観劇記録のページ

花組 東京宝塚劇場公演

ミケランジェロ / VIVA!

観劇日時 観劇場所
2001年9月29日
午後3時30分の部
2階12列上手
(B席)
2001年10月14日
午後3時30分の部
1階22列下手
(A席)
2001年10月27日
午前11時の部
2階7列上手
(A席)


ミケランジェロ−神になろうとした男−
谷 正純 脚本・演出


 いつも通り、東京に来るにあたっての脚本変更が入っていたが、今回ほど意表をつかれたものはない。
 大きい変化があったのが、ピチオーニ三姉妹の居酒屋の場面。ミケランジェロとメンドリーニが意気投合するところで、いきなり歌が一つ加わった。唐突にショーの中詰めのような雰囲気になり、ミケランジェロとメンドリーニを中心に、登場人物たちが銀橋に出てきて、楽しそうに歌い踊る。しかも、そこにいるはずのない、ジュリアーノやラファエロまで、なぜか出てくる (^-^;) これはある意味強烈なインパクトがあった (^-^;) 谷氏がこの場面を追加した意図も読みとれないし。
 僕も初日にはかなり戸惑ったし、関西から遠征してきた友人も、この場面には驚いていた。
 ただ、この場面追加は、慣れてくれば、あるいは大劇場を見ていないのなら、悪くはないと思う。とかく暗くなりがちな谷作品の中で、珍しく楽しさを感じさせてくれて。
 さらに、この場面は観劇中のいい息抜きになる。上演時間が1時間45分に拡大されると、どこかで肩の力を抜きたくなってくるが、この追加された場面が、いい力の抜きどころになってくれている。場面の意図がわからなくても、とりあえず楽しそうな雰囲気で銀橋に出て踊っているから、見ている方も少し気楽になれる。

 もっとも、最後に行けば行くほど重くなっていくのは大劇場と同じ。むしろ、大劇場以上に重くなったような気がする。
 たとえば、ジュリアーノが死ぬ場面。大劇場ではクラリーチェから隠れてそっと息絶える。この場面自体、谷氏の「人を殺して泣かせる」意図が見え見えで好きになれないのだが……、東京へ来たらもう、目も当てられないほどに悲惨に思えた。戦争の恐怖に怯える恋人を何とかしてあげようと思ったジュリアーノが、喀血しながらクラリーチェに近づき、息絶えるというのは、あまりに残酷すぎはしないだろうか。そこまでして死を泣かせの材料にしたいのか。
 大劇場からの場面でも見れば見るほど疑問を感じる。いまわの際のコンテッシーナに、「愛している」の言葉も言えないミケランジェロが、「私も愛を残して去ろう……」と言うのは何か矛盾していないか?と感じるのだが。
 今更こんなことを書くのも何だが……。谷氏には人を殺して泣かせることにばかり腐心せず、もう少し脚本の筋に目を向けてほしいと願いたいところだ。次作に「プラハの春」を選ぶようでは、期待できぬが……。


VIVA!
三木 章雄 脚本・演出


 大劇場での感想は書けなかったが、このショーはかなりよかった。
 大劇場での初見のとき、「ミケランジェロ」でかなりゲンナリしてしまったのだが、このショーを見たらそれが吹き飛んでいた。
 どの場面を見ても、見所がいくつもある。生徒個人個人の持ち味をうまく生かしているから、どの場面をとっても、誰を見たらいいのか迷ってしまうのが嬉しい。
 たとえばプロローグの次の場面。春野寿美例、瀬奈じゅん、遠野あすか(大劇場は彩乃かなみ)の3人の絡みなどはその極みだ。観劇する度に、誰を見ようか迷ったものだ。

 次期トップ決定に伴い、新専科から戻ってきた匠ひびきがまた見せてくれる。専科入り以前に育ってきた花組で、水を得た魚のような動きを見せてくれる。そして、次期トップへの大きな期待をもたせてくれる。
 花組のファンでもある僕としては、匠ひびきが戻ってきたのは非常に嬉しい話だった。花組の個性にこれほど合っている生徒はいない。新専科制度導入のときは、どうなることかと思ったが、次期トップが決まり、こうして花組の舞台で見られることに、安堵感と嬉しさを感じている。



 芝居とショーを通して、娘役ファンとしては、組替えの影響がどう出るかも興味のあるところだった。今まで別格として存在していた渚あき、若手代表の彩乃かなみと、有力娘役が二人も大劇場だけで抜けてしまったのだから……。
 渚あき・彩乃かなみに変わるポジションについたのが、舞風りらと、宙組から来た遠野あすか。
 遠野あすかが、芝居で強烈な印象を与えてくれた。
 まず、清楚な可愛らしさが、ミーハー心をくすぐってくれる。ルイーザが出る度に、オペラグラスで遠野あすかばかり追ってしまっていた (^-^;) さらに、ビジュアル面だけにとどまらず、実力もしっかりしている。芝居もできるし、歌がまた聴かせてくれる。ものすごくきれいな歌声で、耳に心地よかった。
 舞風りらも、また好印象。こちらはショーで見せてくれた。ダンサーとしての素質が高いだけに、活き活きとした動きを見せてくれた。また、やはり歌唱力もなかなかのものがあり、結構聴かせてくれる。すっきりとした美しさも、また魅力的だ。
 タイプの違う二人の娘役が、それぞれの持ち味で見せてくれて、娘役ファンとしても観劇のしがいのある公演になってくれた。


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