する2次試験科目の補習があり、全員参加と なります。卒業式が終わった後も、前期合格か後期試験まで補習は続きます。

学力別講座編成
 学年によって違いますが、3〜5レベルの学力別クラス分けがあります。
 一般的な見方をすれば、自分のレベルに合った学習をすることができる点は合理的です。仮に、一番下の少人数講座に割り当てられることで プライドが傷つく生徒がいるとしても、将来の競争社会で思うようにならない場面は必ず経験するわけで、これくらいでへこんでは いけないという意見もあるでしょう。
 まじめにがんばっても上の講座に上がれないこともあります。しかし、そこであきらめないで自分なりの努力を続けられる生徒は最終的に なんとかなっています。ここではタフな精神力が必要なのです。

テストとアゲイン
 北高には定期試験の他に中小のテストがあります。小テストは、英単語、古文単語、例文、漢字、数学などで毎週行われます。 やや規模の大きいテストとしては、一定の単元について進んだところで行われたり、休暇明けなどに行われるものがあります。
 テストがあるだけなら良いのですが、点数が悪いと「アゲイン」という再テストを受けねばなりません(アゲインのないテストもある)。 「アゲアゲ」という再々テストまで行くこともあります。
 アゲインになると、次のテストの勉強ができなかったり、課題をやる時間が足りなくなったりするので、負のスパイラルに陥ることが あります。また、プライドが傷つく生徒もいるようです。ここでもタフな精神力で乗り越えることが必要です。

「北高生」の生態

学力
 入学してくる北高生の学力は総合選抜時代とは比較にならないくらい高くなっています。一番レベルが高かったのは2004年入学の学年で、 高1ベネッセ模試で平均偏差値が60を優に超えていました(概ね偏差値55以上で国公立大学合格レベルと言われています)。現在はやや 低下傾向にあって、当時よりは2ポイント程度下がっていますが、それでも総合選抜時代よりは6ポイント程度高いです。 イメージ的には、総合選抜時代のまん中の学力の生徒は、今なら下位1/5あたりに位置するのではないでしょうか。
 総合選抜廃止、学区の拡大、撤廃により、尾道市内外から優秀な生徒が集まるようになり、生徒の学力は飛躍的にアップしました。 もっとも、ここ数年は東の誠之館、市立福山、西の県立広島に一部の優秀層が流出するようになりました。勉強が大変だというイメージが 地元で敬遠されている面もありそうです。現在、入学者のうち市内中学出身者は6割ほどになっています。
 ところで、近年の入試競争率は1.0倍前後のことが多く、全入に近い状態です。そのため、学力の低い層が存在します。そのような 傾向が続いてきた中、2013年入試で突然競争率が1.4倍ほどに跳ね上がり、学力の不十分な受験生は不意打ちを食らった形になりました。 合格最低ラインは従来とは比較にならないほど上がったようです。しかし、その後はまた1.0倍強に戻っています。今後の競争率の動向が 気になります。
 合格実績は公式ホームページを見ていただけばわかるように、総合選抜時代とは比べ物になりません。特に難関大学に合格できる生徒が ずいぶん増えました。もっとも、広大附属福山など難関進学校との差は非常に大きいと言わざるを得ません。一方、地元広島大学の合格者数は、 2014年、15年は、31人、22人と多めになっています。今まで、合格可能性を高めるために岡山大学への進学を勧める事例が多かった のですが、最近は志望を重視して変更しないで済むようになっている印象です。

勉強態度・生活姿勢
 ほとんどの生徒が勉強にプライオリティを置いています。「まわりの生徒を見ていると自然と勉強する気になる」環境があると言います。 ただ、多くの生徒の勉強時間は課題の処理に費やされています。
 生徒はこの大量の課題に疑問を持たず、黙々とこなしているのかといえば、そうではありません。しかし、表立って、「役に立たない」 「多すぎる」と学校側と争う生徒はいません。補習もそうです。「出たくない」と思っていてもあえて学校側と争いはしません。 昭和40年代なら、自治会(生徒会)が校長との直接交渉を要求したり、ストライキをしたりしたかもしれませんが、現代の高校生は 表面上はおとなしくしています。
 生徒の気質としては、かつては尾道らしく素直でのんびりしたタイプが多かったのですが、今はよりアグレッシブになっています。 例えば、勉強では結果が出ることを気にする人が多くなりました。競争意識が強くなったのだと思います。男子よりも女子の変化が 顕著です。
 一方で、かつてに比べれば洗練された生徒が増えています。今でも地元公立中学の「ごった煮」の中でたくましく育った生徒はいますが、 国・私立中学や遠方の中学の出身者が増えています。
 服装はきちんとしています。生活指導はきっちりしていて、ミニスカ、露骨なまゆ剃りもありません。大人の目からは好印象です。 「真摯な姿勢」は特筆すべき点でしょう。

