隠れ宝塚のひとりごと
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星組帝国劇場公演「ダル・レークの恋」
菊田 一夫 脚本
酒井 澄夫 潤色・演出
観劇日 | 3月15日 |
観劇時間 | 午後3時30分の部 |
観劇場所 | 2階右側通路(5扉付近)にて立ち見 |
特記事項 | 彩輝直、一部休演 |
ショーの要素がほしかった
正直言って、物足りなさを少し感じた。作品全体の出来はいいのだが、芝居に偏りすぎている感じが否めない。ミュージカルとして見れば立派な作品だが、宝塚として見れば非常に物足りない作品だ。
この足りなかったものは、ショーの要素である。確かに芝居の中には随所にダンスシーンが折り込まれ、最後にはいつものフィナーレもあった。しかし、どれをとっても、単に「お約束」でつけただけと感じさせられるものだった。
宝塚向きに設計されていない帝国劇場での公演という事情もあるのかもしれないが、それを折り込んだとしても、あまりにミュージカル的すぎる印象だった。あと10分、ショーの時間を長くしてくれれば、かなり宝塚の作品として楽しめたと思うのだが。
しかし、ロケットだけは例外だった。以前のただ単に脚を上げるだけのものでなくなり、舞台の流れの一つとして、下級生が活躍できる場になっていた。これは昨年の後半あたりから感じたことだが、観劇の度にロケットが一つの見せ場のように思えてくる。それにあわせるかのように、生徒たちの表情も以前にまして生き生きとしたものになってきた。特に今回は、下級生たちの表情がとてもよく、かなり印象に残った。
トップスター麻路さきの充実
今回の「ダル・レークの恋」の好評には、トップスター麻路さきに負うところが大きい。
クールさと、男の色気が非常に求められそうな難役ラッチマンを、自然体の演技でそつなくこなしていて、トップの風格を十分に見せつけてくれた。よく言われる麻路の歌に関しては、まだ課題であるように思われるけれども、それでも上達は見せていて、さらに練習を積めばトップとして申し分のない域に達しそうな気配が出てきた。
最近では最も充実したところを見せてくれるトップスターが麻路ではなかろうか。
花組トップ真矢みきの退団が決まり、星組の顔としてだけでなく、宝塚の顔としての存在がますます求められるようになってきたが、この充実ぶりがあれば、おそれることはないであろう。
がんばれ星奈優里
今回は星奈優里のトップ娘役お披露目公演。純名里沙、風花舞、月影瞳と同期の娘役だけあって、さすがに高い素質が感じられる。麻路とのダンスは上手く息があっていたし、演技もしっかりとしたものがあった。
しかし、星組のトップ娘役としての今後には非常に気にかかるものを感じさせられた。
僕の感じる星組のイメージは、「男役上位」である。宝塚なのだから、男役上位は当然のものではあるけれども、それでも他の組ならば娘役も男役を引き立てるかたわらで意外と表に立っている。ところが星組では、舞台の大半が男役中心で、娘役が陰になりがちであることが多い。星組で男役を引き立て、さらに自身の存在を表に出すとなると、他組以上の努力が求められるのではないかという思いを最近感じている。
そんなイメージを感じさせる組だけに、星奈が男役陣に埋もれてしまわないか非常に気がかりなものを感じるのである。そうなってしまわないように、精一杯頑張ってほしいと、星奈にはエールを送りたい。
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