観劇記録のページ
東京宝塚劇場 花組新人公演
エリザベート
エリザベート
−愛と死の舞曲−
ミヒャエル・クンツェ 脚本
小池 修一郎 潤色・演出
中村 一徳 演出
植田 恵子 新人公演担当
幕開きからしばらくは、いかにも新人公演的な危うさが漂っていた。だが、これも最初のしばらくだけの話だった。時間がたつにつれて安定感が出てきて、この作品の魅力をうまく見せてくれていた。
そして、舞台からは、「エリザベート」を新人公演でできることへの喜びが漂ってきていた。大作で、難しい歌も多く、苦労していることは明らかだった。だが、舞台上の生徒から感じていたのは、苦労よりも喜びだった。生徒にとっても、「エリザベート」はやりがいのある作品なのだろう。
同時に感じたのが、宝塚歌劇団の底力。演劇界の中での実力について、あれこれ言われることも多いけれど、やっぱり商業劇団としての底力はあると感じた。何しろ、研7以下の生徒だけで、この大作を上演できるのだから。
トート(本役:春野 寿美礼) 蘭寿 とむ
前半は歌の音程合わせに少し苦労していたような気配がある。だが、演技には確かなものがあった。堅実な演技で「死」を見せてくれた。
挨拶で印象的な言葉があった。「トートをできた幸せで、昇天の場面で自分も昇天していた」。確かに、トートを演ずる喜びが、演技の中から感じられていた。
「最近では特にレベルが高い」と言われる82期の一人。すでに退団していたり、退団が決まっている同期が多い世代だが、これからも期待していきたい。
エリザベート(本役:大鳥 れい) 遠野 あすか
新人公演のレベルを超えるエリザベート。ものすごい実力の持ち主だと実感させられた。
圧巻だったのが「私だけに」。これには圧倒されるものがあった。申し分のない歌唱力で堂々と歌ってくれた。「遠野あすかがちょっと好き」という立場を越えて、娘役ファンとして胸のすくような歌だった。
そして、鏡の間の場面が美しかった。エリザベートにふさわしい華やかな美しさがあった。
ただ、実力がありすぎて、これが仇にならないかという心配が残った。実力がある娘役ほど、不運に泣きやすい宝塚だけに……。
フランツ・ヨーゼフ(本役:樹里 咲穂) 未涼 亜希
フランツ・ヨーゼフ役らしい、実直な演技でよかった。新人公演としては上出来の舞台と感じた。
これから、ちょっと注目してみたい存在かもしれない。研5(1998年初舞台)の生徒たちも、なかなか実力派揃いだと感じた。。
ルイジ・ルキーニ(本役:瀬奈 じゅん) 桐生 園加
もう少し「狂気」があってもいいかなと感じたが、実力は十分に見せてくれたと思う。狂言回しとしてはいい出来だ。
新人公演だけに、多少割愛された場面があり、その場面にはルキーニが使われていた。この割愛された部分の場つなぎが上手かった。単なる解説ではなく、きちんとした狂言回しになっている。
新公学年の生徒の中でも、なかなか頼もしい存在だと思う。
皇太后ゾフィー(本役:夏美 よう) 桜 一花
大健闘だと思う。本専科生の役に果敢に挑んで、なかなかの出来を見せてくれた。女役にしては低い声をよく出せていたし、姑の迫力も結構あった。なかなか見応えのあるゾフィーだった。
ちょっとアイドル系の可愛らしさがあり、若々しさに溢れたルックス。だが、少しでもゾフィーの年齢に近づこうと、化粧に工夫を凝らしているのがわかる。この点でもかなり好感が持てた。
経験を積めば、かなりの実力派娘役になれそうだ。
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