クラブ活動
 意外なことに、北高生のクラブ活動は熱心です。毎日、長時間ではないにせよ、一生懸命に練習しています。強いわけではないが 特に弱くはないというクラブが多いようです。勉強との両立は要領よくやれる生徒ならなんとかなるようです。

北高向きの生徒
 これまで述べてきたように、北高は単に進学校であるだけではなく、特色のある学校になっています。特色が強ければ、合う、合わない という問題は必然的に出てきます。今までの経験から、北高に合うタイプの生徒像をピックアップしてみます。
1.学力
 競争率が低いため、公立中学の上位1/3あたりの生徒でも合格できるかもしれません。しかし、そのあたりの学力で入学しても、 ついていけないうえにいつもアゲインを受けることになり、満足な高校生活が送れません。普通の公立中ならば、クラスで5番以内に 入れる学力が最低でも必要です。特に数学や理科の理論分野は暗記という努力だけでは解決しないので、得意である必要があります。
 特に、文系科目は得意なのに数学が極端に苦手なタイプの生徒は、数学の課題やアゲインに追われて得意だった文系科目までできなく なってしまうことがあるので注意が必要です。
2.性格
 ものごとをこつこつとまじめにやる性格は諸刃の剣といえます。順調に進んでいるうちは良いのですが、課題がなかなか片付かないと ストレスがたまり、破綻するおそれがあります。むしろ、上手に手を抜ける要領の良い生徒の方が成功します。
 自分で計画をたてて、メリハリある勉強ができる人はこの学校でも問題なくやれるでしょうが、他校でも十分勉強するでしょうし、 より効率よく伸びていくかもしれません。一方、線路をひいてもらえばいくらでも走る元気あふれる人なら北高は向いています。
 また、物事に動じない性格の方が、北高の厳しさや優秀な生徒に萎縮しないでのびのび勉強できるので向いていると思います。 課題が出ていなくて怒られようが、アゲインを食らおうが全然気にしない生徒なら楽にやっていけます。
 中途半端なプライドは禁物です。上位につけて難関大学へ、と考えていたのに平凡な成績しかとれない場合にはやる気をそがれます。 これは、北高に限った話ではないのですが、気分転換する余裕がないだけに追い詰められます。
3.志望校
 当然ながら、有名私大を目指す人には向きません。意外かもしれませんが、医学部をめざす人には微妙です。地方大医学部に 受かる力のある生徒でも、ライバルたちが京大や阪大志望のことが多く、競い合う医学部志望者が極めて少ないのです。
 国公立だったらどこでもいいから行かせてほしいという人にはぴったりのようですが、こういう動機の人は学力が低いことが多く、 やはり向いていません。「広大が第一志望だが、うまくいかなければ愛媛か山口へ」というあたりの生徒が一番向いていると思います。

より地域に信頼された学校になるためには

転学・退学問題
 2007年の入学者は240人でしたが、3年後の2010年に卒業したのは229人でした。また、2008年の入学者232人でしたが、2011年の 卒業生はは219人でした。各11、13人だけ卒業の方が少なくなっています。尾道東ではこの数字は3人(2010)、2人(2011)であり、 他の進学校でも大体この程度が普通です。
 実はこの時期、北高では自主退学や転学(近隣私立や通信制へ)が多かったのです。学力不足でついていけなかった例もありますが、 学力は十分あっても校風が合わなかった例もあります。地元中学の期待の星として進学したはずの生徒が退学すると、地域に衝撃を与えました。
 今では、転学・退学に至らないように、欠席がちになると早めにフォローが入ります。また、簡単に退学しないよう説得されるように なっているようです。その結果、転学・退学は以前の半分ほどに減少しています。
 一方、数字には表れませんが、欠席が目立つ生徒、保健室でたびたび休んでいる生徒は他校より多いようです。潜在的な「退学予備軍」は なお少なくないのかもしれません。すでに行われていると思いますが、ストレスの小さい学校づくりをする努力を続けねばならないでしょう。

