化石の花

 一億四千年前の水中花アルカエフルクトゥス(Archaefructus)は白亜紀の原始被子植物であるが、金魚鉢の水草アナカリスのように、水の中でたおやかな曲線の枝をしならせている姿を思い浮かべてみると、実に見ていて飽きない。もちろんそんな太古の昔まで遡って見られるわけではないので、あくまで空想しての話。白亜紀の水中花がどのような環境で恐竜たちと共存していたのか、CGの映画で確かめるしかないが、このアルカエフルクトゥスには花弁らしきものが無く、一本の細い枝に雄蕊と雌蕊が間隔をあけて葉のような形で構成している。この花の化石が中国遼寧省の中生代の地層から初めて発見され、それがいつしか化石の土産店で安価な樹脂製レプリカとなり、珍しいお土産品となったのだろう。朝霧ルナはこの小さな花の化石レプリカをいつもスカートのポケットに入れて持ち歩いていた。お守りなのか占いでもしているのかよくわからないが、不思議な花飾りのようでもあり、大切な物であることだけは確かだった。

「それ、花というより、小さな小枝の葉っぱだよね。原始時代の花は、顕微鏡が要るよな」と尾花瓢介は言った。
「白亜紀の植物って、時間を超越してるでしょ」と朝霧ルナ。
「まあ、そうだろうね」と瓢介。
「派手さはないけど、そういうのってステキと思わない?」とルナ。
「自分と重ねてる?」と瓢介。
「見かけじゃなくて、ダンスで超えてみたいの」と熱い視線のルナは言った。外見で二軍に落とされてしまったと思い込んでいるルナは、審査の結果を素直に受け入れていた。
「歌の練習は今も続けているの?」と瓢介が訊くと、
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ミステリー作家の小部屋

(2021/11/01)


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