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雪組 東京宝塚劇場公演公演
春麗の淡き光に / Joyful!!!
観劇日 | 2003年4月19日 |
観劇時刻 | 午前11時の部 |
観劇場所 | 2階6列下手(S席) |
春麗の淡き光に
−朱天童子異聞−
植田 紳爾 脚本・演出
植田作品としては、いい出来の部類に入るのではないかと思う。日本物独特の様式美など、結構楽しむことが出来た。
ただ、観劇後に疑問に残る点があった。
「あれだけ改革、改革と言っているのに、自分自身は改革しないのか?」という疑問。脚本に及第点が出るとは言え、それでも相も変わらぬ植田歌舞伎。脚本家としては、改革に取り組む姿勢が見えてこない。
植田氏は、宝塚歌劇団理事長として、ここ数年、宝塚の改革に取り組んできた。新しいファンを増やし、宝塚歌劇団を収益の上がる団体にしようという。
改革の中で特に力が入っていたのが、生徒の若返りにより、新しいファンを取り込むということ。
そのためにずいぶん強引なことをしてきた。例えば、新専科制度。例えば、1作トップ。
1作トップなど、一連の改革の中でも特にすさまじい蛮行ではなかろうか。長年応援してきた生徒が、念願叶ってトップ就任したと思ったら、大劇場公演前に退団発表。目出度いはずの、お披露目公演の初日に、「でも、これが終われば退団なんだよね」という、とても寂しい気持ちをファンに抱かせた。大劇場お披露目公演の初日さえも、明るく迎えさせてくれなかった。
ここ数年の改革は、このように、生徒とファンが犠牲にされているのだ。匠ひびき、絵麻緒ゆう、紺野まひるの決断、そしてそれに巻き込まれたファンの涙。改革の背景にあるのはこういったものである。
生徒とファンに対しては、ここまで改革路線を押しつけられてきたのだ。だったら作品を作る側も改革すべきでないか?
これだけの改革をしたにも関わらず、自分だけは相も変わらぬ植田歌舞伎を書き続ける姿勢に、疑問を感じざるを得なかった。
「少しも早く」劇団を収益力のある団体にしたいのなら、理事長自身の改革も必要ではないかと思うのだが……。
Joyful!!!
藤井 大輔 脚本・演出
雪組は、どこへ行ったのか……。
僕が好きだった雪組は、「追憶のバルセロナ」/「ON THE 5th」を最後に、消滅してしまっていた。組カラーが消えたというのは、ほとんどの組に対して言えることではある。しかし、どの組が最も変わったかと言えば、間違いなく雪組であろう。
芝居よりもダンスのトップコンビ、朝海ひかると舞風りらのために、雪組は大きく変わった。味わいのある芝居を見せる組というイメージはすっかりと消え、少し前の花組に近い、ダンスの組になった。朝海ひかる・舞風りらにあわせて、昔からの雪組生も踊りまくっている。
紺野まひるのファンになって以来、雪組中心のファン生活を送ってきた僕にとって、このショーを、戸惑いなしに見ることはできなかった。そして、紺野まひるがいたときの雪組の雰囲気が完全に消えていたことに、ショックを抱かざるを得なかった。
こんなことを言うと、今でも雪組を応援し続けている人や、現役の雪組生のファンには怒られるかもしれない。だが、それを覚悟で言うが……、僕はこの舞台を見て思った。「さようなら、雪組」と。
新トップコンビに合わせた、脚本作りが大事なのは理解できる。だが、今までの雪組のファン、一連の改革で辞めていった生徒のファンとしては、取り残されてしまったような、寂しさを感じてしまう舞台だった。観劇中、1回も拍手しなかったし、フィナーレのパレードでも、いつもの手拍子をする気になれなかった。
もう、当分、雪組の舞台は見に行けそうにない。
ほんの少しだけでも、以前の雪組カラーが感じられる舞台にしてほしかった。
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