自由時間の回復
 確かに北高の課題・補習を一通り受け、それを消化すれば、広大に合格する程度の入試問題演習はほぼ全てこなしたことになります。 あくまでも消化できていれば、という条件がつきます。実情を見れば、消化できていない生徒がほとんどということになるでしょう。
 燃料をいくら送り込んでも空気が足りなければエンジンは不完全燃焼していずれ故障してしまいます。今の課題を厳選して半分にしても 一通りの演習は十分経験できます。理解し消化する時間や気分転換して精神の安定を回復する時間を確保する方が有効だと私は考えます。
 そもそも、「たくさん勉強すればそれだけ伸びる」という原理主義的な教育論は私は正しくないと思います。誰でも経験したことがあるように 「やる気」は有限な資源です。もちろん、すぐれた才能を持ちながらそれを眠らせたままでいるのはもったいないので、普段からある程度の 勉強は必要です。高校1・2年でやる気を消耗させないで、高3で全力を投入できることが才能を生かす理想的なパターンなのです。
 また、現代は言われたことをそのままやるだけではなく、自分で問題点を発見し、解決のアプローチを考え、実行していく人材が求められます。 勉強以外の経験を学校外で積んでいくことも人間として成長するために大事ではないかと私は考えます。
 そういう意味では、1年生から夏休みが極端に短く、しかも課題漬けになる状態はマイナスのほうが大きいというのが私の意見です。 また高3生になってまで大量の課題処理に追われて自分の勉強ができないという状態は避けるべきでしょう。
 生徒は労働者ではありませんが、労働基準法で労働時間が制限されているのは、「人たるに値する生活」を確保するためです。高校生でも この必要性は決して変わらないと思います。3年間勉強ばかり強制されて自分の時間がとれないようなカリキュラムには負の側面も あります。「入学時に学校側に処遇を一任しているのだ」と言うためには、カリキュラムが完全に公開・説明され、生徒・保護者の真の 合意が必要なはずですが、オープンスクールや募集要項ではそこまでわかりません。
 勉強時間が過密になっていて余裕がない点については2013年あたりから少しずつ改善に向かっているように見えます。この傾向が続く ことを期待しています。

浪人のすすめ
 尾道北からは浪人がほとんど発生しません。普通の年は10人いるかどうかです。
これは、第一志望(前期国公立)が不合格でも、後期でどこかの国公立に受かってしまうため、そのまま進学するケースが多いことが理由の 一つです。それでも、浪人して本来の志望校に行きたいと考える人がもう少しいそうなものですが、なぜ少ないのでしょう。
 それは、生徒自身が浪人したくないからです。「もう勉強はしたくない」、「とにかく大学生になりたい」、ほとんどの生徒はこう 言います。3年間、しんどい思いをして勉強を続けてきたのですから、無理もありません。
 例えば、県内公立No.1と言われる基町高校の広大合格者66人のうち、浪人は13人を占めます。京大でも14人中5人が浪人です。 北高では、広大22人中1人、旧帝大14人中2人が浪人という状態なので、基町ほど浪人が活躍していません(データは2015年)。
 私の感覚としては、東大や京大を目指していた人が、前期に不合格になり、後期で九大に受かったから行くなどというのはありえない、 その程度の意志で「東大(京大)に行きたい」などと言ってほしくない、と思います。第一志望が広大であってもそこは同じだと思いますが、 いかがでしょう。
 とはいえ、浪人してでも志望校へ、という固い意志を持つにはもう少しゆとりが必要なようです。

新しいビジョンを持つリーダー
 これまで書いたように、北高では時代がたつにつれ、どんどん課題が増え、休みが少なくなってきました。その中で生徒はよくがんばって きました。生徒だけではありません。これだけのことをやろうと思えば、先生方も大変な努力・苦労をされているはずです。昼休憩には採点、 夜遅くまで残業、ひんぱんに休日出勤という毎日の中、おそらく予算の関係で残業手当、休出手当を不十分にしかもらえていないでしょう。
 外から見ると、先生方は生徒の学力の向上のため、燃える集団として一丸となってがんばっていると見えるかもしれません。しかし、 私はそう思いません。先生方の多くは、自分の高校時代は普段の課題などなく、40日の夏休みがある環境で自分なりに勉強して大学に 合格した経験を持っているわけです。しかも、当時の方が合格に必要な学力は高かったと言われています。こういう背景から、今の北高の ような莫大な量の課題、補習でがんじがらめにすることに内心批判的な先生は少なくないだろうと思います。
 それではなぜ、校内で異論が噴出して軌道修正されることがないのでしょう。知り合いの教師の言葉を借りれば、「やり過ぎだと思っても、 否定的な態度をとると指導に不熱心だと思われてしまう」ということなのではないでしょうか(私の推測ですが)。
 すでに述べたように、尾道北の入学者のレベルはここ数年やや下がっています。合格実績も伸び悩み感が出ています。 その中で、課題や補習を減らせば、合格実績の低下が学校の運営の失敗だと外部に誤解されるのを恐れてきたのかもしれません。
 したがって、課題や補習を減らして生徒の自由時間を作ることは相当な勇気が必要です。しかし、そろそろ本音でやらないといけない時期 ではないでしょうか。他校ではもっと生徒にゆとりがあって、しかも実績は北高を上回っているという事実にもう目はつむれないでしょう。
 課題・補習のリストラはすでに始まっているようにも見えます。また、「問題を発見し、解決法を考え、実行する」タイプの人材を育成する 必要性について、認識が高まっていることは感じます。しかし、そのための具体化はこれからです。 魅力ある学校とは何かというビジョンを描いて改革を実行できるリーダーに期待したいところです。