観劇日時 |
2004年9月4日
11時の部 15時の部 |
以前、エッセイにも書いたが、2年間感じ続けてきた宝塚への絶望に、少し明るい光が差し始めている。まだまだ、雲の隙間から光が差しているような状態だが、それでも光が見えてきたことは大きい。
その、光を見せてくれたのが花組だった。
現役生で好きな生徒が遠野あすかだから。それだけが理由ではない。今の花組には、僕を引きつける要素が多いのだ。魅力的な娘役もいるし、男役も僕の興味をそそる生徒が多い。そして、組全体が華やかな雰囲気に溢れていて、しばしの間絶望を忘れさせてくれるのだ。
明るい光を感じるようになったきっかけは、前回の「アプローズ・タカラヅカ!」だと思う。あのショーは宝塚らしい魅力の詰まったとてもいいショーだった。そんなショーを花組が上演したことがまた、自分には大きかったと思う。
花組は、僕が初めて宝塚を観劇した組。そして、紺野まひるが贔屓になると同時に、雪組中心の観劇生活になる前は、最も好きな組だった。そんな組が、絶望を感じながら宝塚ファンを続けてきた僕に、光をくれた。
そして、今回の大劇場公演。
観劇前から、今度はどれだけの光を、花組からもらえるのか。久々に、そんな期待を持ちながらの観劇旅行になった。
すっかり、花組ファンとしての自分だけは戻っているようだ。
La Esperanza ーいつか叶うー
作・演出 正塚 晴彦
あくまでも個人的な感想なのだが……、この作品、僕のように、落ち込んだ状態で宝塚ファンをしている者には、大きな励みになる作品だった。
タイトルの「La Esperanza」は、スペイン語で「希望」を意味するという(プログラムの中の正塚氏の言葉より)。そしてそのストーリーは、その言葉の通り、見る者に希望を抱かせてくれた。
主人公とヒロイン、それぞれが挫折を味わっている。だが、その挫折の中から、将来への希望を見つけ出し、夢を叶えていく。見ているだけで、本当に元気づけられるものがあった。
たった一つのことだけではない。人生すべてに対して、大きな希望が見えてくるような、そんな気持ちにさせてくれたのが嬉しかった。
時々こぼしている仕事のこと、プライベートの色々なこと、そして、宝塚に対して抱いている絶望感まで吹き飛ぶような、そんな心地よさを感じさせてくれた。
宝塚の作品だから、宝塚に対して抱いていた絶望感を癒してくれたということが、特に嬉しい。
主題歌に、こんな言葉がある
あの日のように始めよう
失うものなどなかった
けれど明日の希望に
いつでも陽気でいられた
それは今でも変わらず
再びここから旅立つ
この歌が、僕にとっての最大の励みだった。ちょうど、宝塚初観劇の組である花組だけに、ものすごく強力な励ましだった。
その花組の励ましが嬉しくて、はからずも主題歌に涙した。
僕が今年の年頭に書いた言葉を覚えている方はどれくらいいらっしゃるだろうか。「今年は宝塚に対して元気を取り戻していきたい」と僕は書いた。そうなるためのヒントが、この歌じゃないかと僕は今回の観劇で思った。そう、宝塚ファンになったばかりの頃の気持ちに帰れば、元気を取り戻せるのではないか……。
この主題歌は、かなり気に入った。
劇団や阪急電鉄に対する皮肉がそれとなく入っているのが、正塚作品らしい。この皮肉があってこそ正塚作品。
今回は、ミルバの就職した遊園地で、支配人が「この遊園地をもっと楽しくしたいんだ」という台詞を言っている。これはおそらく、ファミリーランド閉鎖を意識して入れた言葉だろう。
ファミリーランド閉鎖で、宝塚大劇場界隈の風景は本当に変わった。ほんの数年前まで、遊園地と歌劇が渾然一体となった、楽しい空間だった。だが、今はマンションと工事現場に囲まれた、少々息苦しさを感じる空間になってしまった。
ファミリーランドが閉鎖され、宝塚歌劇団は、ファン心理を逆撫でするようなことを続けている。ほんの数年前の、あの楽しい空間はどこへ行ったのかと、正塚氏が言っているような気がした。
皮肉を入れながらも、最後は夢を見せてくれる。
ラストの一つ前の雪原の場面。ペンギンを見に来た二人のデュエットダンスは、正塚氏が宝塚らしい夢を大事にしていることの証拠だ。
宝塚らしい夢に酔わせてもらえたことが、嬉しかった。
TAKARAZUKA舞夢!
作・演出 藤井 大介
ギリシャ神話を集めて、宝塚のショーへと移植。一見、難しい大冒険のように見えたが、観劇してみると、非常に上手くできていた。
ギリシャ神話の世界を残しつつ、いかにも宝塚的な愛と夢の世界が舞台で展開されていた。この出来のよさに関心させられた。
「La Esperanza」同様、主題歌がとても気に入った。
特に最後の
どうか恐れないで どうか忘れないで
世界で初めての愛が始まるのだから
世界で初めての夢が生まれるのだから
の部分。
これは、宝塚の原点ではなかろうか。やっぱり、宝塚は現実を忘れて、夢や愛の世界に酔う場所であってほしい。そんな思いを持つ者の気持ちを代弁してくれたような気がする。
さて、ここからちょっと娘役ファン的視点の感想が入る。
気に入った場面の一つに、第13場「男と女・レビュー」がある。ここでのゼウス、ハデス、ポセイドンの語り合いがツボをついた。「女」を「娘役」と変えると、自分の気持ちに近いものを感じることが何度かあった。
「女は男にとって宝石のようなもの」。確かに僕にとって、娘役は、宝石のような輝きを持つ存在だ。過去、好きになった娘役たち、今、好きな娘役、その他にも、観劇中にふと目についた娘役たちの姿が頭をよぎる。
そして3人が、理想の女性について歌う。その中で、「大粒のダイヤモンド」という言葉が出てきた。この「大粒のダイヤモンド」というものが、自分にとっての理想の女性のことだ。
ここで不思議なことが起こった。今まで、色々な娘役のことを思い出していたはずだが、この「大粒のダイヤモンド」という言葉を聞いたとたんに、僕が頭の中に思い浮かべる娘役は一人だけになっていた。そして、その娘役は、もう2年も前に宝塚を退団している大本命、紺野まひるだった。他に誰も思い浮かばなかった。紺野まひるへの激しい入れ込みぶりは、ここの一つのテーマになっているが(^-^;)、そんな自分でさえ、こんなにも紺野まひるに入れ込んでいたのかと、驚いてしまった。
宝塚で現在、最も好きな組は花組、だが、最も好きな人は、雪組OGの紺野まひる。我ながら不思議な組み合わせをしていると思うが……。
ちょっと話が脱線してしまった(^-^;)。
YOSHIKI氏作曲の「世界の終わりの夜に」も印象的なものの一つ。どの曲をYOSHIKI氏が提供したか、ほとんど予習せずに来たが、曲を聴いて一発でYOSHIKI氏の曲だとわかった。X-JAPANの系譜を継ぐバラード。何年か前に流行った「Endless
Rain」を思い出させる曲調だった。
この曲を、春野寿美礼が一人で歌い上げる。ここはこのショーの中では、最大の聴かせどころであろう。聴いていて、何とも言えぬ心地よさがあった。
この曲と対をなす、主題歌の「舞夢−世界の始まりの朝に−」も含め、歌が非常に印象に残る観劇だった。
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