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花組 東京宝塚劇場公演

落陽のパレルモ/Asian Winds!

観劇日時 2006年1月2日
15時30分の部
2006年1月4日
11時の部


落陽のパレルモ

作・演出 植田 景子


 現時点で大劇場で3回、東京で2回観劇している。

 身分違いの恋。身分制度のなくなった時代では、立場の違う人を相手とする恋愛であろうか。いずれにせよ、かなり苦しい恋愛だ。
 時代が変わっても、立場が違う相手との恋愛は苦しい。このことは、主人公ヴィットリオの曾孫にあたるヴィットリオ・Fとジュディッタの話が証明している。
 ヴィットリオ・Fとジュディッタは、時代を超えての、主人公たちとのパラレルな存在。やはり立場が違う相手との恋愛で苦労している。この2人の描写が、ヴィットリオとアンリエッタの苦難をより強調していた。

 それにしても植田景子氏の脚本はいい意味で凝っている。
 ヴィットリオ・Fとジュディッタだけが主人公たちを引き立てる存在ではない。もう一つ、フェリーチタの悲劇というものが、物語の大事なキーになっている。この悲劇から、ヴィットリオとアンリエッタが結びつくように持ってきている。フェリーチタの悲劇は、物語により深みを与えていた。

 主人公たちはかなり苦しい思いをしている。特に貴族たちのあまりにも保守的な姿勢に、二人は苦しんでいる。だが、その苦しみを超えて幸せをつかむハッピーエンド。トップ娘役の退団公演にはなかなか似合ったストーリーだった。


 しかし……、植田景子氏の作品を見ていると、なぜか自分を振り返ることが多い。そしてつい考え込んでしまう。今回もそうだった。
 立場の違う人との恋愛がいかに難しいか。それは現代になっても変わっていない。



Asian Winds!
アジアの風


作・演出 岡田 敬二


 「Asian Sunrise」が懐かしくなってきた。
 この作品も、アジアを舞台とした岡田氏の作品だ。しかも、同じ花組で上演されている。それだけに懐かしさを感じずにはいられない。「Asian Sunrise」のテーマ曲も取り入れられていたから、懐かしさはなおさらだった。
 最も、この作品はいわば「Asian Sunrise」の続編にあたるものというのが、岡田氏の意図だから、懐かしさを感じるのは当たり前だろうか。

 続編となれば、大事な点が意外と多い。
 まず「Asian Sunrise」とのスムーズなつながり。これは沖縄の場面を入れて、「Sunrise」でも使った「エイサー!」を登場させることでうまく実現できている。
 次に面的な広がりがほしいが、これも実現している。冒頭のモンゴルの草原や、中詰めのあとの韓国、そしてサンパギータなど。「Sunrise」にはない場面で、アジアの世界が広がっている。
 世界を広げるだけではない。世界を深くすることも忘れていない。中国の「上善如水」。日本の服部良一に、フィナーレのボレロ。このあたりが、アジアの世界を深めるものになっていた。

 個人的に気に入ったのが、フィナーレのボレロだ。このショーのテーマ曲をボレロにアレンジし、三味線を入れている豪華な音楽だ。そしてこの音楽に合わせて男役が総出で黒燕尾姿で踊る。宝塚の神髄のようなものだ。
 ただ、その分トップコンビのデュエットダンスが軽いのが残念。ふづき美世のサヨナラ公演なのだから、もう少し時間を取れなかったものか。

 「Sunrise」と「Winds」、両方をあわせた1本物のショーを作っても面白いのではないか。両方の作品が合わさると、連続性を持ちながら、広がりと深みが出てくる。1本にすれば、壮大なアジア物の作品ができると思う。
 また、第三のアジア物も面白いかもしれない。

 パレードでは、エトワールの他に、遠野あすかが大階段一人降りをしている。トップ以外の娘役の大階段一人降りは珍しいことだ。
 娘役ファンとして、これは嬉しい。男役の早変わりの時間を稼ぐという、演出の都合があってのこととはいえ、娘役の活躍の場が増やされている。そして、実力ある娘役に、きちんと活躍の場が与えられている。
 今回のショーでは、遠野あすかの活躍がすごい。大階段一人降りだけでない。服部良一の所では、娘役をリードしている場面もある。
 これだけの活躍があるのに、なぜトップ娘役になれなかったのだろうか。娘役というのは、本当に難しいものだ。経験を積んで、実力を身につけたからといって、安定したトップの座が保証されているわけではない。
 現役生では遠野あすかが好きな僕としては、少し溜息も出てくる。せめて、別格娘役として大事に扱ってもらえればいいのだが……。



 芝居とショーを通して目立ったのが、華城季帆の活躍だ。

 芝居では物語のキーとなる人物、フェリーチタを演じている。
 繊細な性格で、悲しみの果てに心を病んだフェリーチタ。その姿が化粧でうまく表現できていた。そして、自ら命を絶つという悲劇を見事に演じていた。
 重要な登場人物の一人、フェリーチタの好演は、物語に深みを与えていた。

 ショーでも、遠野あすかに続く活躍が見られた。ダンスでも歌でもかなり伸びてきている。
 チャイナタンゴのところで、遠野あすか・華城季帆・桜乃彩音の3人口があったが、ここでのダンスが結構よかった。表情が豊かになりダンスにもゆとりが出てきている。
 そしてものすごい伸びを見せたのがエトワールだ。博多座の「エンター・ザ・レビュー」の時は少し硬さも感じたが、今回は柔らかみが出てきて、透明感のあるきれいな歌声になっている。

 今後が楽しみな娘役の一人だ。


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