隠れ宝塚のひとりごと

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雪組日本青年館公演

凍てついた明日
−ボニー&クライド−


萩田 浩一 作・演出

観劇日 98年10月31日
観劇時刻 午後4時の部
観劇場所 2階H列中央


−空席がもったいない−


 この作品を見に行くきっかけは、劇団ホームページの掲示板だった。「これほどいい作品なのに、チケットが売れ残っているのが不思議だ」といった内容の投稿が相次いでいる。そんなに空席が多いのなら、見てみようではないかということで、青年館に行った。
 青年館に行ってみると、想像以上のチケットが残っているではないか。土曜の夕方だし、チケットが残っているという情報はかなり出回っているから、さすがに減っている出あろうと思ったら、100枚前後の売れ残りがあり、後2列は完全に空席だった。これがまた売れていない。当日券の窓口には人が並んでおらず、ほとんど待つことなくチケットがが買えたし、大半のチケットが最後まで売れ残った。僕の隣も空席だった。大ホールの入り口の階段の下では、さばきが何枚も出ていたが、これもほとんど売れていない様子だった。
 おかげで初めての青年館での観劇(今まで大劇場と東京の本公演以外は見たことがなかった)を楽しむことができたが、空席だらけの客席には淋しいものを感じた。
 元々予定はなく、このような経緯での観劇のため、予備知識は全くない状態だった。しかし、時が進むにつれて、萩田氏と雪組生徒の描くボニーとクライドの世界に引き込まれて行っていた。そして最後には、今までの雪組公演では感じたことのない感動を覚えていた。
 もったいない。こんないい舞台なのに、大量の空席が出るとは。それが平日の昼間なら仕方ないが、土曜日の夕方である。チケットなしで劇場に出かけ、間際に当日券が買えたのは非常に喜ばしいことだったけれども、これほどいい作品に似合わぬ空席の多さにはもったいなさを感じずにはいられなかった。
 劇団ももっとPRすればよかったのではと思う。僕もこの公演のことはよく知らなかったから、PRがないために見逃したファンも結構多いのではなかろうか。この舞台なら、しっかりしたPRがあれば、観客動員数をもっと増やせて、空席をなくすことができたと思う。


−今後が楽しみな荻田作品−


 荻田氏の脚本が、デビュー2作目とは思えぬほどにすばらしい。この作品の最大のポイントである、ボニーとクライドの心の動きが非常に上手く描かれている。「決め」の部分の美しさもよい。決して派手さはないが、しかし味わい深さは他の演出家には負けない。あいにく、この回1度しか見ることができなかったが、できればもう一度見てみたかった。一見でも結構わかる作品であったけれども、せめて二度は見た方が、この作品をもっと満喫できそうなものを感じさせた。
 2作目でこれだけの作品が書けるのだから、これから出てくる作品が非常に楽しみである。もっと味わい深い作品を書いてくれることであろう。
 来年は、早くも荻田氏の本公演デビューが用意されている。どんな作品を見せてくれるのであろうか。


−香寿・月影コンビの好演が光る−


 この好演では、香寿たつきと月影瞳の好演が非常に光っている。
 香寿の役者ぶりは花組時代から何度も見ているけれども、今回は格別のものを感じさせてくれた。あくまでクールにグライドを演じ、この作品の味わいを深めていた。
 そして月影がまたすばらしい。以前ははもう一頑張りがほしいと思わせることが少なからずあったけれども、今回は雪組のトップ娘役としての風格が非常に感じられる好演ぶりだった。「春櫻賦」と比べても、かなり成長したと思わせてくれる。最近は公文式のCMや池田銀行のイメージキャラクターのおかげで男性ファンもかなり集まりつつあるところだし、素質がさらに開花すればさらに多くのファンを引きつけられそうである。
 香寿、月影ともに、ボニーとクライドの心の中の見せ方が非常に上手かった。しかも、この2人の息の合い方が絶妙だった。互いに上手くリードし合い、ボニーとクライドを見事に現代の舞台に生き返らせていた。もちろん、見た目も非常に美しい。ラストシーンで肩を寄せ合い、立ち去っていく2人の後ろ姿、そして警官に撃たれた後に抱き合う姿は非常に美しかった。かなりの名コンビと思わせるものを漂わせている。
 ところで、僕は基本的には娘役ファンで、中でも76期生を応援しているのでどちらかというと月影中心の観劇だったのだけれど、香寿もなかなか魅力的に見えた。娘役ファンでも受け入れやすい雰囲気がどこかに漂っているのだ。これからもちょっと注目してみたいものを感じさせられた。


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