犬小屋製作・販売のカッサン犬小屋工房

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http://ka3.jp/inugoya/

2013年3月1日


建築にまつわる ディープなディープな話


カッサン建築工房代表・笠原英二

身近なのに、あまり深くは知られていない、建築にまつわる話を、
カッサン建築工房の犬小屋などと絡めてご紹介いたします。
なお、このコラムの内容は、あくまでも私見もしくは偏見ですのであしからず。
ただ、私が本当に実感していることが書いてあるだけです。


当工房トップモデル「ポスト&ビームの犬小屋」がらみの建築話・その1


第一回目は、当工房トップモデルの犬小屋を紹介しつつ、
建築の裏話をご紹介いたします。
まずは画像をご覧下さい。

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手前味噌で恐縮ですが、いい出来栄えです。
お値段ですが、20万を軽く超えるとだけ言っておきます。
高いですね。

値段のことはさておき、この犬小屋がどのように作られたのかを説明したいと思います。
画像をご覧下さい。

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詳しい説明は省きますが、この作り方は、本物の住宅の建て方とほぼ同じです。
いろいろとネットなどで調べましたが、
このような作り方で犬小屋を作っているところは、ほとんどありません。

多くの犬小屋製作会社は、ただ単に板と板を張り合わせて作っているのです。
いえ、それが悪いと言っているのではありません。
私もそれで良いと思います。

実際、当工房でも張り合わせの商品はあります。
それで十分な強度は保てますし、何より安くご提供することができます。

しかし、工房のトップモデルなわけですから、
持てる限りの技術を駆使して作りたいというのが職人というものです。
まあ、平たく言えば、自慢したいだけです。


話を元に戻しますと、画像の作り方は木造軸組み工法、
通称「在来工法」と呼ばれる作り方です。

現在、大手の住宅メーカーでは、この在来工法はほとんど用いられません。
なぜか?

コストがかかるからです。

在来工法はある程度以上の技術を必要とします。
技術を持った職人さんには、それなりの給料を払わなければなりません。
結果、高くつきます。

なので、大手メーカーのほとんどはツーバイフォー工法(通称ツーバイ)を用います。
ツーバイは、「素人でもできる」と言われるくらい簡単な工法です。

本来、大工は5年経たなければ1人前とみられないのですが、
ツーバイ大工は1年経てば一人前になれます。


これは聞いた話ですが、ある大手メーカーの下請け工務店では、
入社して3年目で棟梁になれるそうです。
3年目といえば、本来はまだまだ小僧っ子です。
ペーペーに毛が生えただけです。

なぜ、そんな小僧っ子が棟梁になれるのかというと、理由は2つあります。
一つは、工法が簡単なので、図面さえ読めれば一人前になれること。
もう一つは、たいした覚悟もせずに入る人が多いので、人の入れ替わりが激しいこと、です。

もちろん全ての会社がそんな状態ではないのでしょうが、
実際にそういう会社もあるというのは、まぎれもない事実でしょう。
皆さんの住んでいる家が、そうではないことを祈ります。


誤解して欲しくないのですが、私は決してツーバイをけなしている訳ではありません。
ツーバイにはツーバイの良さがあります。
それに、「ツーバイは素人でもできると言われている」と書きましたが、
私はそうは思いません。
やはり、それなりの技術は必要です。
ただ、私が嫌いなだけです。


話が逸れすぎました。

とにもかくにも、在来工法は手間がかかります。
しかも、この犬小屋はポスト&ビーム風に仕上がっています。
ポスト&ビームとは、ログハウスの工法の一種です。

次回はそのポスト&ビームの説明から入りたいと思います。

※何かご質問などありましたら、遠慮なくコメントしてください。
それも交えて次回につなげていきたいとおもいます。




「ポスト&ビームの犬小屋」がらみの建築話・その2

二回目です。

今日は、まずポスト&ビーム(以下P&B)の説明から入ります。

P&Bとはログハウスの工法の一つで、柱と梁があらわになったものです。
柱=ポスト、梁=ビームで、ポスト&ビームと言うんですね。

ログハウスというと、丸太を横に積んだ物が一般的です。
ダイナミックで、いかにも「男の建物」といった風格があります。
しかし、いざそういうログハウスに住んでみると、
丸太の圧迫感が気になるという方が結構いるようです。

P&Bのログハウスは、丸太が見えているのは柱と梁だけで、
壁などは一般住宅と変わりません。
私もP&Bの現場に行ったことがあるので分かるのですが、圧迫感はほとんどありません。
言い方を変えれば、一般住宅なのに丸太のダイナミックさを感じることができるということです。

このP&B工法ですが、実は昔の日本家屋の外観と同じなんですね。
現在のほとんどの住宅は、柱を壁で覆う「大壁」式で作られています。
しかし、ちょっと古い建物(もしくは、思いっきり金をかけた和風豪邸)だと、
壁から柱が出っ張っていますよね。
それを(真壁しんかべ)と言います。

まあ、言ってしまえば、P&Bと言うのは真壁式ということです。
何が違うのかと言えば、建物の外観が和風か洋風かということと、
丸太をそのまま使っているかどうかということです。
丸太を使っているのがP&Bなのです。

なんとなくお分かりいただけたでしょうか?

