「あ、ちゃん?俺だよ〜♪今からさぁ、ちょ〜っと出てこられない?」
 耳慣れた声と口調。
 ドキリと胸が高鳴る。
 渡辺 が黒崎 縁からのそんな電話を受けたのは、土曜日の日暮れ間近の事だった。


 指定された公園に着いた頃。
 辺りは傾きかけの夕陽に染め上げられていて。
 黒崎は1人、噴水の向こう側に設えられたベンチに座っている。
「縁さん…」
 急いで来たせいでやや上がった呼吸を整えながら、名前を呼ぶ。
 柔らかく微笑むその顔に、は首を傾げた。
「どうか、なさったんですか?」
「ん〜…ちょっとね」
 言葉を切った黒崎に、手で促されてベンチの横に座る、
 そして『ちょっとね』の言葉の意味を考えてみた。
 いくつか候補が頭の中に浮かんだが、なんだかどれもこれも違う様な…?
 黒崎は何も言わない。
 上目遣いに様子を窺ってはみたけれど、黒崎の視線は噴水に固定されたまま。
 徐々に迫る宵闇と、沈黙。
 耐えきれなくなったが、口を開く。
「あのっ…!」
 それと同時、長い影がの横を通り抜ける。
「?」
 ベンチを立った黒崎が、噴水を目指してまっすぐに歩いてゆく。
 は一挙一動、全てを逃すことなく眺めていた。
 噴水の際で、足を止めて振り返る。
 逆光で、表情はよく見えない。
 しかし…
 緋色の光の中。
 黒崎の髪がふわりと舞う。
 その横顔が照らされた瞬間。
 ほんの1秒程度の出来事が、にはスローモーションで再生されていたかの様に見えた。
 きれいにターンを決めた黒崎が、ベンチで呆然と彼を見ていたの下へ戻ってくる。
 顔をのぞき込まれ、は今のそれが焼き付いた目を、黒崎の視線と合わせた。
「あ…」
 逸らしたのは、から。
 けれど黒崎は、俯くことを許してはくれない。
 顎を指で支えられ、キスが落ちる。
「ふふっ」
 笑いながら、ベンチへ再び腰を下ろす黒崎。
「女のコ向けの雑貨屋さんの仕事が入ったんだけどね…なぁんかいいイメージないかな〜って思って」
 髪をかき上げながら、に向き直った。
「あそこから見た、の一瞬の表情」
 噴水を指さす黒崎の、次の科白を待つ
「くすっ…」
「えっ?」
「いや〜っ、お陰でいいのができそうだわ」
「ハイ?」
 ワケの分からないまま、黒崎はの前に立ち、手をさしのべる。
「せっかくだし、ゴハンでも食べに行きましょうか、お姫サマ☆」
 ちょっとだけ頬を膨らませたが、黒崎の大きな手に自分の手を重ねた。
 その温かさが伝えてくれる…声にされない、夕陽に溶けた言葉。


                                        【END】


きゃ〜♪♪ しょう。さんが黒崎さん小説を書いて下さいました♪♪
かなり彼らしい気まぐれぶり(笑)で素敵です☆あーんど最後の’お姫サマ☆’も(ふふふ)♪ ありがとうございました〜!!
コンテンツはここと名前の部分を名前入力に対応するように変更させて頂きました。m(__)m

しょう。さんのHP【こうちゃのじかん】では素敵なゲーム、小説を公開されてます♪
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