向精神薬副作用死127件 (2003年1月21日 毎日新聞)

  重症1054件 厚生労働省公表せず
     向精神薬による副作用「悪性症候群」で、2001年までの4年間1054件の重篤な症例が厚生労働省に
     報告され、うち死亡例が127件あることが分かった。
     厚生労働省は向精神薬による悪性症候群について過去2回、医薬品安全性情報で注意を促したが、
     死者は公表せず、この7年間は安全性情報を発していない。
     向精神薬の需要が伸びる中、国の安全対策の遅れが指摘されている。
     厚生労働省によると98〜01年度の4年間に、83種の向精神薬による意識障害や筋肉硬化など1054件
     の重い悪性症候群が製薬会社から報告された。
     向精神薬のうち悪性症候群を起こしやすいのは、統合失調症の興奮や幻覚を抑える「抗精神病薬」。
     圧倒的なシェアがあるのは「ハロペリドール」で、26例と最も多い死亡例がある。
     悪性症候群は向精神薬の副作用で最も重く、初期症状を見逃したり大量に投与すると死亡する場合がある。
     60年代に初めてフランスで報告され、日本でも86年に旧厚生省が研究班を設けた。
     同省は89年と95年に安全性情報を出し、慎重な投与を呼びかけたが、警告度の最も高い「緊急安全性情報」
     は出していない。
     ハロペリドールについては01年「使用上の注意の改訂」により、医師向けの説明文書(添付文書)に注意事項
     を記すにとどまっている。
     複数の専門家は「薬を多量に使ったり医師が患者の経過観察を怠る場合も多い。国の対策も遅れている」という。
     製薬会社は薬事法で、死亡や障害など重い副作用を厚生労働省に報告する義務があるが、怠っても罰則はなく、
     「被害の実態は10倍以上」(浜六郎・医療ビジランスセンター理事長)という指摘もある。
     向精神薬のうち、抗うつ剤の市場は3年前の3倍になっているといわれる。
   ・厚生労働省医薬局安全対策課の話
     緊急安全性情報を出す場合、単純な死者数だけでなく薬の有効性や必要性によって判断している。
     悪性症候群については医療現場に十分注意を促していると考えている。
   ・悪性症候群
     統合失調症やうつ病患者に投与される向精神薬のほか、パーキンソン病の薬を急に中止した時にも起きる副作用。
     神経伝達物質の作用を抑えすぎて、筋肉運動や体温調節の機能が壊れる。
     高熱、筋肉硬化、頻脈、意識障害などが生じ、重い場合は死亡する。

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