小児科の薬  子への安全4割が未確立 (朝日新聞 2000年5月8日)
  情報なし3割  厚生省研究班添付文書調査
     子供への安全性が確認されないまま小児科で使われている薬が多数にのぼることが、厚生省の研究班の調査で
     わかった。
     小児科で使用されている薬のうち、4割は添付文書に「子供への適用への安全性が確立されていない」と記載され、
     3割は子供への適用について情報が何も記載されていなかった。「使用禁止」などの薬も3%あった。
     子供用の薬は使用量が少ないために採算が取りにくく、製薬会社が臨床試験などに消極的なことが背景にあるが、
     中には現場で広く使われている薬もあり、研究班は添付文書の記載事項の全面的な点検・見直しが必要としている。
     五つの大学病院、総合病院での18歳未満の患者への最近の処方データを集積した結果、1490品目の調剤薬と
     795品目の注射薬が使われていた。
     そのうち、添付文書に子供への使用についての情報が何も記載されていないものが、調剤薬では1/3にあたる
     496品目、注射薬では1/4にあたる204品目あった。
     記載がある場合も、使用経験が少ない、十分な臨床成績が得られていないなどから「小児への投与についての
     安全性は確立されていない」と書かれた薬が全体の4割。調剤薬で573品目、注射薬で335品目だった。
     さらに、「禁忌」・「原則禁忌」・「投与しないことが望ましい」と記載された薬も調剤薬で50品目、注射薬で14品目も
     あり計1614人に対して4815回処方されていた。
     研究班は「今の表記では、安全性が確立されていないから禁忌なのか、治療上の有益性が危険性を上回ると判断
     した時は投与してもいいのか、わからない」と指摘。
     使用経験が少ないなどの理由で「安全性は確立されていない」とされる薬も、すでに多くの子供に投与されており、
     症例が集積された薬については、添付文書の変更や使用規制の緩和を進めるべきだとしている。
     今回の調査では、小児科医が手探りで薬を処方している現実が浮かび上がった。
     日本小児科学会は子供への用法・用量・適応の記載のない医薬品が大多数を占める現状の改善を厚生
     省に求めており、厚生省も子供用の薬確保のために、承認を進める必要性を認めているが、中々難しいのが実情だ。
     大西主任研究者(香川医科大医学部小児科教授)は「添付文書は薬を使う時の正式文書。小児科医はそこに
     書かれていないことを日常的に行わなくてはならず、非常に困っている。
     厚生省は問題解決に真剣に取り組むべきだ。製薬会社も社会的責任を果たしてほしい」と話している。

目次にもどる