観劇日時 |
2006年4月8日
11時の部 15時の部 |
アパルトマン シネマ
稲葉 太地 作・演出
新人公演を何度か観劇していたせいか、稲葉氏の名前はすでに覚えていた。その稲葉氏が、初めて演出を手がけるということで、脚本や演出にもいつも以上の注目が行った。
今回の作品は、あるホテルに滞在する人々の人間模様を描いた、ちょっとコミカルな作品。随所に面白いものがちりばめられて、結構楽しめる作品だった。
ただ、細かい点に凝りすぎて、話の芯が今ひとつ伝わってこなかった。
主人公のウルフと二番手役のレオナード。この2人のエピソードは、大事なポイントのはずなのだが、どこか淡々としている。二人が誰もいないロビーで会話する場面があるが、どこか間延びした雰囲気があり、話の芯になるものが見つけづらかった。
稲葉氏は舞台だけでなく、映像についても学んだことがあるのだろうか。スクリーンを多用した演出が目を引いた。
例えば、ウルフがヒロインのアンナに惹かれるきっかけとなった映画の再現。あるいは、テレビ番組が引き起こす、レオナードを巡る騒動。いくつかの場面で、舞台とスクリーンを併用。
舞台芸術であるだけに、スクリーンは一歩間違えれば単なる邪道になる。だが、この作品では邪道な側面は感じなかった。舞台を補助するための、動く大道具として、うまく作品の中に溶け込んでいた。
登場人物で目を引いたのが、コンスタンチンの華形ひかると、アドルフの望月理世だった。
この二人、宿泊客同士で仲がいい設定になっている様子。それだけに、二人が出てくる場面は、たいてい小芝居が織り込まれている。この小芝居を二人ともうまくこなしている。なかなか面白くて、目の離せないコンビだった。
個人的に気に入ったのは、アドルフがコンスタンチンにパソコンを教えているところ。二人がなぜか太極拳のレッスンを受けているところ。本筋とは離れた部分での面白さがあってよかった。
今回の公演は、新トップ娘役の桜乃彩音のプレお披露目の一面もある。この点も、今回の公演の注目点の一つだ。
抜擢系のトップ娘役だが、芝居の出来はなかなかいい。芝居中心の作品なら、場数を踏む毎によくなっていきそうだ。ただ、歌はまだ練習の余地がありそうだ。「落陽のパレルモ」の新人公演に比べれば、進歩している面はあったけれども。
春野寿美礼がトップスターというのが心強い。さすがは実力派のトップ。若いトップ娘役をうまくリードしている。そして桜乃彩音も、そのリードにうまく乗って、トップ娘役をつとめている。
これからの公演が楽しみになってくる、新トップコンビだ。
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