隠れ宝塚のひとりごと

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月組日本青年館公演

永遠物語
(原作:岩下 俊作「無法松の一生」)
草野 旦 作・演出

観劇日 98年12月6日
観劇時刻 午後4時の部
観劇場所 1階C列上手寄り


−あまりに渋すぎた?−


 この公演の客入りは惨憺たるものだった。日曜だというのに、2階席は完全にガラガラで、4000円のB席のチケットを持った人が点々と座っているのみ、1階も後方や両サイドを中心に空席が目立った。普通はまず取れることのない3列目のチケットが取れてずいぶんついていると思ったりしたものだが、青年館の状況を見て、僕のようなコネなし組でも3列目が取れたことに納得。それどころか、驚いたことに、ロビーで千秋楽のチケットが売られていた。これも2階席はガラガラ。作品がいい割には空席が多いと話題になった雪組「凍てついた明日」だって、千秋楽は完売だった。
 やっぱり渋すぎたのであろうか。トップスターは出ておらず、主役がOGの榛名由梨。主要メンバーも風花舞と初風緑を除けば専科生がほとんど。風花が踊ることもない。月組公演というよりは月組生の協力を借りたOG・専科特別公演のような雰囲気が漂っている。そして原作が「無法松の一生」。渋すぎることこの上ない。あまりに渋すぎて、やや宝塚向きではなかったかもしれない。そう考えると、空席の多さも納得がいく。
 ただ、この渋さがたまらぬ好作品だっただけに、空席の多さが非常に残念であった。


−OGの招聘は成功だった−


 これほどはっきりと客席のあちこちからすすり泣きの聞こえる公演など、そう滅多にあるものではない。かく言う僕も、最後は泣きながら見ていた。松五郎の愛に、涙を流さずにはいられない好作品である。
 花組「サザンクロス・レビュー」、星組「ヘミングウェイ・レヴュー」など、非常にすばらしいショーを作ることで定評のある草野氏だが、なかなか芝居も見せてくれる。途中、草野氏らしいショー場面も挿入されていて、非常に出来のいい脚本であった。
 この好作品を、よりよいものにしていたのが、今回の公演にあたって宝塚に里帰りした榛名由梨である。
 今回の里帰りにあたっては結構物議をかもしたけれども、僕はさほど抵抗を感じなかった。もちろん、本公演なら声を大にして反対するが、バウなら趣向が変わって面白いかもと思っていた。
 実際、この舞台を見て、榛名由梨の招聘は成功だと思った。この作品の松五郎役を他の生徒に演じさせるのは難しいと思わされた。榛名由梨だから見せられる迫力が感じられた。この迫力が、この作品をよりよいものにしてくれた。


−風花舞の違った魅力−


 風花舞の今回の役柄は古風な日本女性。とかくダンスばかりが注目される風花舞であるが、この役も非常に似合っていた。見た目にも、風花の清楚な美しさが吉岡夫人にはまっていたし、演技も上手く、夫を失って松五郎を頼りにしたい心の内を上手く描いていた。
 ダンサーとしてだけでなく、役者としての魅力を見せてくれた風花舞の退団が、改めて惜しいと思わされた。


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