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月組TAKARAZUKA 1000days劇場公演
「黒い瞳」/「ル・ボレロ・ルージュ」
「黒い瞳」 原作:プーシキン 「大尉の娘」 |
柴田 侑宏 | 作・演出 |
謝 珠栄 | 振 付 | |
「ル・ボレロ・ルージュ」 | 三木 章雄 | 作・演出 |
観劇日 | 99年1月30日 |
観劇時刻 | 午前11時の部 |
観劇場所 | 28列左寄り(C席) |
−偉大なる娘役、風花舞−
「黒い瞳」の冒頭、風花舞が登場すると拍手が起こった。登場するときに、拍手が起こるのは、普通はトップスターや比較的格上の男役くらいのもので、娘役の登場に拍手が起る場面は少ない。しかし、風花はトップスター並の拍手を登場の時にもらっていた。今までこんな場面にお目にかかったことはないのでちょっと戸惑った。しかし、すぐにその戸惑いは嬉しさにかわり、僕も風花に拍手を送っていた。宝塚を見るようになって以来の娘役ファンだが、娘役ファンとしてこれほど嬉しいことはなかった。
やっぱり風花舞は偉大な娘役だ。娘役初のバウ主演など、最近の活躍ぶりを聞く度に思っていたが、今回の登場の時の拍手で、そして今回の舞台を通して改めて実感させられた。
実際、舞台を見ていても、他の娘役とは違った迫力が感じられた。ダンスのみならず、芝居でも娘役らしからぬ圧倒的存在感を感じる。しかし、それでいて、「男役を立てる」という、娘役の仕事は決して忘れてはいない。きちんとトップスターを持ち上げている。これほどの娘役は、僕の知る限りは風花一人だ。
風花に匹敵する娘役は、今までごくわずかしかいなかったであろうし、今後も、めったにお目にかかれることはなかろう。10年に1人いるかいないかの娘役ではなかろうか。それどころか、今後出てくることのない大型娘役であったかもしれない。
なぜか月組は観劇回数が少ないのだが、もっと見ておけばよかったと、改めて悔やまれた。
風花舞。この非常に美しい名前の、偉大なる娘役の名は、いつまでも記憶の中に残りそうである。
−ベテラン演出家と敏腕振付師の腕が光る−
「黒い瞳」で見た柴田侑宏氏の演出には、熟練した職人の腕に通じるものを感じさせられた。さすがは宝塚のベテラン演出家。脚本もよければ演出もよい。昨年の大劇場の芝居では、「黒い瞳」が最もいい出来だという声を結構聞いたが、なるほどと思わせるものがある。
今の宝塚では、正塚晴彦氏と小池修一郎氏の人気が高いが(かくいう僕も小池作品のファンであったりする)、この両氏を越える作品づくりの上手さが感じられた。何を見せたいかがはっきりしているし、舞台の使い方がうまいし、生徒の得意分野をうまく生かした演出をしているし。何よりニコライとマーシャの心情の描き方がきれいだった。
同時に、OGの謝珠栄氏の振付もよかった。柴田氏の脚本、演出だけでもかなりの作品になるのに、謝氏の振り付けは、この作品をさらに見応えあるものにしてくれた。
今までの宝塚にはなかった新たなる名コンビの誕生かもしれない。すでにこのコンビは次の宙組公演の芝居を担当することが決まっている。今からどんなものを見せてくれるか非常に楽しみである。
−期待はずれのショー−
がっかりしたのが「ル・ボレロ・ルージュ」の方だ。ボレロのリズムはショーの素材としてなかなかのものであるだけに、どんなショーになるかと期待していたのだが、蓋を開けてみればあまりに平坦すぎる展開。あまりに印象が薄すぎて、たいした印象も残っていない。
もう一ひねり、何かほしかった。「夜明けの序曲」のフィナーレ部分のような結構いいショーも作れる三木氏なのだから、決して不可能なことはなかろう。
−月組の注目したい役者たち−
今回、思いがけずも圧倒させられた生徒が千紘れいか。「黒い瞳」での堂々とした演技が非常によく、女帝の威厳がうまく表に出ていた。結構大物じゃないかと思わされるものを感じた。これからの舞台で、どんな演技を見せてくれるか、結構興味がある。
そして、男役2番手の紫吹淳がまた上手い。味のある演技で、プガチョフという男への興味を、見る側に抱かせてくれた。
これから月組を観劇するときは、この2人にはぜひとも注目してみたいと思わされた。
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