観劇記録のページ
(宝塚OG出演外部公演)
「天国の本屋」
天国の本屋 原作 松久 淳+田中 渉 脚本・演出 中村龍史 音楽・演奏 松谷卓 出演(宝塚OG) 紺野まひる 出演(その他) 須賀貴匡
ルー大柴観劇会場 博品館劇場(東京)
ハーモニーホール座間(神奈川)
前橋市民文化会館(群馬)
紺野まひるが、宝塚退団後1年2か月ほどで、舞台の世界に戻ってきた。
ファン自身、宝塚退団後は当面舞台の仕事はないだろうと思っていただけに、かなり嬉しい話だった。というわけで、博品館劇場だけではなく、神奈川や群馬にまで遠征してしまった。
実際、観劇していても嬉しかった。紺野まひるが舞台の上でヒロインを演じている姿を見られるということが。そして、1作トップということに対して感じていた「ファンとしての無念」が、ほんの少しだけでも、晴らされたような気がした。
宝塚メイクを落とした紺野まひるは、宝塚の舞台で見るよりも小柄に見える。これは宝塚時代のお茶会などでも感じたことだが、宝塚メイクというものは、舞台に立つ者を大きく見せる力があるのだろうか。
だが、演技を見れば、宝塚時代以上のものがあった。ミュージカルではなく、ストレートプレイだが、宝塚でトップ娘役にまで登り詰めた経験を武器に、貫禄ある演技を見せてくれた。
たとえば、ふと、ほんの少しだけ心を開いて、微妙に笑顔を見せるところがあった。この笑顔の見せ方がとてもよかった。鉄仮面のような表情から笑顔に変わる一瞬の変化、この変化にわざとらしさがない。ごく普通に笑顔へと表情を変化させている。
そして、クライマックスの、天国で再会した弟に、読みかけの本の続きを読んであげる場面。最後の「ごめんね」という一言への感情の込め方がとてもよかった。「ごめんね」という簡単な一言だが、この作品の中では大きな意味がこもっている。そんな一言の台詞の言い回しがとてもよかった。
舞台での登場人物は3人。原作本にはあと何人かの登場人物がいたが、主要な3人をのぞいてすべて割愛されている。確かにこれだけの登場人物で、舞台は成り立っていた。だが、これは博品館劇場だからこその話。他県の市民ホールでは、舞台が大きすぎて、もう何人かの登場人物が出ていたら……という物足りなさが漂っていた。
作品に関しては、原作も舞台もとてもいい出来である。原作の読後感もよかったし、舞台を見終えた後もとても心地よい気分にさせてくれた。作品全体に、言葉にできない優しさが溢れていて、それが心地よい後味を残してくれた。
作品の中では、何冊かの本が朗読される。これも原作本と舞台では、何作か違いがあったりするのだが、どちらもなかなかいい作品を選んでいたと思う。
紺野まひる以外の出演者の人選にも、文句はない。
まずサトシ役の須賀貴匡さん。「仮面ライダー」のアクションで鍛えられていただけに、体を張った演技に見応えがあった。おそらく、舞台の仕事は初めてだと思うが、俳優としての基本的な演技力はきちんとしていて、違和感なく見ることができた。
ヤマキ役のルー大柴さん。昔、僕が深夜放送ファンだった頃から、濃いキャラクターのタレントだと思っていたが、久々に舞台で見てもやはり濃かった(笑)。しかし、舞台では意外と味のある一面も見せてくれる。「二千年の恋」の朗読もよかったし、サトシとの別れのシーンも味のある演技だった。
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