ちなみにカッサン建築工房の犬小屋は丸太を使用していないので、
厳密に言えばP&Bではないのかもしれません。
実際、親しいログハウス関係者からは、上記の理由で
「ポスト&ビームじゃないぞ!」
と冗談交じりに言われます。

しかし、全体的な雰囲気はどう見ても洋風である上、
P&Bの特徴であるダイナミックかつスタイリッシュな外観に仕上がっていると自負しております。
ですから、「ポスト&ビームの犬小屋」と堂々と銘打たさせていただいております。

そして、ここからがまたややこしいのですが、
カッサン建築工房では、このP&Bの犬小屋を「在来工法」の技術で製作しております。
画像をご覧下さい。

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↑このように材料を加工して、
↓このようにピタッとはめます。
f:id:nagoyausu:20090509103222j:image

これが在来工法の技術の一端です。
ツーバイフォー工法では、このようなことはやりません。
金具や釘で留めていくだけです。

自分で加工した仕口(しくち)なり継手(つぎて)がピタッとはまった快感というのは、
大工の大きな楽しみの一つであり、
「これからももっとがんばろう」という動力にもなります。

ですから、もしも私がツーバイフォーの会社に入っていたら、
大工を続けていなかったかもしれません。
在来工法の技術を教えていただいた師匠に感謝いたします。


ちょっと整理します。
ここまで読んでこられた方の中で、
「え? ポスト&ビーム工法って言ってたのに、在来工法で作ってる? 意味分かんない」
とおっしゃる方がおられると思います。

私も書いていて、だんだんこんがらかってきたので、その気持ちは良く分かります。

そうなんです。
P&B工法というのは、実のところ「工法」ではないと私は考えております。
「様式」と言ったほうが分かりやすいと思います。

「P&B様式の建物を在来工法で作る」
この方が分かりやすいですね。


整理がついたところで、今日はお開きにいたします。
次回は在来工法の具体的な技術を紹介していきます。




「ポスト&ビームの犬小屋」がらみの建築話・その3(2009.6.3)

在来工法とは、正式名称を「木造軸組み工法」と言います。

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↑加工した材料を、
↓下から順番に組んでいきます。

f:id:nagoyausu:20090522212007j:image

すると、↓のようになるんですね。

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画像はちょっと黒ずんでいるように見えますが、
これは、柿渋という染料を塗ったためです。
(柿渋については、機会を改めてしょうかいします)

ご覧のように、「木で造った軸を組んでいく工法」ということで、木造軸組み工法と言うんですね。
思いっきりそのまんまです。

本当の住宅の場合、このあとさらに細かい柱(間柱)を入れ、その後で壁を作り上げていきます。
ですから、画像の作業(建前)は少しの狂いも許されません。
全ての基準となるからです。
壁をはるのも、建具をつけるのも、全て「軸」が基準となるのです。

とはいうものの、実際の現場では数ミリのズレはよくあります。
全国的にどうかは知りませんが、私たちは、このズレを「芸者」と言っていました。
「芸者=遊び」
数ミリのズレは遊びだってことです。

しかし、「芸者」ってたとえも古いですね。
まあ、かといって「風俗嬢」や「キャバ嬢」にすればいいってもんじゃないのですが…。
話がそれましたね…。

ちなみにツーバイフォー工法(以下ツーバイ)には、この「軸」が存在しません。
壁と壁をつなぎ合わせて、構造体としての強度を保っているのです。
たとえは悪いのですが、段ボールと同じです。

ツーバイは非常に合理的な工法だと思います。
「楽に、簡単に」を突き詰めた近代合理主義の申し子と言っていいでしょう。
ですが、そういった利便性と引き換えに、建築現場から仕事の面白みを奪ったのも事実です。

前にも書きましたが、私は決してツーバイがダメだと言っているのではありません。
こういう工法もあった方がいいに決まっています。
私が思うのは、「あってもいいが、主流になるのはダメだ」ということです。
なぜなら、日本の素晴らしい建築技術が、どんどん消えていくからです。

これは誰が悪いかというと、全員が悪いと思います。
安さばかりを求める消費者も悪い。
日本の伝統技術を守ろうとしない国も悪い。
工期短縮・経費削減で、金儲けに走る建築会社も悪い。
現場で実際に働く大工が、もっと声を大にして訴えないのも悪い。

こうして「悪い」が分散された結果、
誰も悪いと思っていない現状になってしまったのではないでしょうか?

ツーバイのことになるとどうしてもムキになってしまいます。
いけませんね。

話を戻しましょう。
「軸組み」の話ですね。
軸組みをするには、当然、部材を加工しなければなりません。
その作業を「切り込み」と言います。下の画像は切込みが済んだところです。

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整然としていて、気分がいいものです。
順序が逆になってしまいましたが、
この切込みをする前に、部材に加工するための線をひく作業があります。
これを「墨付け」といいます。

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↑画像はその墨付けを行なっているところです。

次回は、「墨付け→切り込み」と順を追って、説明していきたいと思います。





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2013年3月1日

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