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星組東京宝塚劇場公演

ベルサイユのばら
フェルゼンとマリー・アントワネット編

観劇日時 2006年3月21日
15時30分の部


ベルサイユのばら
フェルゼンとマリー・アントワネット編


池田 理代子 原作
植田 紳爾 脚本・演出
谷 正純 演出


 「ベルサイユのばら」は、2001年以来2回目だ。2001年の時はクサい作品だと思ったものだが、今回はかなり受け入れられるようになってきた。5年の間に、宝塚ファンとして、「植田歌舞伎」というものが、理解できるようになってきたからであろうか……。

 今回の演出は、1幕はフェルゼン、マリー・アントワネット、オスカルが中心。2幕前半がオスカルとアンドレ、2幕後半はフェルゼンとマリー・アントワネット。
 オスカルはそれなりに出番があったが、アンドレの存在感が2幕前半以外は薄いような気がした。最も、今回の脚本の流れから見れば、仕方のないところか。
 とはいえ、定番の演出はきちんと残っている。毎度おなじみのオスカルの部屋の場面。「今宵一夜……」の台詞を聞くと、「やっぱり宝塚のベルばらだ」と感じる。
 今回の演出で特徴的に思えたのは、「泣かせ」への力の入れようだ。さすがは植田氏と谷氏のコンビ。どちらも「泣かせ」に力を入れる演出家だけに、力のこもった「泣かせ」を感じた。特にバスティーユ襲撃の場面、そしてアントワネットが断頭台へと上っていく場面。(そして見事にその作戦にやられてしまった僕がいる(^-^;))。

 マリー・アントワネットは、新トップ娘役の白羽ゆり。
 お披露目公演で、マリー・アントワネットができるとは、なんという幸運。そして、その幸運を、きちんとものにしているのが頼もしい。
 マリー・アントワネットの衣装はよく似合っていたし、最初から最後まで王妃らしい高貴な美しさがあった。そして、高貴な雰囲気を漂わせた演技もよくできていた。「さようならベルサイユ、さようならパリ、さようならフランス」の台詞とともに、断頭台へと上がっていく姿は、凛とした美しさがあった。
 お披露目でこれだけできるのだから、きっと、大物のトップ娘役になってくれよう。

 フェルゼンの湖月わたるは、アントワネットへの命を賭けた愛情表現がよく出ている。逢瀬の場面の甘い雰囲気。ベルサイユを去るときの断腸の思い。国王一家が囚われた時、何とかアントワネットを助けようと必死になる姿。奥深い愛情表現を見せてくれた。
 それを集約したものが、最後の台詞であろう。「王妃様、あなたは私の胸の中に生きています。あのベルサイユに咲く紅薔薇のように」。
 トップスター就任からもう3年が過ぎているとはいえ、退団が惜しくなってくる。

 絶品だったのが、安蘭けいのオスカル。
 軍人としてのオスカルと、一人の女性に戻ったときのオスカル。それぞれを絶妙なバランスで演じ分けている。軍人にならなければ行けないときは軍人だった。その一方で、女性になる必要があるときは、きちんと女性の心が出せていた。「オスカルの部屋」の場面での台詞は、いつにない輝きがあった。
 そして、軍服の着こなし、化粧も素晴らしい。まさに「男装の麗人」だった。「オスカルとはこういうものだ」と見せてもらえたような気がする。

 アンドレは立樹遥。
 比較的ナチュラルな感じの芝居。悪くはないが、植田芝居ならではの大袈裟さを、もう少し出してもよかったのではと思う。

 ジェロデールの涼紫央が、なかなかいい存在感を出していた。82期も中堅学年になり、要所要所を締める存在になってきた。これからも宝塚での活躍を見ていきたい。


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