観劇記録のページ
宙組宝塚大劇場公演
Never Say Goodbye
不思議だった。12年もトップ娘役をつとめてきた、花總まりのサヨナラ公演のはずだが、「これが最後」という実感がわいてこない。このことは、トップスター和央ようかについても言えた。 もっとも、この6年間、宙組の観劇機会がなかったからかもしれない。「望郷は海を越えて」までは宙組を見ていた。だが、その後、なぜかチケットが取れないことが続き、いつの間にか宙組から遠ざかっていた。 今回はトップコンビのサヨナラで1本立ての大作。そんな公演だから、何とか観たいと、他の観劇にぶつけて大劇場で観劇した。そのはずなのだが……。 舞台は第二次世界大戦期、内乱に揺れるスペインが舞台。内乱を戦う民兵たちの物語。内乱の中、ファシズムと戦う市民たちの物語。そして、その現場に立ち会った男女の恋愛物語。壮大なスケールの大作だった。 核となっているのは、もちろん、ジョルジュとキャサリンの物語である。だが、それが全てではない。民兵組織の話、政治結社の対立、そして、ファシズムに立ち向かう市民の姿。非常に多くの見所があった。第二次世界大戦期のスペインで、人々はどう生きたか、そんな視点でも、テーマを見いだすことができる。非常に深みのある好作品といってよかろう。 プログラムの中でも、第二次世界大戦期のスペインの歴史についての解説がある。事前知識として、このページを少しでも読むと、話がわかりやすくなるかもしれない。 かく言う僕も、観劇の前夜にはプログラムをかなり念入りに読んだ。 今回は、外部から招聘された作曲家が曲を書いている。フランク・ワイルドホーン氏だ。ワイルドホーン氏が、宝塚にどんな曲を提供するのか、これも楽しみだった。 ワイルドホーン氏は、宝塚音楽をよく理解していた。外部の人が作った音楽だからといって、全く違和感がない。ごく普通に、舞台に溶け込んでいる。そして、気がつくと音楽が心地よく耳に残っている。主題歌にある、「だから言いはしない サヨナラだけは Never Say Goodbye」の旋律が美しく、そして優しく響いていた。 演出は、8割が歌で作られている本格的なミュージカル。オリジナルで、これだけのミュージカルというのも、小池氏だからこそできたことだろう。 かなりの高度の作品に思えた。しかし、宙組の生徒たちはとてもうまくこなしている。 宙組のアンサンブルは、相変わらずよくできている。以前、宙組を観劇していた時期も、コーラスのレベルの高さに感心していた。今でもそれは変わっていない。コーラスだけでなく、集団で踊るときのフォーメーションもよくできている。 このアンサンブルの迫力が、反ファシズムで団結する、市民たちのパワーを感じさせた。 長いこと観劇してこなかった宙組なので、あまり個人に関しては書くことができない。 目を引いた生徒を一人挙げさせていただければ、大和悠河。以前は、何となく頼りないものを感じるときがあった。しかし、それはもう昔のものとなったようだ。今回の舞台を見ていると、力強さがあった。長いこと見ていない間に、大きく成長したものだと思う。 |