観劇記録のページ
月組東京宝塚劇場公演
JAZZYな妖精たち/REVUE of DREAMS
「東京ではヒロインが死ななくてよかった」という声を聞いた。何それ……。 谷氏が大劇場と東宝で脚本や演出を変えるのは毎度のこと。しかし、ヒロインの生死を変えるような脚本変更をするというのは反則ではないか? ヒロインの生死は、物語の筋を変える重要な要素の一つだ。ヒロインの生死が変われば、物語は全然別のものになってしまう。2つの拠点で同じ作品を上演するということを、もう少し谷氏は意識してほしいものだ。 しかし、僕は東京だけの観劇だが、正直なところ、「大劇場を見なくてよかった」と思った。おそらく大劇場で観劇したら、ヒロインの死でかなり怒っただろう(^-^;)。 それにしても、この脚本変更を抜いても、まだ突っ込み所が見受けられた。 ヒロインが白血病になるという設定。「世界の中心で、愛をさけぶ」を意識していないだろうか。少なくとも僕は、あの映画の影響を感じた。「白血病をネタにすれば観客は泣くだろう」という、谷氏らしいもくろみだ。 それから、舞台に登場する妖精たち。衣装が緑色というのは……、愛知万博の影響? 僕は万博のマスコットキャラクター、キッコロとモリゾーを思い出さずにいられなかった。 とはいえ、東京版の出来はまあよかったと思う。 登場人物たちが妖精の存在を信じていること。妖精を信じながら生きていること。ここに宝塚的な夢が感じられてよかった。 特に主人公のキャラクター設定はよくできている。まっすぐな生き方、妖精を信じる純朴さの持ち主、そんなキャラクターが瀬名じゅんに合っていた。 また、白血病の使い方が安易には感じられたものの、うまく命の大切さを訴えることはできていた。シャノンが自分の余命の少なさを引き合いに、ウォルターに人殺しをやめるように説得するところ。ここは谷氏にしては結構説得力があった。
一時期、中村一徳氏には飽きていたこともあるが、久々に見たら何となく新鮮味があった。 ショー自体の見応えはかなりある。ほとんどの場面に、使えるだけの生徒を投入して華やかに踊っている。舞台装置もそれなりに凝っていたと思う。 また、新トップコンビのお披露目という点もうまく計算に入った作品作りができている。この点も評価ポイントだ。 ただ、どこか抽象的なイメージがぬぐえなかった。おそらくそれは「夢」というテーマのためだろうか。対象物に形はなく、どこかつかみづらいものが「夢」。 僕はよくこのコーナーの中で「夢」という言葉を使っているが、普遍的な意味での「夢」という言葉は使ったことがない。僕自身の主観で「夢」が感じられたとき、「夢がある作品」と言っているだけだ。 「夢」というものはなかなか難しい。 ところで、この公演を最後に、月船さららが退団していった。82期の有力生徒の一人だっただけに、残念な話だった。 7月でバウホールの主演を見たとき、不良姿が板についていてなかなか好感があった。これなら男役としてかなり活躍できるだろうと期待した矢先の退団発表だけに、残念な思いがぬぐえなかった。 今回の作品、芝居ではバウホールとは逆の立場の警官役。警官の格好も似合っている。また、正義感を持って警官を務めながらも、昔の友情を大事にしている。そんな微妙な役をうまく演じていた。 月組期待の男役だっただけに、本当に惜しい退団だった。 |