◆2004年3月6日(土)〜30日(火)◆
「シブヤから遠く離れて」 作:岩松了 演出:蜷川幸雄
in Bunkamuraシアターコクーン


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ここにはichikoが舞台を観て受けた印象と率直な感想を書いています。

過去を忘れたい。過去を変えてしまいたい。明日が信じられない。
だけど、真実は現在(いま)の自分の胸の中に。
そして、それはいつも僕らを苦しめる。
舞台からはみ出す程無造作に在る黒いヒマワリが印象的。季節は初冬11月と言っていた。廃墟と化した屋敷の庭には背丈の高さのまま枯れたヒマワリだけが残されていて常に風にたゆたう。屋敷の大きな窓にかけられたカーテンも風に揺らぐ。舞台左側には螺旋階段。高さのある2階部分でのやりとりもあり。物語は登場人物の台詞で進んでいく。それぞれ自己紹介するし、現在の時間軸は分かり易いんだけど、どうしてその人がそういう行動をとるのか、そういう質問を投げかけるのかという過去の時間軸を理解するのが少々難解。登場人物の生い立ちや体験したことの設定がきちんとある上で、そこを明確にしないまま、たまたまその主のいない屋敷に集まった彼らに新しい関係性が生まれる。以前その屋敷に住んでいたケンイチ(勝地)とその幼なじみのナオヤ(二宮)の口論。会話にだけ登場するケンイチの母と妹。娼婦上がりで囲われているマリー(小泉)とそのマリーに一途に思いを寄せるアオヤギ(杉本)との口論。マリーに雇われているアパート管理人のフクダ(立石)。フクダとアオヤギの口論。アオヤギの同僚フナキとナオヤの口論。アオヤギの妹トシミ(蒼井)とナオヤの口論。マリーをよく思わないアオヤギの父(清水)。そしてマリーとナオヤの口論。答えの出ない質問。自問自答のような会話が交錯し、不思議な感覚に捕らわれる不思議なお話。きちんとした回答は得られなくても充実したものが残る。予想が出来ない会話の進行に戸惑いながらも聴き入ってしまう。そんな舞台でした。小道具に生ものが多かったのも印象的。ぶどう、小鳥、赤い花。そして衝撃的なラストシーン。演出の与えるインパクトを観た気がしました。(3/8観劇時記)
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話の主役はマリーだったような。ナオヤは話を引っ張るという感じではなかったけれどストーリーテラーではあったかな。二宮と小泉のラブストーリーみたいな振れ込みがあったと思うんですが、実際のところはあの二人に恋愛じみたところは感じなかった。姉弟のような感覚が生まれていたような気がする。娼婦という設定で肌を露出してるわりに小泉さんに色気がなかった。逆に男性陣のやりとりに魅力を感じた。フナキ役の勝村さんとナオヤのシーンが衝撃的。私は羽交い締めにされてもがいて抜け出そうとする二宮に弱いので(古くは「8J」の柔道から)、あのシーンはいろんな意味で衝撃的でした。ナオヤの上位に立つケンイチとのやりとりも良かった。二宮さんが良かったのか勝地くんが良かったのかは不明。アオヤギさんはただただマリーを思う切なさが響いた。勝村さん哲太さん立石さんに比べたら存在感の部分で二宮さんはまだまだ。滑舌と声量で驚いたのは蒼井優ちゃん。早口で捲し立てる部分が多いので滑ってしまったところもありましたがよく通る声。清水さんの怪演にも圧倒された。演出部分ではラストの効果。私はこれがすごく怖くて。「ちゃちゃちゃ」と聞くだけでコワイ。背筋がぞーっとしました。私はああいうのでトリップしやすいので本当に怖かった。(3/8観劇時記)
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観劇事態が久しぶりなことと、二宮さんの演技をあまり冷静に観られない私なので、初めて観る生の演技に少々不安もあったのですが、思った以上に冷静に観られました。私はたとえキッカケが彼だったとしても、作品を観る時は作品を観るので、作品事態が二宮さんの評価に繋がることも多々あるなかで、今回は魅力的な話と役所ではあったと思います。でも今までの役柄と大きく変わるということもなく。ある意味集大成的な感じがした。もうこれでこうゆう役は終わりにしていいかも。こうゆうのばかりだと守備範囲が狭い、引き出しが少ないと思われてしまうような気がする。ナオヤは・・・端的に言うと変態ぽい(身も蓋もない)。マゾになったりサドになったり、年上になったり年下になったり、普通の少年になったり。忙しい役でした。対する人によって態度が変わる。それを上手く表現出来ていたと思います。後半にいくにつれて逆ギレ率が上がり不安定な状態に。これが「壊れていく」という表現なのでしょうか。ナオヤが背負ったものがなんなのか、はっきり知りたいような知らないまま思いを巡らせていたいような不思議な感覚が残りました。とにかくあんなとりとめのない長台詞を暗記できるってことだけでもかなり尊敬。しかしながらひとつ難を言うとところどころで「風間っぽいな」と思ったところがあり。風間ってドラマでも演劇チックな芝居をするのでそれに似ていた。ナオヤが地団駄を踏むとこなんて健次郎。彼を知らない人間ならあの芝居でもいいと思いますが、出来ればそこはもうちょっと変えて欲しいかも。
舞台に不向きではないということが解ったので今度はもっと動きのある分かり易い話の演技も観てみたい。(3/8観劇時記)
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追記。3/28にもう一度観劇して、あまりナオヤが激さなくなって風間っぽさがなくなっていました。二宮さんは押さえた演技の方が雰囲気が出ていい。私はこの話は個々の人間ドラマだと思っていて。人間とは業の深いものだと。誰もが何かに縛られて生きてるんだな、と感じました。生きていくことのが試練。以上。

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